担当編集者は知っている。


『聖骸布の男
 あなたはイエス・キリスト、ですか?』
監修:ガエタノ・コンプリ
価格:3,780円 (税込)
発行:講談社
ISBN-13: 978-4062139571
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聖骸布というのは、十字架から降ろされた
イエス・キリストの遺体を包んだ
といわれる亜麻布のこと。
ふしぎなことに、この布にはぼんやりと
人の姿が浮かびあがっているのです。
この「人」は本当にイエス・キリストなのか?
中世になってから
レオナルド・ダ・ヴィンチが作ったんじゃないか?
本書は聖骸布のさまざまな謎を徹底的に調べ
完成した大型本(ムック)です。
なんと、世界初の試みで、
十字架にかけられた釘や茨の冠がくっきり見える
聖骸布の実物大上半身ポスターつき。
この本を担当された
講談社の灘家さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者/
講談社 総合編纂局第二出版部 灘家薫


──痛かったねぇ。よくぞ気張ってこらえたねぇ。
ひりひりと胸に刻まれた無数の鞭打ち傷、
たらたらと額からはいく筋もの流血、
手首の傷穴はずきんずきんと疼くようで、
脇腹からはどろどろどろりと血があふれ出て‥‥。
「トリノの聖骸布」の実物大の写真を目にしたとき、
布に映った人物のあまりに凄惨な虐待跡に、
魂消(たまげ)ました。



聖骸布はトリノの聖ヨハネ大聖堂に保管されている
横4.415m×縦1.137mの
杉綾織(ヘリンボーン)の亜麻布。
イエス・キリストが十字架刑で死に、
埋葬されたときに遺体を包んだといわれる布のことです。
聖書によると、死後3日目にマグダラのマリアらが
墓に行ったら、イエスの体はすでに消えていた。
あわてて使徒のペトロとヨハネを呼んだけれど、
彼らももぬけの殻となった墓穴に、遺体を包んだ布が
「ぺしゃん」とへこんであるのを確認できただけ。
イエスは復活したときに布をくぐり抜け、
その瞬間、自分の全身の姿を映したというのです。
──んなこと、あるわけないだろう!
ふつう、そう思いますね。

去年の夏、知人から調布サレジオ神学院の
ガエタノ・コンプリ神父を紹介していただきました。
神父はイタリアから来日して52年、
「喜寿になったよ」とさらりと言えるほど
日本語が達者で、笑顔上手、説教上手で。
と同時に、世界有数の聖骸布研究家でもあるのです。
なかでもとっておきの資料が、
2002年に初めてデジタルで撮影された
実物大の聖骸布の写真。
そこには鞭打ち、茨の冠、手首と足の十字架の釘穴、
右脇腹の槍傷と、聖書(福音書)の記述そのままの
イエスの受難の跡がリアルに映されていました。
この不思議な布にまつわる興味深い歴史や
調べられた研究結果の詳細を神父から伺ううちに、
「聖骸布は想像の範囲をはるかに超えている」と高ぶり、
会社に戻ってから企画書を出したのです。ところが、
「宗教関係の本は、ねぇ‥‥」
「聖骸布はオカルトだろ?」
と、ひんやり体温の低い反応が返ってきて。
しかしそのときレット・イット・ビー。
まるで聖母マリアのお告げのように、
「もし聖骸布の人物がイエス・キリストだとしたら
 実物大のポスターを付録につけたら
 だれでも等身大のイエスに対面できるわけだ」
と“ポスター付録案”が閃いたのです。
企画は、通りました。



さすがに聖骸布丸ごと4mのポスターは無茶なので、
全身像およそ2mを刷ることで関係各所に相談。
けれどたたむとかさばる、費用がかかる。
直球の疑問として、
「ところでお前、2mのポスターなんて
 貼れる家あるの?」。
ならばならばと頭頂から指先までの上半身1.2mで決定。
1/2の大きさでも迫力があるのだから、
縮小して全身を載せたほうが
「親切」という声もありましたが、
どうしても実物大にはこだわりたかったので。

──ここのところいろいろと考えていたのです。
テレビやインターネット、ゲームや携帯電話に
紙媒体は押されていて、とっても苦しんでいる。
ならばそこを突破するひとつの方法として、
対象物をフレーム内に縮小、圧縮することなく、
実物大そのまんまに印刷して見せる方法があるかなと。
それも四六判とかA4変形といった
本の定型に納めて見せるだけでは、まだまだおとなしい。
紙は、大きさが自由になるのがメリットなのだから、
大きなものを「うわっ」と大きなポスターにして実物大。
見た目の迫力や臨場感、スケール感。
これこそ紙媒体でしかできない
「紙力」じゃないかなと。

写真は聖骸布のネガ画像にしました。
実は聖骸布の人物はネガで映っているのです。
すると聖骸布のネガ画像だと人物は反転してポジになる。
ふつう写真はポジになった画像を見ますよね。
ならばポスターも、人物がポジで見えるように
あえてネガ画像を選んだわけです
(ちょいと難解ですね)。
本物っぽさを出すために布も考えましたが、
ポスター裏面にも写真を載せたいので
裏写りしない紙に印刷することに決めました。

はたして聖骸布の男は
イエス・キリスト、なのでしょうか?
その謎の解明で本は展開していきます。
レオナルド・ダ・ヴィンチが作ったという
贋作説がけっこう流布しているけれど、
それを吹き飛ばす決定的な証拠があります。
フランス・リレで鋳造されたメダルです。



見てください。
人物の表面と背中面が並ぶレイアウト、
なにより杉綾織の模様まで刻まれて。
これはまぎれもなく聖骸布がモチーフになっています。
ふたつの家紋と残されている史料から
これは1350年頃にリレという村で
聖骸布の一般公開を記念して発行された
メダルだと確認されました。
ダ・ヴィンチが生まれたのは1452年ですから‥‥ね?
そしてもうひとつの読みどころが、
「アブガル王」という、
紀元1世紀にエデッサ(現トルコ)にいた
王様の伝説です。
イエスの奇跡の評判を耳にしたアブガル王は、
自分の長患いを治すために
イエスに来てほしいと使者を送りました。
けれど使者がエルサレムに着いたときは
イエスは十字架を背負ってゴルゴダの丘に向かう途中。
イエスは使者に布を出させ、顔をぬぐって渡します。
布にはイエスの顔が映っていて
それを見た王は、病が治った──という話です。



有名なヴェロニカのベールの話は、
これをもとに生まれたといわれています。
以降、その布は行方不明になったのですが
525年にエデッサの城壁で発見されたのです。
直後にエデッサは敵国に攻められ絶体絶命の危機を
迎えますが、その「イエスの顔布」をかざしてみたら
神風顔風吹いて形勢超逆転。
奇跡的な勝利を収めたのです。

さて質問です。
下の写真のうち、イエス・キリストはどれでしょう?







答は、すべて! です。
パンチ頭に美少年、ギリシャ彫刻風‥‥
これらはみな5世紀までに作られたものです。
そう。昔はイエスの顔には「決まり」がなくて
各々自由に想像しながら描いていたのですね。
細面の長髪真ん中分け、口ひげあごひげ、大きな目。
これが私たちが思い浮かべるイエスの顔ですが、
では、だれが「その顔」に決めたのでしょうか。
キリスト教はユダヤ教から生まれたともいえるから、
当初は「十戒」により、
神の姿を描くことは禁止されていた。
聖書には顔の記述は1行もないし、写真もあるわけない。
ならば、だれが、いつ、なぜ、どのように?
映画でもパゾリーニやブニュエル、スコセッシら
個性派監督が撮ったイエスも、外見はみな同じです。
──その答えが聖骸布にあるんです。

実は前に紹介したエデッサの「イエスの顔布」は、
聖骸布を8つに折りたたんで、
顔の部分だけが見えるように飾っていたという説があり、
危機に陥ったエデッサを救ったということで
近隣諸国から諸人こぞりて御利益祈願のエデッサ詣で。
奇跡をもたらすイエスの顔布を複写して持ち帰りました。
やがてそのコピーが広まり、
イエスの顔の原型ができあがったのです。6世紀でした。
ほら、この11世紀に描かれたナポリ近郊の教会の絵。



髪型やひげの形、聖骸布の男にそっくりでしょう?



なにより額にかかる「3の字」の髪の毛、
本当にいい仕事をしてますね!

聖骸布を調べると、
人物の身長はおよそ180cmで、
血液型はAB型であること。
付着した58の花粉のうち、
イエスが暮らしていたユダヤでしか見られないものが
13種も検出されました。エデッサの花粉も20種ある。
ひざに付いた土はエルサレムに多い霰石だとわかり、
布の縫い方も1世紀のユダヤでしか見られない
独特なもの。
そして人物と聖書の記述からの「傷の照合」‥‥
これらをすべてひっくるめて推察すると
聖骸布の人物がイエス・キリストではないという確率は
250億分の1ということです。
ってことはイエスである確率は!!!
では、なぜ布にイエスの像が映ったのか?
この布はイエスの奇跡を起こすのか?
聖骸布の血痕からイエスのDNAは採取されたのか?
そもそもローマ教皇は認めているのか?
‥‥それはどうぞ本をご覧になり、うなってください。
なにはともあれ百聞は一見にしかず。
本当に聖骸布の男はイエスなのかと想像を巡らせながら
12使徒のひとりトマスのように
脇腹に手を触れてみませんか。
身長181cmの僕が持っても、ほら、「紙力」強いでしょ?



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『聖骸布の男
 あなたはイエス・キリスト、ですか?』
監修:ガエタノ・コンプリ
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2007-06-15-FRI

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