担当編集者は知っている。


『ABCDJ
 ―とびきりの友情について語ろう』
著者:ボブ・グリーン
翻訳:駒沢敏器
価格:2,100円 (税込)
発行:NHK出版
ISBN-13: 978-4140811931
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アメリカのごくふつうの人々の生活や
人生に目を向け、
心温まるコラムを書いてきた
名コラムニスト、ボブ・グリーンの最新作です。
タイトルにある「ABCDJ」は、
ボブを含む、5人の友だちの頭文字。
57歳となったボブは、ある日、
幼稚園時代からの親友ジャックが
末期ガンに冒されていることを知ります。
20年ぶりに故郷に集まる5人、
歳をとるということ、友だちを失う痛み‥‥
かけがえのない友情にぐっときます。
この本を担当されたNHK出版の
松島さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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著者/
NHK出版 図書編集部 松島倫明


ボブ・グリーンという名前を聞いて懐かしく感じるのは
きっとバブルを謳歌した
40代前後の方ではないでしょうか。
80年代後半、ニュー・アメリカン・コラムの旗手として
日本でも『アメリカン・ビート』『チーズバーガーズ』
といったベストセラーを連発し、
「SWITCH」や「Esquire(エスクァイア)」といった
雑誌でも盛んに特集されました。

僕が少し遅れてボブ・グリーンの本に初めて出会ったのは
たぶん90年代の初め、学生になった時分の頃でした。
高校からの友人に借りた『十七歳 1964春』は、
時代を超えて、同じ年頃を過ごす僕たちに、
「American way of life」への憧れと共に、
心地よい既視感と親近感を与えたのです。

A:アレン
B:ボブ(・グリーン)
C:チャック
D:ダン
J:ジャック

この5人の仲間たちが過ごした17歳の1年間。
学校生活にあがき、女の子に恋をし、
生殖器と脳みそのバランスに悩み、
お酒を覚え、車で毎晩のようにあてもなく彷徨い、
親や同級生と喧嘩をして、ビートルズに夢中になる‥‥、
そこには「古き佳きアメリカ」を色濃く残した田舎町で、
5人の等身大の青春が
日記形式の実話に基づいて描かれていて、
同じように大学生になっても地元の高校の仲間と遊び、
夜な夜な車で何処へともなく繰り出し、
一緒にバカをしていた、そのころの自分と、
不思議なぐらいに通じ合ったものでした。

時は過ぎ、ボブ・グリーンの名前も
忘れかけていたある日、
フランクフルトの国際ブックフェアで、
とある出版社のライツ・リストに、
並み居るベストセラー作家の名前に紛れて
控えめに紹介された彼の名前を偶然見つけました。
それが本書『ABCDJ』でした。

「もしも人生に幸運というものがあるとすれば、
 それはジャックのような親友を得ることだ。
 最初の、そしていちばん古い友人のジャック」

そう、本書は17歳を共に過ごした仲間たちの、
その後の人生と友情の物語だったのです。
僕は、静かな感慨と郷愁を覚えながら
そのタイトルに釘付けになりました。

誰にでも友情と呼べるものがあったはずです。
特に社会に出る前の10代や20代の時には、
「親友」と呼べる仲間がいたのではないでしょうか。
では、社会に出てからはどうでしょうか。
あるいは40歳になった時、50歳になった時、
その時にその仲間は、まだ友達のままでいるでしょうか?

「しかもその幸運が特別なものなら、
 たとえお互いがどのような道を歩むことになろうとも、
 友情の距離が遠くなることはない。
 同じ街に住む必要はないし、
 毎日のように顔を合わせている必要もない。
 友情‥‥とりわけそれがいちばん古いものであれば、
 距離などは何の関係もないのだ」

僕自身、『十七歳 1964春』を読んでから
すでに15年という歳月が経っていました。
だからこの言葉の持つかけがえのない重みが、
すぐに直感的に心に響いてきたのです。
それが、本書を手がけたいと強く思った理由でした。

社会に出る前の、まだ世間の荒波に揉まれることもなく、
「自分」という存在を素直にぶつけ合えた頃に
育まれた友情というものは、
その後に出会う「大人の友情」とは決定的に異質です。
それは、とても貴重なものだとも言えるし、
同時に、とても脆いものだとも言えるでしょう。

社会に出て仕事を見つけ、新しい職場と仲間に出会い、
その中で「生きる意味」を必死に見つけていく20代。
かつての仲間とは違う仕事、違う給料、
社会的地位や人生観も、もう一緒ではなくなります。
結婚をしたり、子供が生まれたり、
あるいは引っ越したり、
仲間ともだんだんと物理的に疎遠になり、
もう昔のようにつるんで遊びに行くことも、
バカをすることも難しくなってしまうでしょう。

でも、だからこそ友情はかけがえのないもので、
もし意識をしなければ、知らず知らずのうちに
失ってしまう類のものなのです。
そして、あの17歳だったボブ・グリーンは、
ABCDJの友情をずっと続けて来られたのです。
本書は、60歳を目前にした彼らABCDJの
半世紀にわたる友情の物語です。
そしてまた、末期癌を宣告されたジャックとの
最後の1年を綴った、喪失の物語でもあります。

「自分たちにとってすべてを意味し、
 それがなかったら人生なんて無に等しい
 と思える存在が親友だとしたら、
 それはまさに神から与えられた
 幸運の輝きなのだと言っていい。
 そして友人を失ってみて初めて
(それは誰にだって起こることだ)、
 思い知らされることがある‥‥」

30代の僕にはまだ、
友達を死によって失うという実感は湧きません。
でもボブ・グリーンが言うように、
それは「誰にだって起こる」ことなのです。
その時にその友情を本当にリスペクトできたなら、
それは人生の幸福のひとつだと言えるのでしょう。
少なくとも僕は、そうでありたいと思いました。
そのためには、今この時が大切なのだ、と。



本書の版権を取るにあたっては葛藤もありました。
ボブ・グリーンはすでに旬を過ぎた作家だ、
という意見もありましたし、
シカゴ・トリビューンを辞職に追い込まれた
色恋沙汰のスキャンダルも気に掛かりました。
でも、本書の物語には彼の全生涯をかけた
輝きが確かに含まれていました。
それは一朝一夕では描けないものだったし、
あの『十七歳 1964春』を書いた
ボブ・グリーンだからこそ書くことができる、
あるいは書かざるを得なかった、
半世紀を貫く真実の物語でした。

「本を作る時にはそれを買う読者がすぐに
 想定できるかどうかが大切だ」とよく言われます。
すでに原書がある翻訳書なら、それはなおさらでしょう。
僕は本書を読んですぐに、僕の仲間、僕のABCDJに
この本をぜひ読んで欲しい、邦訳版を作って届けたい、
と思いました。そう強く感じられたことが、
本書の版権を取ろうと決意した一番の理由でした。

57歳の友情を描く本書は同時に、
17歳から続く大人のための青春小説でもあります。
だから一人でも多くの読者に本書を手にしてもらい、
そしてまたその人が、自分の「ABCDJ」に
この本を薦めてもらえることを願ってやみません。

「誰にでも、最も深い友情について書くことは可能だ。
 もしも幸運に恵まれているなら
(そして誰もがその幸運を体験していると私は思う)、
 友情というものはいつもそこにあるからだ。
 あるいはかつて輝かしいものとして、
 誰にも存在していたはずなのだ‥‥」

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『ABCDJ
 ―とびきりの友情について語ろう』
著者:ボブ・グリーン
翻訳:駒沢敏器
価格:2,100円 (税込)
発行:NHK出版
ISBN-13: 978-4140811931
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2007-06-05-TUE

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