担当編集者は知っている。


『すみモダン』
著者:鈴木海花
価格:1,995円 (税込)
発行:芸術新聞社
ISBN-13: 978-4875861720
【Amazon.co.jpはこちら】

筆、墨、硯、和紙など和の文具を、
もっと気軽に楽しもう!
というコンセプトで作られたビジュアルブックです。
お気に入りの道具を探す京都の旅ガイド、
お寺での写経体験レポート、
墨を使ったトートバッグの作り方や
消しゴムで作る落款印の紹介など、
和の文具とのたのしいつきあい方の
アイディアがいっぱいです。
この本の著者の鈴木海花さんに
お話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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著者/
フリーライター・編集者 鈴木海花


さわやかな秋のある日のこと。
すごく心のこもったプレゼントをいただいた方に、
ちょっと力を入れてお礼状を書こうと、
久しぶりに携帯用の墨硯セットを取り出しました。 
小さな硯に水を注ぎ墨をすっているうちに、
なにやら、うーん、この気持ちの落ち着きはなに???
何回も直して書き上げ、封をして、
切手を貼って投函して‥‥えらい時間かかりました。
でもこの一連のめんどくさいことをやってみたら、
なんだか墨の手書きっていいな、
こういう行為を失いたくないな、
という強い気持ちが湧いてきたのでした。

そんなとき、デザイナーである主人の紹介で、
書道専門誌『墨』の出版社である
芸術新聞社の社長さんにお会いすることになり、 
「いやあ、墨で字を書く人が減っていましてねぇ。
 なんとかしたいと思っているんです」と社長さん。
「でも、このところ墨や硯みたいな
 和のステーショナリーが身近にある暮らしに
 あこがれているんですよ」と私。
すると社長さんは、わが意を得たりという感じで
「でしょ? 
 けっこう潜在的に居ると思うんです、そういう人。
 書道をやるとかいう前に、
 まず和の筆記道具の魅力や楽しみ方を
 知ってほしいわけで、鈴木さん!(力の入った声)、
 そういった方のための本をぜひつくってください!」
ええっ! 書道は好きだったけど
中学3年までしかやっていなかった私が‥‥ですか?
でも和のテイストのものは大好きで、
『和の小さくてかわいいいもの』という本も
出しているし、やってみようかな‥‥。
数日間熟考後、「ぜひやらせてください」と
お願いした私に社長さんは大喜びで、
でもきっぱりと「では、出版は3月の末に」と。
入稿まで3ヵ月もない‥‥。

12月の1ヵ月、墨を使って
自分がやってみたいことなど、
じっくりアイディアを練りました。
趣味の三本柱が昆虫採集とクラフトづくりとゲーム、
という私がまずやってみたかったのは、
墨を使ったクラフトづくり。
さっそく材料を買いに走り回り、
好きな書体をさがす和の古書などの資料も集めて、
1月2日からスタート。
用意した材料でつぎつぎと墨を使ったものをつくって
撮影する日々がはじまり、
これが入稿直前までずっと続きました。

資料から選んでおいた書体を
コットンのトートバックに書いてみると‥‥
うーん、なかなかいい。
墨流しは、同じ模様がふたつとないのが
面白くてやめられなくなり、
手軽に取り組める消しゴム落款づくりにも、
はまりました。


▲カリグラフィー・トートバッグ


▲消しゴムで手軽に作る落款印


▲あわ立つ波打ち際を思わせる美濃和紙に、
 貝殻を墨で描いたランチョンマット


しかし中には、どうしてもうまくいかなくて
没になったものもいくつか。
私がいちばん好きな色というとグレー。
墨の色はまさに多彩なグレーの色の宝庫です。
そこで原毛でつくったボールを、
5段階の墨色に染めたら、きっとかわいい! と思い、
丸2日かけて取り組んだのですが、
微妙な5段階の墨色が出せず、ボツになりました。

主人に頼んで描いてもらった、
本と読者をイメージした女性のシルエット
「コスミちゃん」のイラストもできあがってきました。
日々の中で墨を楽しんでいらっしゃる方々も
紹介しようと、
北欧テイストのインテリアに
墨の道具が驚くほどマッチしている
エッセイストの柳沢小実さん、
文通友達に送ってもらった一本の筆ペンから
プラハで書道を始めたという
チェコ人ペトル・ホリーさん、
そして、割り箸ペンに墨で書いた
雑草の本がすてきな花作家の
かわしまよう子さんたちのお家にもお邪魔しました。

2月半ばには京都へ、2泊3日の取材と
好きな道具探しの旅を決行。
カメラマン兼ADとして主人が、
私と同業の編集者でもある娘との3人旅でした。
京都ならではの書道具店取材の合間にも
カフェや和菓子屋さんに行きまくり、
奮発して憧れの柊屋さんに泊ったり、と
忙しい中にも楽しみをいっぱい詰め込んだ旅でした。
京都はほんとに手書きや墨&筆を使う風習が
色濃く日常にありますね。


▲京都で見つけた小さくてかわいいものたちも
 ページでご紹介しています


中でも忘れられないのが泉涌寺雲龍院での写経。
お若いのにどこか味のあるご住職、
そのお母さま手作りの温かくて美味しい和菓子に感激。
写経をやってみようという方には
ぜひ雲龍院をオススメしたいです。


▲500年の歴史を持つ写経道場のある泉涌寺雲龍院

素敵な色合いの古裂をたくさん見つけて、
これらはページのあちこちに散りばめることにし、
瓢箪型の硯や貝と蟹のモチーフの水滴など、
お気に入りの道具もゲットしました!


▲瓢箪型の硯


▲貝と蟹がモチーフの水滴

時代を超えて魅力のある、
書の美しさってあるに違いない。
それも紹介したい、と
いろいろな書道家の書を見てみました。
その中でいちばんピンときたのが、
画家でもあった中村不折と歌人の与謝野晶子の書。
ふたりの書は全く違いますが、
自由でモダンな永遠のテイストを持っていると思います。


▲1908年に刊行された中村不折の『龍眠帳』の文字

やってみないとその面白さがわからないことって、
たくさんある、というのが
この本をつくりながら何度も思い知らされたことです。
墨の世界って、私たちの近くに、じっと息を潜めて
思い出してもらえるのを待っているのです。
この本が、引き出しの奥に忘れていた
素敵なものを見つける、
そんなキッカケになるといいなあ、と思っています。

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『すみモダン』
著者:鈴木海花
価格:1,995円 (税込)
発行:芸術新聞社
ISBN-13: 978-4875861720
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メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2007-05-29-TUE

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