![]() |
| 担当編集者は知っている。 |
世界で一番短い詩と呼ばれる俳句。 その俳句がアートワークや写真とコラボすることで、 いままでにない句集ができあがりました。 著者は若手俳人の大高翔さん。 撮影は写真家の市橋織江さん。 「きみは 私の舟だったのに 秋麗」 「何もかも 散らかして発つ 夏の旅」 「名を呼んで 子を振り向かす 花の昼」 せつない恋の句や、 はじめてのお子さんをいとおしむ句など62句、 エッセイとともにおさめられています。 この本を担当された 求龍堂の鷲見さんにお話をうかがいました。 (「ほぼ日」渡辺) *********************************** 担当編集者 /求龍堂 編集部 鷲見えり ■俳句って面白い! 初めて俳人の大高翔さんとお会いしたのは 昨年の秋くらいでした。 知り合いのコピーライターさんのつながりで 「こんな俳人の人がいるよ」と紹介されたんです。 実は、私はそれまで俳句に全然興味がありませんでした。 教科書に載っている難しいモノ というイメージをもっていたんです。 でも、大高さんにお会いする前に 大高さんの第2句集『17文字の孤独』を 読ませていただいて、 あっと言う間にその世界に惹き込まれてしまいました。 映画を見ている時や音楽を聴いている時に感じる ものすごい感情の揺れを、 たった17文字の中に感じ取ることができるなんて、 初めての経験でした。 「俳句ってこんなに面白いものなんだ」という気持ちで 勢い込んでお会いした大高さんは、凛とした日本美人。 ![]() ▲著者の大高翔さん なのに、大高さんは、会った早々、徳島弁で すっとボケた発言を繰り出す、非常に面白い方でした。 その時、一緒に飲んでいた 電通のアートディレクターの八木義博さんたちと、 「俳句の良さをたくさんの人に知ってもらえるような すごい本を作ろう!」と盛り上がり、 新橋の焼鳥屋さんで、この本を作ることを決意したんです。 ■どうやったら俳句の面白さが伝わるか? とにかく、大高さん以外、 今まで俳句に関わったことのない人ばかりの チームだったので、 まずどうしたら俳句に興味をもってもらえるか? と言うことを考えました。 俳句って何で難しいと感じるんだろうと考えると、 どうも、「季語が分からない」とか「言葉が難しい」とか そんな意見が多いみたいでした。 そこで、大高さんの俳句に親しんでもらえるように、 1.どれが季語で、季節はいつか、 どういう意味かを記す。 2.俳句のイメージがふくらむような 短いエッセイを加える。 3.視覚的にも楽しめるよう、 アートや写真で彩りを添える。 ということを決めました。 ■俳句とアートが出会った! 最初に、みんなに親しんでもらえるテーマは何か、と 話していて出てきたモチーフが“東京タワー”でした。 大高さんが実際に東京タワーに行って、 その場でできた句をすぐに みんなに送ってきてくださったんです。 それが 「秋天に東京タワーといふ背骨」 という句です。 今まで東京タワーがそんな風に見えるなんて 思ってもみなかったのに、 句を読んだ瞬間、私の心の中にも 東京タワーが凛と立った気がしました。 するとすぐに電通の八木さんがこんなに素敵な ビジュアルを送ってきてくださったんです。 ![]() ▲この本を作る起点になった句とアート 秋晴れの真っ青な空に、東京タワーのように立つ俳句。 このイメージをいただいた時から、 求龍堂営業部も いろいろな書店さんに事前に案内を始めてくれて、 わたしたちチームみんなのワクワクが 少しずつ形になっていきました。 さらに、俳句がページを越えて つながるようなビジュアルをという考えから、 “林檎”をテーマにした句が生まれ、 八木さんのビジュアル案をもとに、 写真家の市橋織江さんが 素晴らしい写真を撮り下ろしてくださいました。 ![]() ▲これがもとになった図案 ![]() ▲市橋さんが撮り下ろすとこんなに可愛く ![]() ▲林檎の皮を剥いていくと‥‥ ![]() ▲アップルパイに!! ■読む人によって違うのが、俳句 毎回深夜に及ぶ話し合いを重ねていったのですが、 とにかく大高さんの天然っぷりがたまらなくて、 財布を忘れて遅刻をしてきたり、 自分で出したアイディアを 後になって、再度こちらから言うと 「良いアイディアやねぇ。同感やわぁ」と にこにこしているし、 毎回笑いの絶えない打ち合わせ現場でした。 そんな大高さんから出てくる俳句やエッセイは、 胸をぎゅっと掴まれるような切ないモノだったり、 ドキッとさせられるような力強いモノだったり。 この可憐な人からどうしてこんなにも すごい言葉が紡がれ出てくるんだろう、と 毎回新しい俳句をいただく度に 泣きそうになりました。 面白いなと思ったのが、 俳句って読む人やその時の情況によって いくらでも解釈が違うんですよね。 ある俳句を読んだ時に、 「これは失恋の句だろう」 「いやいや、これはこっちが振った句だよ」 「違うよ、二人とも好きなのにもどかしい句だよ」 と、みんなの読み解き方が全然違う! 俳人の方たちは、よく車座になってこうやって 俳句の解釈を話し合うそうです。 なんだか楽しそうじゃありませんか? 皆さんにもぜひこうやって、 『キリトリセン』をもとに いろんな意見を交わしてほしいなと思っています。 ■“キリトリセン”の由来 少しずつ本の形が見えてきたところで、 “タイトル何にする?会議”をしました。 すると、チームの一員の電通コピーライター 筒井晴子さんが 「大高さんには、みんなには普段なかなか見えない 日常を切り取る“キリトリセン”が 見えているんですね」 と言う発想をして下さいました。 それは、それまでみんなが漠然と考えていた 本のイメージが一致した瞬間でした。 そう、この本はなにげない日常の瞬間を、 大高翔さんという一人の女性が 切り取り続けた軌跡でもあるんです。 ![]() ▲「息ひそめても揺れてゐる春の燭」 ![]() ▲「逢ふことも過失のひとつ薄暑光」 ![]() ▲「花衣遠きところへ来てしまふ」 ■あなたにも見える、キリトリセン 大高さんの俳句は、本を読むように、音楽を聴くように、 すっと胸に入ってきて読む人の心に共感をもたらします。 たとえば、心躍るような嬉しいことがあった時、 自分だけ分からないような楽しみを見つけた時、 誰にも言えないけれど深く心が痛んだ時、 気持ちを上手に伝えられなくてもどかしい時‥‥ 日常の様々なシーンで、 読者の心に寄り沿うような俳句なんです。 俳句は世界で一番短い詩(うた)と言われています。 情報過多な時代だからこそ、 こんな風に潔く、 四季の移ろいを織り込んだ美しい詩に 酔いしれるのはいかがでしょうか? きっと、読んだその日からひとりひとりの “キリトリセン”が見えるはずです。 ***********************************
|
担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。
2007-05-22-TUE
![]() 戻る |