担当編集者は知っている。


『キリトリセン』
著者:大高翔
価格:1,365円 (税込)
発行:求龍堂
ISBN-13: 978-4763007186
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世界で一番短い詩と呼ばれる俳句。
その俳句がアートワークや写真とコラボすることで、
いままでにない句集ができあがりました。
著者は若手俳人の大高翔さん
撮影は写真家の市橋織江さん
「きみは 私の舟だったのに 秋麗」
「何もかも 散らかして発つ 夏の旅」
「名を呼んで 子を振り向かす 花の昼」
せつない恋の句や、
はじめてのお子さんをいとおしむ句など62句、
エッセイとともにおさめられています。
この本を担当された
求龍堂の鷲見さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/求龍堂 編集部 鷲見えり


■俳句って面白い!


初めて俳人の大高翔さんとお会いしたのは
昨年の秋くらいでした。
知り合いのコピーライターさんのつながりで
「こんな俳人の人がいるよ」と紹介されたんです。
実は、私はそれまで俳句に全然興味がありませんでした。
教科書に載っている難しいモノ
というイメージをもっていたんです。
でも、大高さんにお会いする前に
大高さんの第2句集『17文字の孤独』を
読ませていただいて、
あっと言う間にその世界に惹き込まれてしまいました。
映画を見ている時や音楽を聴いている時に感じる
ものすごい感情の揺れを、
たった17文字の中に感じ取ることができるなんて、
初めての経験でした。

「俳句ってこんなに面白いものなんだ」という気持ちで
勢い込んでお会いした大高さんは、凛とした日本美人。


▲著者の大高翔さん

なのに、大高さんは、会った早々、徳島弁で
すっとボケた発言を繰り出す、非常に面白い方でした。
その時、一緒に飲んでいた
電通のアートディレクターの八木義博さんたちと、
「俳句の良さをたくさんの人に知ってもらえるような
 すごい本を作ろう!」と盛り上がり、
新橋の焼鳥屋さんで、この本を作ることを決意したんです。


■どうやったら俳句の面白さが伝わるか?

とにかく、大高さん以外、
今まで俳句に関わったことのない人ばかりの
チームだったので、
まずどうしたら俳句に興味をもってもらえるか?
と言うことを考えました。
俳句って何で難しいと感じるんだろうと考えると、
どうも、「季語が分からない」とか「言葉が難しい」とか
そんな意見が多いみたいでした。
そこで、大高さんの俳句に親しんでもらえるように、
1.どれが季語で、季節はいつか、
  どういう意味かを記す。
2.俳句のイメージがふくらむような
  短いエッセイを加える。
3.視覚的にも楽しめるよう、
  アートや写真で彩りを添える。
ということを決めました。


■俳句とアートが出会った!

最初に、みんなに親しんでもらえるテーマは何か、と
話していて出てきたモチーフが“東京タワー”でした。
大高さんが実際に東京タワーに行って、
その場でできた句をすぐに
みんなに送ってきてくださったんです。
それが

「秋天に東京タワーといふ背骨」

という句です。
今まで東京タワーがそんな風に見えるなんて
思ってもみなかったのに、
句を読んだ瞬間、私の心の中にも
東京タワーが凛と立った気がしました。

するとすぐに電通の八木さんがこんなに素敵な
ビジュアルを送ってきてくださったんです。


▲この本を作る起点になった句とアート

秋晴れの真っ青な空に、東京タワーのように立つ俳句。
このイメージをいただいた時から、
求龍堂営業部も
いろいろな書店さんに事前に案内を始めてくれて、
わたしたちチームみんなのワクワクが
少しずつ形になっていきました。

さらに、俳句がページを越えて
つながるようなビジュアルをという考えから、
“林檎”をテーマにした句が生まれ、
八木さんのビジュアル案をもとに、
写真家の市橋織江さんが
素晴らしい写真を撮り下ろしてくださいました。


▲これがもとになった図案


▲市橋さんが撮り下ろすとこんなに可愛く


▲林檎の皮を剥いていくと‥‥


▲アップルパイに!!


■読む人によって違うのが、俳句

毎回深夜に及ぶ話し合いを重ねていったのですが、
とにかく大高さんの天然っぷりがたまらなくて、
財布を忘れて遅刻をしてきたり、
自分で出したアイディアを
後になって、再度こちらから言うと
「良いアイディアやねぇ。同感やわぁ」と
にこにこしているし、
毎回笑いの絶えない打ち合わせ現場でした。

そんな大高さんから出てくる俳句やエッセイは、
胸をぎゅっと掴まれるような切ないモノだったり、
ドキッとさせられるような力強いモノだったり。
この可憐な人からどうしてこんなにも
すごい言葉が紡がれ出てくるんだろう、と
毎回新しい俳句をいただく度に
泣きそうになりました。

面白いなと思ったのが、
俳句って読む人やその時の情況によって
いくらでも解釈が違うんですよね。
ある俳句を読んだ時に、
「これは失恋の句だろう」
「いやいや、これはこっちが振った句だよ」
「違うよ、二人とも好きなのにもどかしい句だよ」
と、みんなの読み解き方が全然違う!
俳人の方たちは、よく車座になってこうやって
俳句の解釈を話し合うそうです。
なんだか楽しそうじゃありませんか?
皆さんにもぜひこうやって、
『キリトリセン』をもとに
いろんな意見を交わしてほしいなと思っています。


■“キリトリセン”の由来

少しずつ本の形が見えてきたところで、
“タイトル何にする?会議”をしました。
すると、チームの一員の電通コピーライター
筒井晴子さんが
「大高さんには、みんなには普段なかなか見えない
 日常を切り取る“キリトリセン”が
 見えているんですね」
と言う発想をして下さいました。
それは、それまでみんなが漠然と考えていた
本のイメージが一致した瞬間でした。
そう、この本はなにげない日常の瞬間を、
大高翔さんという一人の女性が
切り取り続けた軌跡でもあるんです。


▲「息ひそめても揺れてゐる春の燭」


▲「逢ふことも過失のひとつ薄暑光」


▲「花衣遠きところへ来てしまふ」


■あなたにも見える、キリトリセン

大高さんの俳句は、本を読むように、音楽を聴くように、
すっと胸に入ってきて読む人の心に共感をもたらします。
たとえば、心躍るような嬉しいことがあった時、
自分だけ分からないような楽しみを見つけた時、
誰にも言えないけれど深く心が痛んだ時、
気持ちを上手に伝えられなくてもどかしい時‥‥
日常の様々なシーンで、
読者の心に寄り沿うような俳句なんです。

俳句は世界で一番短い詩(うた)と言われています。
情報過多な時代だからこそ、
こんな風に潔く、
四季の移ろいを織り込んだ美しい詩に
酔いしれるのはいかがでしょうか?
きっと、読んだその日からひとりひとりの
“キリトリセン”が見えるはずです。

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『キリトリセン』
著者:大高翔
価格:1,365円 (税込)
発行:求龍堂
ISBN-13: 978-4763007186
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postman@1101.comに送ってください。

2007-05-22-TUE

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