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| 担当編集者は知っている。 |
京都で代々暮らす地元の人たちが 大切に守ってきた祭りの道具作りや、 砥石や畳、ふすまの引き戸など 伝統ある身近な物作りにスポットをあて、 その歴史やエピソードを紹介した本です。 ごく普通に使っているものが、 実は京都発祥だったり、 ひとりの職人さんがいなくなってしまうと 途絶えてしまう、というものだったり、 目立たないけれど欠くことができない 「いい」物作りの事例や 職人の心意気がいっぱいつまった本です。 この本を担当された京都新聞出版センターの 堂下さんにお話をうかがいました。 (「ほぼ日」渡辺) ************************************* 担当編集者 /京都新聞出版センター 堂下まみ子 「京都といえば○○」の○○にあてはまるような、 京料理、和菓子、漬物、着物、舞妓さん、社寺、 町家などの、いわば「主役」を脇で支えてきた 道具やモノにスポットをあてました。 どんな役目があるのか、 どこでだれが作っているのかなど、 「脇役」たちの背景にあるドラマや 隠れたエピソードを盛り込んで紹介した本です。 この本は私が企画したのですが、 まず「京都の人が読みたい本」とはどんな本だろう‥‥と 考えました。 70代の父は、雑誌やテレビで取り上げられる 「これぞ京都」的な場所や店に対しては、 「あんなとこは、観光客の行くところや」とか、 「なんであんな店に並ぶんやろ」と興味なし。 一方で、京ことばの本を読んでいたり、 京都の老舗を紹介したテレビ番組などは見ている。 京都人なのに、相変わらず 京都のことが気になるのだなぁと思っていました。 私は、京都生まれ京都育ちですが、 実は京都があまり好きではない。 着物を着たら「やっぱり京都ねぇ」と言われ、 普段の食卓のおかずに「京都はちがうね」と 感心されるのには、うんざりでした。 ただ、目線をかえれば気になるモノ、 知らないことがまだまだいっぱいある。 そこで、今まで取り上げられることのなかった 「脇役」たちに注目してみたのです。 普段の暮らしや日々の仕事の中にこそ、 「ほんまもんの京都」がある。 歴史や伝統や文化は、日々繰り返される仕事や、 作り手の思いの積み重ねである ‥‥という思いから始めた取材でした。 例えば、「マネキン」。 京都が発祥の地でした(私も知らなかった)。 京都=着物というイメージがあるので、 マネキンメーカーのパンフレットに並ぶ 外国人モデルのような人形の数々にはびっくり。 本書のイラスト用にどれを選ぼうかと悩んだほど‥‥。 着物といえば、「畳紙(たとうし)」。 着物の数だけ必要なものなので、 京都で作っているだろうとは予測していましたが、 どこで、どのように? ということまでは知りませんでした。 「ウインドたとう紙」というヒット商品が 主婦のアイデアから生まれたということも‥‥。 京都は相変わらずの町家ブームですが、 「土壁」や「ふすまの引手」「畳の縁」なんかに 注目してみると、結構おもしろい。 「畳の縁を踏んではいけない」理由知ってますか? 「土壁」って何からできてるかわかりますか? 「主役」ではなく、「脇役」に目を向けると、 気になるモノが次々に出てきます。 メディアにしばしば登場する美しい京料理や和菓子。 そこに何気なく存在している「青竹」の器や、 盛り付けに使われる季節の「つまもの」、 桜餅やちまきの「葉」、 和菓子に添えられる「黒文字」‥‥。 なくてはならないものなのですが、 今までスポットをあびたことがありません。 京都は神社仏閣が多いので、 その周りにも「脇役」がいっぱい。 座禅のときに、パシッと肩をたたかれるあの棒 「警策(けいさく/きょうさく)」や、 鐘をゴーンと打つ棒「撞木(しゅもく)」、 神社でガランガランと鈴を鳴らす縄「鈴緒(すずのお)」 など、呼び名も知らなければ、 どこでだれが作っているのか知らないものが多い。 葵祭や時代祭の雅な行列に参加している「馬や牛」は、 普段どこで何をしているのか? 競馬場? まさか今どき農作業をしているはずはないし‥‥と、 疑問はふくらみます。 茶道、華道、能、歌舞伎、邦楽などの 伝統文化の脇役たちも奥が深い! 意外な歴史や意味があって、それを知ってしまうと、 生け花より「剣山」に、 能の舞いより「作り物」に、 抹茶碗より「灰」に目がいってしまう自分が怖い‥‥。 「脇役」たちは、 今まであまり取り上げられることがなかったためか、 取材に行くと「何でこんなもん、取材すんの?」と 驚かれることもありました。 でもいったん話し出すと、熱く語られる方が多く、 作り手の思いが伝わってきました。 「唯一人」「最後の一軒」も多く、 5年先、10年先なら取材ができなかったかも‥‥ というところも。 取材先で「○○を取材している」と話すと、 「それなら△△さんがくわしいで」 「××さんに声かけたげよか」と、 別の取材先を紹介してもらうことも多く、 意外なところでつながったりすることがよくありました。 祇園祭が京野菜の九条ねぎとつながっていることが わかった時には、取材者は興奮して帰って来ました。 取材を担当した5人は取材先から帰ると、 まるで特ダネでも見つけたかのように、 聞いた話や見たことを報告しあうことも多かったです。 「京都はせまい」と言われるのはこのことか‥‥ と実感することもしばしば。 京都に暮らしているからこそできた取材だと思います。 バスの中で偶然目にしたお坊さんの「腕貫(うでぬき)」、 小さい頃「お守り」の中身が気になって開けてみた体験、 散歩中に子どもが手を合わせて拝むことで気づいた 「お地蔵さんのほこら」の構造‥‥。 普段の生活の中にこそ、京都を知るヒントがある ‥‥と取材を通じて体感できました。 「地元(京都)の人に読んでほしい」 という思いで企画した本でしたが、 取材を終えた今は、京都の人だけでなく、 ひとりでも多くの人に 「ほんまもんの京都」を知ってほしい。 「そうだ、京都行こう」のCMで流れる映像のような 「京都」のイメージとはちがう、 京都の滋味を感じてほしいと思っています。 *************************************
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2007-05-15-TUE
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