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| 担当編集者は知っている。 |
翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイ集。 ごくありふれた身近なものを じーっと観察しているうちに わき出てくる数々の疑問。 つきつめていくうちに、 そぼくな疑問はシュールな妄想に‥‥。 岸本さんのつむぐ言葉は独特で、 でもおかしくて、 ぐいぐいと引き込まれていきます。 この本をご担当された筑摩書房の松田さんに お話をうかがいました。 (「ほぼ日」渡辺) ************** ******* ******* ******* ******* 担当編集者 /筑摩書房編集部 松田哲夫 このエッセイ集『ねにもつタイプ』は、 1冊の本として刊行されるまでに、 なんと6年間もの歳月がかかっています。 そもそも、ぼくが11年間コメンテーターを務めている TBS系TV番組「王様のブランチ」がきっかけでした。 2000年、『気になる部分』というエッセイ集を読んで、 その類のない面白さに魅了され、番組で紹介しました。 この本は、なんと言っても、てらいのない文章で、 決して「笑わそう」としていないところがいい。 でも、「気になる部分」にこだわり続け、 じっくりと考えているうちに、 とんでもない世界に入り込むことになる。 だから、ついつい笑ってしまうんです。 ぼくは、「ユーモア・エッセイ界に大型新人現る!」 と声を大にして言いたくなり、取り上げました。 ![]() ▲『気になる部分』白水社Uブックス こういう不思議なことばかり考えている人ってどんな人? という興味もあって、お目にかかることにしました。 打ち合わせに出掛けてみると、 なんと、楚々とした知的な美人が 目の前に現れてビックリ。 エッセイ集をつくろうということになったのですが、 なかなか始動することができませんでした。 2002年から、ようやく「ちくま」連載が始まりました。 それからは、毎月毎月、 届けられる原稿に驚かされました。 よくぞ、次々に、こんな面白い話を書けるものだと、 笑い転げながら感心していました。 それでも、毎回の枚数が4.5枚しかないので、 なんと5年間の連載を重ねていって、 やっとのことで1冊にまとまったというわけです。 ![]() ▲著者の岸本佐知子さん さて、この本の面白さというのは、 どういうところにあるのでしょうか。 例えば、「それまで気にもとめていなかったことが、 突然どうしようもなく変に思える瞬間がある」 と岸本さんは書くのです。 見れば見るほど「ちょんまげ」という髪型は 奇妙なものに思えてしょうがない。 どう考えも、何かの罰ゲームか 恥辱プレイの一種としか思えなくなってくる。 もしや、宇宙人の陰謀ではないかというところまで、 岸本さんの妄想は突っ走っていってしまうのです。 ![]() ▲本書「疑惑の髪型」の挿絵 例えば、ある時、翻訳家である岸本さんは、 目の前の英文について考えようとしていました。 そういう時に限って、「コアラの鼻」が気になるのです。 「材質は何でできているのだろう。」 「触ったらどんな感じだろう。 カサカサしてほんのり温かいだろうか。 それとも案外ひんやり湿っているだろうか。」 こういう風に、ひとたびこだわりが生じると、 そこから妄想エンジンが全開していくのです。 読者は、アッと言う間に、とんでもない キシモトワールドに連れて行かれるのです。 ![]() ▲本書「裏五輪」の挿絵 こういう風に、岸本さんは、世の中にある、 ちょっとした現象やささいな言葉遣いなどが、 気になって、こだわりはじめていきます。 それは、スポーツだったり動物だったり 日常のしぐさだったり言葉だったりします。 そのこだわりの芽をゆっくりと育てていくと、 いつの間にか、シュールな世界が広がっていきます。 そこに、思いがけない物語が生まれてくるんです。 隠された真実とおぼしきものが 垣間見えたりすることもあるんです。 だから、1編1編は短いエッセイなのに、 壮大なストーリーを読んだような充実感があります。 きわめてシーリアスな語り口なのに、 読み進むうちに、ふつふつと笑いがこみあげてきます。 この面白さは、他の何にもたとえようがないですね。 川上弘美さん、小川洋子さん、北村薫さんなど 有名作家も大ファンだというのも肯けます。 ![]() ▲『空中スキップ』マガジンハウス そういえば、岸本さんの本業は翻訳家です。 彼女が訳すのは奇妙な作品ばかり。 ニコルソン・べーカー、ジャネット・ウィンターソン といった一筋縄でいかない作家が多い。 最近出た、ジュディ・バドニッツの『空中スキップ』。 これまたヘンテコな話満載の掌編小説集です。 気の弱い青年が、おばさんたちに責め立てられて、 母親に心臓を提供するハメに陥ったりします。 ![]() ▲本書「フェアリーランドの陰謀」の挿絵 そうそう、この連載が始まるときに、 挿絵をクラフト・エヴィング商會さんにお願いしました。 それには深い訳があるのです。 『気になる部分』を読み終えて、興奮冷めやらぬころ、 ちょうどクラフトさんたちと会いました。 「いま、すっごく面白い本見つけたんだ」 と、ぼくは自慢げに語ろうとしました。 すると、彼らも「ぼくたちも」と言うのです。 「では」と両方で書名をあげてみたら、 なんと同じ『気になる部分』だったのでした。 これは何かの縁だと思い、彼らに挿絵をお願いしました。 岸本さんの文章とクラフトさんの挿絵、 その両者のボケとツッコミの頃合いも絶妙ですね。 そして、この本の装幀はもちろんクラフトさんです。 こういう楽しい本をまとめられるなんて、 編集者って、本当にいい職業ですよね。 ---------------------------------------- ■ お知らせ ■ さて、こんな魅力的なエッセイを書く 岸本佐知子さんって‥‥と 気になった方も多いのではないでしょうか。 実は、大竹昭子さんが毎月ブックカフェで行なっている トーク&朗読会の「カタリココ」第5回目のゲストは、 岸本佐知子さんです!! ご自身が朗読するとどんな感じになるのか楽しみです。 日時:5月19日午後5時開場、5時半開演 場所:Rainy Day Bookstore &Cafe (西麻布・長谷寺横のスイッチ・パブリッシング地階) 料金:1500円 要予約:03-5485-2134(ネット予約可) ホームページはこちら ---------------------------------------- ************** ******* ******* ******* *******
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2007-04-24-TUE
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