担当編集者は知っている。


『英語になった日本語』
著者:早川勇
価格:1,680円(税込)
発行:春風社
ISBN-13:9784861100895
【Amazon.co.jpはこちら】

著者は英語辞書史の専門家の早川勇さん。
このご本は英語になった日本語の事例をあげ、
英語として使われるようになった経緯や
日本語と違う意味で使われている理由などを
謎解きするように
わかりやすく紹介しているエッセイです。
kawaii(かわいい)やshibui(しぶい)が
英語になっていることに、へーっと思ったり、
日本語の意味とはぜんぜん違う意味で
使われている言葉があることに驚いたり‥‥。
聞きまちがえられたまま
英語になったへんな言葉もあるんです。
このご本を担当された春風社の
窪木さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/春風社 窪木竜也

いま、日本のマンガとアニメは世界中の人が見ています。
manga、animeという語が
海外でも通用することを知っている人は多いでしょう。
また、連日大リーグでの日本人選手の活躍が
伝えられていますが、
咋年のワールド・ベースボール・クラシックで
日本代表チームが優勝した際、
ニューヨーク・タイムズに
「ヤキュウへの愛のために(For the Love of Yakyu)」
という社説が掲載されました。
英語になった日本語はたくさん存在するのです。

古くはsushi、tempura、geishaにはじまる
日本語語源の語彙で
英語にとりいれられたものを集めたのが本書です。
巻末の一覧表(索引)には、
およそ700語が収められています。

●メボスって何?

karaoke、futon、judoなどの有名どころはもちろん、
ちょっとした変わり種もあります。
語のかたちが変わってしまったものや、
和製英語が本場の英語になったものなど。
たとえば、mebosとは何のことかわかりますか?
これ、どうも梅干のことみたいなのです。
どこからどう伝わって梅干がmebosになったのか、
さまざまな資料や事実関係から
その経緯を推理していくところが、本書の醍醐味です。
ほかにも、インドの三輪タクシーである
auto-rickshawの語源は人力車だった、
醤油につけた鶏のレバーを
ベーコンで巻いた料理の名前は
春巻きそっくりのrumakiという、
もともと「ナイフのような鋭い道具で
ある物を小さく切る」という意味のchopが
力道山の活躍以降「空手チョップ」の意味で
アメリカでも用いられるようになった‥‥など、
いろいろな言葉を紹介しています。
著者といっしょに言葉の謎解きに挑戦してみてください。


●言語のぶつかり合いが豊かさを生みだす

著者の早川勇さんは辞書学、とくに英語辞書史の専門家。
150年にわたる日本の英学史をあつかった
『日本の英語辞書と編纂者』を弊社から刊行しています。
江戸時代につくられた英語辞書の組版という、
とても貴重でマニアックな写真を多数収録しています。


▲日本語を横書きするという発想が
 普及していなかった時代の辞書。
 横組の英語に合わせ、縦組の日本語を横に倒している。
 1873年(明治6)柴田昌吉・子安峻同著
 『附音挿図 英和字彙』(横浜・日就社)
 [愛知大学所蔵本]」


ほんとうに辞書がお好きのようで、
打ち合わせのため研究室にお邪魔すると、
大小・新旧さまざまな辞書がおいてありました。
なかには、ひとりでは開けないんじゃないか
と思えるほど分厚く重いものや、
使い込んで手製の表紙のつけられたものもありました。
そしてもちろん、電子辞書も。

早川さんは、
「二ヵ国語辞典はふたつの言語が接触し、
 葛藤するひとつの姿」だといいます。
歴史的・文化的な背景のちがうふたつの言語では、
おのずとある語(たとえばdog/犬)の使われる文脈も、
その含みもちがってきます。
英語辞書には、
dog=犬という1対1の対応では収まりきらない
豊かさが現われているのです。

この考えは、複数の言語がたがいに影響を与えあう点に
注目した本書にも共通するものです。
2004年のインド洋大津波の報道で、
tsunamiが英語として使われていることを
知ったかたも多いと思いますが、
この語は英語圏では「波のうねり」という
通常の意味から転じて、
「感情などのうねり」という意味でも使われています。
語の意味がもともとの日本語にはない
比喩的な領域にまで拡大しているのです。
早川さんは、そうした意味の変化を
誤用としてとらえるのではなく、
興味深いものとして積極的にうけとめています。

先ほどのchopのような和製英語にも、
同じことがいえるでしょう。
英語圏の人びとにとっては「珍妙な」
想像もつかない使われ方をしている和製英語が、
新しい意味をもって英語に戻っていくなんて、
ちょっと素敵じゃないですか?
こうした、言葉という視点からとらえた文化交流の姿も、
本書のみどころです。


●日本語が、日本を語る

早い時代に英語になった日本語に、shogunがあります。
もちろん「将軍」のことで、ここから
shogunal、shogunate、shogunite、shogunship
などの語がつくられました。
日本の文化や社会を理解するために、
これらの語が必要だったのです。

同じころ、soy、soyaも英語にとりいれられました。
soyは大豆、soy sauceはしょう油ですね。
これはオランダ語から英語に入ったと推測されています。
というのも、17世紀ごろから日本とオランダのあいだで、
しょう油が取引されていたからです。

mangaやanimeもそうですが、
日本のある商品が輸入され普及すると、
その商品名や周辺の言葉、文化が定着するようです。
WalkmanやGodzilla、Nintendoも
定着したものとして紹介されています。
Nintendoはゲーム機本体のことを指しているそうです。

英語になった日本語をみていると、
世界と日本がどこで接触・交流しているのか、
世界は日本のどういった部分に関心をもっているのか、
わかるような気がします。
それらの語が英語にとりいれられたのは、
そうした日本語の指し示す概念が英語圏にはないから、
たとえあったとしても意味やニュアンスが異なり、
日本文化や日本社会を表現したり、
説明したりするときに困難が生じるからです。
mangaがいい例です。
mangaとJapanese comicでは、
ニュアンスが変わってしまいます。
英語になった日本語を知るということは、
日本では当たり前の言葉や概念が
海外にはないとを知ること。
そこから、日本とほかの国々とのちがいを知り、
それぞれに特有の文化があることを知る、
ということなのではないでしょうか。

本書は、日本→英語圏→日本という、
ぐるりとひとまわりする視点を与えてくれます。
存在すら知らなかった日本語に出会い、
言葉をとおして
日本の歴史や社会・文化への理解を深める‥‥
そんなちょっと変わった
日本理解の体験はいかかでしょう?

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『英語になった日本語』
著者:早川勇
価格:1,680円(税込)
発行:春風社
ISBN-13:9784861100895
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postman@1101.comに送ってください。

2007-04-13-FRI

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