担当編集者は知っている。


『ぼくのだいじなボブ』
著者:トム・コーウィン
訳者:上杉隼人
価格:1,000円(税込)
発行:講談社
ISBN-13:978-4062138000
【Amazon.co.jpはこちら】
※3月12日刊行予定

ある日、アメリカ在住のミュージシャンのトムは
1通のメールを友達たちに送りました。
愛犬ボブの生涯について書かれたこのメールは
次々に転送され、静かに広まり、
ついに1冊の小さな本になりました。
せつなくて、あたたかい
大人向けの絵本ともいえる
このご本を担当された
講談社の堀沢さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者/
講談社学芸局翻訳グループ 堀沢加奈

「ぼくの(わたしの)だいじな○○○○」
よかったら、心のなかで言ってみてください。
みなさんの○○○○には、誰の名前が入りますか?
家族の名前? 本書のように犬や、猫かもしれないし、
恋人、友だち、好きな人‥‥?

おととしの春のことです。
北カリフォルニアに暮らす
トム・コーウィンというミュージシャンが
1通の同報メールを送りました。
彼の犬、ゴールデンレトリーバーの
ボブの生涯についてのメールでした。

その内容に感動した人が、
友だちに転送し、受けとった友だちもまた転送し‥‥
というふうにして、メールは広がっていきました。
そして、とうとう1冊の小さな本になりました。
それが、この『ぼくのだいじなボブ』です。


▲「ボブはあまり写真写りがよくなかったけれど」と、
 著者のトムは言いながらも、
 写真を何枚も送ってくれました。


ボブは、もともとは、
著者トム=「ぼく」の隣家の犬でした。
毎夕1回、餌はもらえるけど、
あとはかまってもらえず、
外に出されたぼろぼろのソファで寝起きして、
洗ってもらったこともなく、
毛玉だらけで、
近寄ると臭くて‥‥。
飼い主にかまわれるのは
彼の虫の居所が悪くて「あたられる」ときだけ。
だから人を見てもおびえて吠えるばかりの
可愛いと思えるところのない犬‥‥。

ある日、ぼくが自分の家の中から庭を見ると
そこにボブがいました。
「おかしいな‥‥、
 ボブは自分の家の庭から出たことがないはずなのに」。
それから1週間後、ボブはぼくの庭にまた来て、
テラスに寝そべっていました。
「おかしいな」
でも、ボブはそこにただじっとしているだけでした。
‥‥このようにして、ぼくとボブの関係は始まりました。

そのうちにボブは、
ぼくの近くをついてまわるようになりました。
ぼくも「おかしな犬」だと思っていたボブを
ゆっくりと、愛しはじめました。
ボブをきれいにシャンプーしてあげたり、
ひそかに車に乗せて
外に連れ出したりするようにもなりました。
そして、ついにある日、ぼくは、
隣の「飼い主」の家のドアをノックしました‥‥。


▲著者トムとボブ。

「小さくてちょっと変わった犬の本がありますよ」
昨年、ある人に、原書Mostly Bob
(「ぼくにはほとんどボブだけ」という意味)を
紹介されたのがきっかけでした。
ラブラドールを飼っている私は、
読んで、泣けました。

でも同時に、この本は、
「泣かずにはいられない犬の話」だけれども
「誰にでもいる大切な存在」についての
話でもあるなあ、と思ったのです。
だからこそ、日本でも出版したいと思いました。

著者トム自身がデザインしたという原書は、
文庫とほぼ同じサイズ。
見開きに一文だけの文章に、
犬のカットをあしらった変わったデザインでした。
(めくると「パラパラ」ブックになります)
その雰囲気をいかそうと思ったのですが、
「アメリカの書店で映える本」と
「日本の書店で映える本」は微妙に違います。
ブックデザイナーの岩郷重力さんと相談しました。


▲原書はこんな感じです。

いくつか課題がありました。
「小さくてシンプルな本を
 新刊のなかで埋もれさせないためには
 どうしたらいいだろう?」
そこでイラストレーターの木内達朗さんに
「かわいい犬の顔を、
 目に飛び込んでくるように描いてください」
とお願いして、超太の帯をつけました。

▲毛足の長いゴールデンレトリーバーの顔は
 輪郭をとりにくいので、
 じつはかわいく描きにくいのだそうです。
 そこを木内さんには苦心していただきました。


木内さんのイラストは、もう1ヵ所登場します。
一緒にいる飼い主のぼくの気配まで伝わるような
とびきりの犬のイラストなので、見てくださいね。

細かいことですが、
カバーの「赤」の色味も原書とは変えました。
原書はえんじに近い赤で「渋かわいい」のですが
日本版は明るめの赤です。
そのほうが日本の書店では映えるのですね。

本文のレイアウトは原書とほぼ同じ。
スカスカに見えないだろうか? と悩みましたが、
広い余白は愛犬ボブと過ごした「時間」を伝えている‥‥
そう思って踏襲することにしました。

「いい本だから」という作り手の思いがあっても
書店で埋もれてしまったら最低です。
そんな懸念も抱きつつ、
洋書の雰囲気を和書に移しかえる難しさを、
今回経験しました。


▲本の中身はこんな感じです。

もし、100人の、犬の飼い主に
「あなたの犬との出会いを教えて」と訊いたら、
犬の数だけ物語があるはず‥‥。
犬と暮らしている人(暮らしたことのある人)には
その出会いの物語を思い出していただけたら
うれしいです。


▲友だちとくつろぐボブ(右)。

いっしょにいるだけで幸せ。
いっしょにいるから幸せ。
そんな存在がいたら、
それだけで人生は楽しい。
(そしてそのことがわかるのは
 別れの悲しさを知っているから‥‥。)

ボブの切ない物語は、そういうことを教えてくれます。

犬が好きなすべての人に
愛する者のいるすべての人に
読んでいただけたら、ボブも、担当の私も幸せです。

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『ぼくのだいじなボブ』
著者:トム・コーウィン
訳者:上杉隼人
価格:1,000円(税込)
発行:講談社
ISBN-13:978-4062138000
【Amazon.co.jpはこちら】
※3月12日刊行予定

担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2007-03-06-TUE

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