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| 担当編集者は知っている。 |
ある日、アメリカ在住のミュージシャンのトムは 1通のメールを友達たちに送りました。 愛犬ボブの生涯について書かれたこのメールは 次々に転送され、静かに広まり、 ついに1冊の小さな本になりました。 せつなくて、あたたかい 大人向けの絵本ともいえる このご本を担当された 講談社の堀沢さんにお話をうかがいました。 (「ほぼ日」渡辺) *********************************** 担当編集者/ 講談社学芸局翻訳グループ 堀沢加奈 「ぼくの(わたしの)だいじな○○○○」 よかったら、心のなかで言ってみてください。 みなさんの○○○○には、誰の名前が入りますか? 家族の名前? 本書のように犬や、猫かもしれないし、 恋人、友だち、好きな人‥‥? おととしの春のことです。 北カリフォルニアに暮らす トム・コーウィンというミュージシャンが 1通の同報メールを送りました。 彼の犬、ゴールデンレトリーバーの ボブの生涯についてのメールでした。 その内容に感動した人が、 友だちに転送し、受けとった友だちもまた転送し‥‥ というふうにして、メールは広がっていきました。 そして、とうとう1冊の小さな本になりました。 それが、この『ぼくのだいじなボブ』です。 ![]() ▲「ボブはあまり写真写りがよくなかったけれど」と、 著者のトムは言いながらも、 写真を何枚も送ってくれました。 ボブは、もともとは、 著者トム=「ぼく」の隣家の犬でした。 毎夕1回、餌はもらえるけど、 あとはかまってもらえず、 外に出されたぼろぼろのソファで寝起きして、 洗ってもらったこともなく、 毛玉だらけで、 近寄ると臭くて‥‥。 飼い主にかまわれるのは 彼の虫の居所が悪くて「あたられる」ときだけ。 だから人を見てもおびえて吠えるばかりの 可愛いと思えるところのない犬‥‥。 ある日、ぼくが自分の家の中から庭を見ると そこにボブがいました。 「おかしいな‥‥、 ボブは自分の家の庭から出たことがないはずなのに」。 それから1週間後、ボブはぼくの庭にまた来て、 テラスに寝そべっていました。 「おかしいな」 でも、ボブはそこにただじっとしているだけでした。 ‥‥このようにして、ぼくとボブの関係は始まりました。 そのうちにボブは、 ぼくの近くをついてまわるようになりました。 ぼくも「おかしな犬」だと思っていたボブを ゆっくりと、愛しはじめました。 ボブをきれいにシャンプーしてあげたり、 ひそかに車に乗せて 外に連れ出したりするようにもなりました。 そして、ついにある日、ぼくは、 隣の「飼い主」の家のドアをノックしました‥‥。 ![]() ▲著者トムとボブ。 「小さくてちょっと変わった犬の本がありますよ」 昨年、ある人に、原書Mostly Bob (「ぼくにはほとんどボブだけ」という意味)を 紹介されたのがきっかけでした。 ラブラドールを飼っている私は、 読んで、泣けました。 でも同時に、この本は、 「泣かずにはいられない犬の話」だけれども 「誰にでもいる大切な存在」についての 話でもあるなあ、と思ったのです。 だからこそ、日本でも出版したいと思いました。 著者トム自身がデザインしたという原書は、 文庫とほぼ同じサイズ。 見開きに一文だけの文章に、 犬のカットをあしらった変わったデザインでした。 (めくると「パラパラ」ブックになります) その雰囲気をいかそうと思ったのですが、 「アメリカの書店で映える本」と 「日本の書店で映える本」は微妙に違います。 ブックデザイナーの岩郷重力さんと相談しました。 ![]() ▲原書はこんな感じです。 いくつか課題がありました。 「小さくてシンプルな本を 新刊のなかで埋もれさせないためには どうしたらいいだろう?」 そこでイラストレーターの木内達朗さんに 「かわいい犬の顔を、 目に飛び込んでくるように描いてください」 とお願いして、超太の帯をつけました。 ![]() ▲毛足の長いゴールデンレトリーバーの顔は 輪郭をとりにくいので、 じつはかわいく描きにくいのだそうです。 そこを木内さんには苦心していただきました。 木内さんのイラストは、もう1ヵ所登場します。 一緒にいる飼い主のぼくの気配まで伝わるような とびきりの犬のイラストなので、見てくださいね。 細かいことですが、 カバーの「赤」の色味も原書とは変えました。 原書はえんじに近い赤で「渋かわいい」のですが 日本版は明るめの赤です。 そのほうが日本の書店では映えるのですね。 本文のレイアウトは原書とほぼ同じ。 スカスカに見えないだろうか? と悩みましたが、 広い余白は愛犬ボブと過ごした「時間」を伝えている‥‥ そう思って踏襲することにしました。 「いい本だから」という作り手の思いがあっても 書店で埋もれてしまったら最低です。 そんな懸念も抱きつつ、 洋書の雰囲気を和書に移しかえる難しさを、 今回経験しました。 ![]() ▲本の中身はこんな感じです。 もし、100人の、犬の飼い主に 「あなたの犬との出会いを教えて」と訊いたら、 犬の数だけ物語があるはず‥‥。 犬と暮らしている人(暮らしたことのある人)には その出会いの物語を思い出していただけたら うれしいです。 ![]() ▲友だちとくつろぐボブ(右)。 いっしょにいるだけで幸せ。 いっしょにいるから幸せ。 そんな存在がいたら、 それだけで人生は楽しい。 (そしてそのことがわかるのは 別れの悲しさを知っているから‥‥。) ボブの切ない物語は、そういうことを教えてくれます。 犬が好きなすべての人に 愛する者のいるすべての人に 読んでいただけたら、ボブも、担当の私も幸せです。 ***********************************
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2007-03-06-TUE
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