担当編集者は知っている。


『マーリー
 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』
著者:ジョン・グローガン
翻訳:古草秀子
価格:1,500円(税込)
発行:早川書房
ISBN:4152087641
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名犬かと思って引き取った
ラブラドール・レトリーバーの子犬は
実は無邪気なバカ犬だった!
愛犬に振り回される家族のドタバタと、
心あたたまるエピソードがいっぱいのこのご本は、
出版当時、著者が無名だったにも関わらず、
愛犬家や書店員から愛され、
全米ベストセラーとなったエッセイです。
このご本を担当された早川書房の三浦さんに
お話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/早川書房 編集部 第三課 三浦由香子


ペットのなかでも「最良の友」と言われるだけあって、
犬をテーマにした本はたくさんあります。
そのほとんどは「名犬」と言われる
お利口な犬たちが主人公。
立派な盲導犬だったり、飼い主を助けたり。
でも、そんな名犬たちの話に感動して涙をぬぐいつつ、
自分の傍らを見て「うちの子は〜」と苦笑いしている
飼い主さんも多いのでは?
だけど、そんな皆さん、ご安心ください。
バカ犬で、いいんです!
むしろ、バカ犬が、いいんです!
何しろ本書の主人公は、
飼い主も「世界一」と太鼓判を押すくらいのおバカ犬。
その落ち着きのなさも、
でかい体で破壊したものの数も、
よだれの量もピカ一の困った犬ですが、
今やこの本を通じて
世界中の読者に愛される犬になってしまったんですから。



■マーリーと出会う

本書は、アメリカで出版されたエッセイ、
"Marley and Me: life and love with
 the world's worst dog"を翻訳したものです。
本国で出版されたのは2005年の10月ですが、
12月にベストセラーリストのノンフィクション部門で
1位をとっているのを見かけたのが最初の出会いでした。
著者のジョン・グローガンは新聞のコラムニストですが、
特に有名人というわけでもない。
言ってしまえば無名のライターが
「飼犬との思い出」を綴っただけの本です。
「どうしてこんなに売れているんだろう?」と
不思議に思いましたが、
それでも、首を傾げた子犬の無邪気な写真と
「The World’s Worst dog」という副題に
「なんかいいな〜、楽しそうな本だな」と
わくわくしたのを覚えています。

ストーリーは、著者のジョンと奥さんのジェニーが
子犬を引き取るところから始まります。
二人は新婚のあつあつカップル。
これから一緒につくっていく人生に
希望と不安を抱えながら、
二人でいられる幸せを初々しく楽しんでいるところ。
そこへやってきたのが、黄色くて足のぶっとい、
常にハイテンションでお騒がせな仔犬でした。
あたりかまわずよだれを垂らし、
人間と見れば誰と言わずなめまわす。
おもしろそうなもの(スピーカーの足、
誕生日プレゼントの純金ネックレス、小切手……)は
なんでも口に入れては喜びのあまり
飛んだり跳ねたりの大騒ぎ。
そのたびに夫婦は壮絶な鬼ごっこで彼を追い詰め、
口のなかに手を突っ込むハメに……。

冒頭から次々と引き起こされる
どたばた劇が実におかしく、
しかも実にうまい軽妙な文章で綴られていて、
笑わずにはいられません。
これほど素直に引き込まれてしまう原書に
出会ったのは初めてでしたから、
「これは絶対出したいぞ」と思いました。



■幸運に恵まれて

こうして『マーリー』に惚れこんだ私ですが、
実は、この数ヶ月前から
このおバカ犬に惚れこんでいた人がいました。
それが、訳者の古草秀子さんです。
私は全くそのことを知らないで
この本のお話をしたところ
古草さんはとっくに読んでいらしたので驚きました。
しかも、半年ほど前に愛犬を亡くされたばかり
という悲しいなか、
犬の本を探していてこの本にめぐり会われたとのこと。
翻訳は、熱意と思い入れを持ってくださる方に
担当していただくのが一番ですから、
これはもうご縁だと思って、ぜひにとお願いしました。
その後半年ほどかけて古草さんは、
著者の軽妙で、愛情にあふれた文体を
あますところなく再現してくださいました。
まさに、犬を実際に飼っていらした方ならではの
観察眼と、本に対する愛情と、
それを表現する技術のたまものだったと思います。
古草さんに訳していただけたことは
この本の一番の幸運でした。

この本は他にも、いろんな幸運にめぐまれました。
プルーフ(仮綴じ見本)を書店員さんや一般の方に配って
コメントをお願いしたところ、
たくさんのあたたかい感想がいただけたこと。
作家の小川洋子さんにお送りしたところ、
「一気に読みました!」と
大変気に入ってくださったこと。
小川さんには帯の推薦文をいただきました。
また、ドッグフードの「ほねっこ」CMで
人気のゴン太くんは、
同じラブラドール・レトリーバーとして
読者プレゼントを提供してくれました。
古草さんとはよく冗談で
「さすがマーリー、強運ですね〜」
と言い合っていましたが、
こうしたいろんな方のご好意に支えられて、
『マーリー』はちょっとずつ形になっていきました。
改めて、幸せな本だったなと思います。

■『マーリー』の魅力

この本はマーリーという
ちょっとイカレた犬の一生を追った本ですが、
実は飼い主家族の軌跡をたどった本でもあります。
流産という悲しい体験、赤ん坊誕生の喜び、
ジェニーのうつ、ジョンの転職。
共に暮らすことを選んだ二人に、
人生の転機が次々と訪れます。
そのたびに夫婦は
手を取り合って喜んだり、抱き合って泣いたり。
そしてそのそばには、いつも底抜けに明るいおバカ犬が
飛び跳ねていたんですね。
そうして二人と一匹でさまざまな出来事を乗り越え、
マーリーが晩年を迎える頃には、
若かった二人も三児の親に。
40代になったジョンがふと傍らのマーリーを見下ろすと、
マーリーにもいつの間にか老いが訪れています。
足腰が弱ってしまい、
途中で休むことも多くなった散歩の途中、
ジョンが今までを振り返る一節が私はとても好きです。

「犬と暮らすからには、壁は壊れるし、
 クッションは破裂するし、
 敷物はぼろぼろになるものだ。
 どんなつきあいにも犠牲はつきものだ。
 僕らはその犠牲を受け入れたし、
 マーリーはそれに見合うだけの
 喜びや楽しみや仲間意識を与えてくれた。
 マーリーにかかった費用や修理代などを総計すれば、
 きっともうヨットを買えるくらいには
 なっていただろう。
 けれど、ヨットを何隻持っていたところで、
 玄関で一日中帰りを待っていてはくれない。
 膝に乗ったり、一緒にそりで丘を滑ったり、
 顔をなめたりはしてくれない。」

いくら欠点が多い犬でも、
全てを受け入れて一緒にいられたことが幸せだったと。
そう言い切れる関係ってとてもうらやましいですね。
犬と飼い主の関係にとどまらず、
家族・人間関係について大事なことを示唆しているようで
とても心に残りました。
『マーリー』にはこうした人生の機微にふれるような
ちょっとした一節が散りばめられていて、
そのたびに自分の体験に立ち戻って考えさせられます。
副題「世界一おバカな犬が教えてくれたこと」の通り、
グローガン一家はマーリーから
たくさんのことを教わったとあります。
皆さんも、おバカな犬のドタバタに笑いつつ、
いろいろなことを感じ取っていただければ幸いです。



■世界一愛すべきバカ犬として

「世界一おバカな犬。それは世界一愛すべき犬の別名だ」
これは小川洋子さんが本書に寄せてくださった
推薦文ですが、
まさにその言葉の通り、今やバカ犬マーリーは
世界中で愛される犬になりました。
原書は、アメリカで250万部を突破するほどの人気に。
1年以上もベストセラーリストに載り続けています。
世界でも26カ国で翻訳され、話題となりました。
日本では愛犬家をはじめたくさんの方に読んでいただき、
ささやかながら13万部を越えようとしています。
来年にはアメリカで映画まで完成するとのこと。
まだまだそのパワーはとまりそうにありませんが、
私自身もファンの一人として、
マーリーがこれからもたくさんの方に末永く愛される
バカ犬になることを願ってやみません。



※『マーリー』についてのさらに詳しい情報は
 『マーリー』編集委員会blogをご参照ください。

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『マーリー
 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』
著者:ジョン・グローガン
翻訳:古草秀子
価格:1,500円(税込)
発行:早川書房
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2007-01-16-TUE

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