担当編集者は知っている。



『孤独と不安のレッスン』
著者:鴻上尚史
価格:1,470円(税込)
発行:大和書房
ISBN:4479391401
【Amazon.co.jpはこちら】

劇団「第三舞台」主宰であり、
コラムニストとして、また、
ラジオのパーソナリティとしても
活躍中の鴻上尚史さんの新刊です。
「どんなものを信じても、受け入れても、
 人は一生、孤独と不安から自由にはなれない。
 だからこそ、それを楽しめるようになろう。」
鴻上さんが、「孤独」と「不安」に
真正面から向き合い、真摯に掘り下げて、
ずっと考え続けることで見いだした
打開策やアドバイスが、
23のレッスン形式で掲載されています。
このご本を担当された大和書房の永井さんに
お話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/大和書房 永井仁高

鴻上尚史さんは、学生時代に
早稲田大学演劇部で立ち上げた
「第三舞台」をプロの大人気劇団に育て、
日本の小劇場ブームを牽引したカリスマです。
そんな鴻上さんと初めてお会いしたのは、
今からもう15年ぐらい前になります。
「日本でもっともチケットが取れない劇団」
と言われていた「第三舞台」。
それなのに、当時なぜか私は「当日でも大丈夫さ」と
甘く見て出かけ、劇場前でびっくり。
本当に当日券もない。
困ったなあと、ウロウロしていると、
開演直前に劇団の人がキャンセル券を売ってくれました。
そのとき、その場にいらした鴻上さんに
ちょこっと声をかけてもらったのです。
正確には鴻上さんは世間知らずな私に
助け船を出してくれたのです。
大物なのに(?)、とてもいい人だなあと思いました。

それから月日は流れて、ある時、「愛媛新聞」で
鴻上さんが書かれていた「『孤独と不安』と闘う」
と題されていたコラムを読みました。
親元を離れ一人暮らしをすれば、
否応なしに孤独な状態になって、
たくさん成長できるのだから、
是非、若い時に一人暮らしをすべきだ、
という文章でした。
自分も地方から東京に出てきたときのことを
思い出しました。
孤独な状態だったからたくさんの物を求めて、
いろんなことが起こったこと。
そういえば、学生時代に鴻上さんの芝居を見に行ったのも
孤独だったからかもしれません。
(本書のラストには、そのころ私が見た鴻上芝居で、
 ダダ泣きしたセリフが、偶然ですが入っています。
 ぜひ読んでみてください)。
当時は、芝居や映画を一人で見に来る人が
多かったように思います。
最近そういう場所へ行って思うのは、
一人で見に来ている人が少ないなあということでした
そんな話を鴻上さんとの打ち合わせのときにしました。
携帯やメールなども含めて、
孤独でない状況を作るのは簡単になったけど、
いっそう孤独は深まっているように思えることや、
でも何か「孤独」の質が違うように感じられることなども。

鴻上さん自身が愛媛県から東京へ出てきて、
「孤独と不安」の中から、
たくさんのお芝居を生み出してきた、
いわば「孤独と不安」のプロです。
そのプロの目から見て、
最近の「孤独と不安」は「ニセモノ」で
「後ろ向き」なものが多いそうです。
本当の孤独とニセモノの孤独。
前向きな不安と後ろ向きな不安。
似ているけど、まったく違う物。
本当の孤独は、それが深ければ深いほど、
多くのものが心に積み重ねられ、豊かな人生の礎になる。
でも、ニセモノの孤独や後ろ向きの不安は、
人生を破壊する。
そういうことがこの本で書かれています。
「ニセモノの孤独と後ろ向きの不安」に囚われた人が、
どんなダメージを受けるのか、
鴻上さんはよく見てきていて、
そうならないために、
「本物の孤独と前向きな不安を生きる」
ことの素晴らしさを、ここらで若い人に伝えよう、
というのが本書です。
「孤独と不安」を生きるための練習帳として、
具体的な方法や、納得度の高い実例が、
豊富に紹介されています。
たとえば、「真面目な人ほど自分を失いやすい」ことや、
「本物の孤独を生きるとつきあう人のレベルが変わる」
こと、
「100点を目指すのではなく、67点の人生を認める」
大切さについて。
また、
「一定時間、何もせず、きちんと退屈できる場所へ行く」
「体の重心を下げてみる」「声に出すと救われる言葉」
「一人がみじめでなくなるための思いこみはずし」
「つらくなったら誰かに何かをあげる」
などの具体的な方法。
さらに、「頭の速度でなく、体の速度で考える」、
「人間関係の距離感のつかみ方」、
「自意識を鎮めてノンキになる方法」、
「今いる自分とありたい自分のいい関係の作り方」
などちょっと高度なワザも。

鴻上さんのお芝居のように、時に優しく、時に楽しく、
文章は流れていきます。
そしてやっぱりお芝居と同じように、
人の生の厳しさや哀しさが散りばめられています。
でもやっぱりお芝居と同じように、
ただ突き放されるのではなく、希望や救いがあります。

10代20代の人に読んで欲しいなあ
と最初思っていましたが、
自分も含めて、30代40代の、
生きることに慣れてしまって、人との距離や心にも
少し不感症になっている人にもいいと思いました。
40代50代の人にも読んでもらいたいです。
本書に書かれているように
「孤独と不安からは一生逃れられないものだから」です。
今、手に入れて、ずっとずっと持っていって、
時折、反復練習するのもいいかもしれません。

装丁は寄藤文平氏。
『大人たばこ養成講座』(美術出版社)や、
『死にカタログ』(大和書房)で
活躍されているアートディレクターです。
原稿を全部読んで、「孤独と不安」について
よーく打ち合わせして、
「孤独の先にある、すっと突き抜けたときの清々しさ」
というコンセプトを生んで、
具島成保さんという写真家の作品で、
とてもきれいな本にしてくださいました。
心から、一人でも多くの人に読んでいただきたいと思える、
編集者として幸福な瞬間を与えてくれた本です。
どうぞよろしくお願いします。

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『孤独と不安のレッスン』
著者:鴻上尚史
価格:1,470円(税込)
発行:大和書房
ISBN:4479391401
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2006-07-25-TUE

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