担当編集者は知っている。



『エイズ感染爆発と
 SAFE SEXについて話します』
著者:本田美和子
価格:1,029円(税込)
発行:朝日出版社
ISBN:4255003238
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「ほぼ日」で好評連載中の
「お医者さんと患者さん。」の本田美和子さんが
ご本を出版されました。
国立国際医療センターの
エイズ治療・研究開発センターで、
内科医として勤務されている本田さんが、
HIVやエイズについて、
ごく普通の20代の女性たちと話した内容を
中心にまとめられたものです。
このご本を担当された朝日出版社の
鈴木さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/朝日出版社 鈴木久仁子

「ある日突然、想い描いていた未来が
 こなごなに砕けてしまった。
 その破片を自分の手で集めて、
 懸命に再構築しようとしている人を目の前にしても、
 あなたは同じことを言えるのでしょうか」
本田美和子先生と初めてお会いしたときに、
先生が私におっしゃった言葉です。

「お医者さんと患者さん。」連載で、
「ほぼ日」ではお馴染みの本田美和子さん。
私がはじめて本田さんにお会いしたのは、
2005年の夏のことでした。
前任の編集担当が結婚退職したため、
制作途中で引きつぐことになったのです。

―100%安全なセックスなんて不可能だし、
 そもそも、セックスが完全に安全になるって、いいこと?
―みんながみんなHIV検査を受けるような社会って、
 どうなのかな?

私たち以外には誰もいない、夜の病院の診察室で、
ふと浮かんだ乱暴な問いばかりを口にする私に、
白衣を着た本田さんは、
「よろしければ、患者さんに会ってみませんか?」
と、静かにおっしゃったのでした。

**

『エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します』は、
「HIVなんて自分には関係ない。検査なんてめんどうだ」
心のどこかでそう思っている人にこそ、
読んでほしい本です。
2部構成で、前半は本田さんと4人の20代女性の座談会、
後半はHIVに感染している20代女性のインタビューが
収録されています。

前半の座談会に出席してくれた女性たちは、偶然にも
タイプや経験の異なる人たちが集まりました。
自分には関係のない遠い世界の話のように感じるという人、
感染しているんじゃないだろうか、
心配なのに怖くて怖くて
どうしても検査に行けないという人。
それぞれスタンスは違うのですが、
HIVの理解が深まるほど、
一人ひとりがこれまでのことを思いかえしては、
「あの時はどうだったんだろう」
「こんな場合、みんなはどうしてる?」
話はいろんな方向へ発展していきます。

HIVを予防する、たったひとつの手段は、
性行為のとき、ちゃんとコンドームをつけるということ。
でもコンドームをするって、
すごく簡単な行為なんだけれど、
いつも四角四面でなければできることではありません。
例えば、オーラルセックスでも、HIVは感染します。
じゃあ、オーラルセックスするとき、
コンドームをつけられるか?
「YES」と、はっきり言える人は、一人もいませんでした。
難しいよね‥‥と、みんなで詰まってしまう、
そんな場面が何度も訪れます。
そして、HIVが
「誰もが、どこかで、すれちがっているかもしれない」
そんな病気であることに、気づいていくのです。

**

本田さんが「会ってみますか?」と
紹介してくれた患者さんは、
ほんわかしていて、いるだけで場がなごんでしまう、
そんな素敵な女の子でした。
本田さんと、彼女と、編集部の数名で、
一緒にお酒を飲みながら、いろんなことを話しました。
感染をはじめて知ったときのこと。
一番はじめに感染を打ち明けた友だちのこと。
そのとき付きあっていた男性のこと。
家族には、いつ、なんて伝えたのか、
それから家族は、どのように彼女を支えてきたか。
(でも、彼女が元気すぎるからでしょうか、
 HIVの治療を受けているっていうことを、
 ときどきふっと忘れてしまう〔!〕お父さんのこと)
職場のこと、感染を知っている上司のこと。
感染する前や、感染がわかってからの恋愛について‥‥。

言葉にして人に伝えるのはためらわれるだろうことや、
想い出すことさえ辛いことが、たくさんあったと思います。
でも彼女は、私たちの質問すべてに、
初対面で聞いてしまうにはふさわしくない性的な事柄まで、
ゆっくり、自分の気持ちに正直に、答えてくれました。
お会いしてから1ヶ月後、彼女から手紙が届きました。
「HIVという病気について、こんなに長時間、
 誰かと話し合ったことはありませんでした。
 あらためて自分の病気と向き合う機会を持ててよかった」
そんな言葉をくださったことに、
ただ感謝するばかりです。

毎年、約1,000人ずつ増えつづけ、
累計10,000人を突破した、日本のHIV感染者。
HIVに感染している人って、どんな人だろう?
その人たちは、何と向き合い、何にぶつかって、
これからどのように生きていきたいと願っているのか。
ふつうの女の子が、HIVに感染し、いろんな思いをした。
そして、これまでとはちょっと違うけれど、
でも、ほぼ、これまでどおり、元気に暮らしている。
「感染前は、みんなと同じように、
 ふつうに過ごすのなんてイヤで、
 『人と違うことをしたい』とばかり思っていました。
 でもいまは、ふつうに、人並みに健康で暮らせれば
 幸せだと感じるようになりました」
彼女の声が、たくさんの人のもとへ届くことを願います。

**

著者である本田さんは、冷静でおだやかで芯の強い人です。
それは「ほぼ日」の連載をお読みになれば
わかると思うのですが
実際に会ってみますと、加えてチャーミング。
音で表すと「テヘヘ」という感じで、よく笑う人です。
忙しいのに、いつもニコニコ、なぜかうれしそうなので、
つい、なんでも話したくなってしまう。
だから、座談会の女性たちも、患者さんたちも、
本田さんに、何から何まで話してしまうのだと思います。

ちなみに私は、HIV検査を受けたことはありません。
この本に関わってしばらく経ってからも、
ぜったい感染していないから大丈夫、
私には関係のない病気だって、実は思っていました。
ですが、本田さんと一緒に校正作業をしていたある日、
イラストの資料用にと、小さなHIV検査キットを渡され、
「これに血液を数滴たらすだけで、
 感染しているかどうかわかるんですよ。
 ‥‥やってみる?」
本田さんが、いたずらっぽく話しかけてきたとき、
「‥‥うーわーーーっ嫌です! やっぱりこわい!!」
自分でも思いがけず、
大きな声をだして拒絶してしまいました。
本田さんは冗談で言っただけだったのに。
一瞬、すこし驚いた顔をして、それから、
「そうだよね。やっぱり、すごくこわいんだよね。
 もちろん、検査を受けないということを
 選択しても、いいんですよ」
ちょっとだけ困ったように微笑んで、
うん、そう、こわいのよね、と
何度かうなずきながらつぶやいていた、
そのときの本田さんの顔を思い出しては、
情けないような、恥ずかしいような気持ちになります。

この本に関わるまで、私には知らないことが多すぎました。
日々、HIV感染者と接している本田さんの、
切実でまっすぐな言葉に、耳をかたむけてみてください。
自分の性について、迷いつつ、
とらえなおしていく女性たちといっしょに、
あなたもこれまでのことを思い出しながら、
自分だったらどうだろうって、誰かと話してみてください。
HIVに感染し、いろいろなことを乗り越え、
いまは、いい感じで力を抜いて、
のびやかに生活している女性の言葉に、
ぜひ本書で触れてみてください。
あなたが、あなたの大切な人と
これからどんなふうに生きていくのか、
ちょっと立ち止まって考えてみる、
そんなきっかけになるかもしれません。

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『エイズ感染爆発と
 SAFE SEXについて話します』
著者:本田美和子
価格:1,029円(税込)
発行:朝日出版社
ISBN:4255003238
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2006-06-27-TUE

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