担当編集者は知っている。



『親父シェフ3人
 フランス料理にもの申す』
著者:田代和久、北島素幸、谷 昇
価格:1,575円(税込)
発行:柴田書店
ISBN:4388353213
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「料理人は最高の仕事!」と言う3人の
人気レストランのオーナーシェフが、
食の安全、スタッフの育成、お客との付き合い方、
リタイアについてなど、本音で語りつくした1冊。
「ほぼ日」の人気コンテンツ
『調理場という戦場。』
斉須政雄さんも絶賛のこのご本、
担当された柴田書店の鍋倉さんに
お話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/柴田書店 鍋倉由記子

日本人の「食」に対する関心は、
とどまるところを知りません。
さまざまなメディアで連日
料理やレストランの話題が取り上げられ、
時には「液体窒素」(スペインの話題の調理法。
テレビであのマツケンさんも使っていました)など、
プロも驚くような専門的な内容に及ぶことも。
また最近は、「シェフ」という職業自体も
注目されるようになり、コックコートに身を包み、
颯爽と料理を作るシェフたちの姿もよく見かけます。

そんな一見華やかな料理人という仕事ですが、
彼らにとって「料理」はたくさんある仕事のほんの一部。
実際は、人材育成などスタッフの問題、
食材の仕入れやコスト削減など経費のこと、
BSEや鳥インフルエンザのように、大きな問題だけど
自分たちではどうにもならないこと‥‥
シェフたちに立ちはだかる問題は少なくありません。

そんななか、
「これからの料理人は料理を作っているだけではダメ。
 その周辺のことも考えないと!」
と声をかけてくださったのが、
四谷のフランス料理店「北島亭」の
北島素幸シェフでした。
「たとえば、みんないいスタッフが
 いないって悩んでるよ。
 いくら料理が上手な人でも、
 独立して成功するとは限らないのはなぜ? 
 そういうことも考えていかないと、
 料理界はよくなっていかないよ」
これは、流行や形ばかりにとらわれがちな
最近の風潮に疑問を感じていた北島シェフの、
「いま一度、本質がどこにあるのか見直そうよ」
という問いかけです。
「(本職である)料理以外のことを本音で語ろう!」
このコンセプトに賛同した
「ラ・ブランシュ」(表参道)の田代和久シェフと
「ル・マンジュ・トゥー」(牛込神楽坂)の
谷昇シェフの3人が集まり、座談会がスタートしました
(座談会はまず2004年4月号から1年間、
 月刊『専門料理』誌上に掲載しました)。


▲レストランの店内の風景

3人のシェフについて少し紹介すると、
それぞれ1950、51、52年生まれの御年50代半ば。
本のタイトル通り、正真正銘の「親父」です。
世のお父さんたちは、リストラだの熟年離婚だのと
とかく元気がないと言われますが
(過去にシェフたちもリストラ経験はあり)、
このお三方は違います!

まだ現地修業が珍しかった1970〜80年代に
単身フランスに渡り、帰国後、
それぞれ自分のスタイルを確立。
以降、20年近く第一線に立ち続けています。
今をときめく若手シェフたちも、
「この人たちにはかなわない」と口を揃える実力派。
確かなテクニックが生み出す独創的な料理はもちろん、
3人とも、自分を思う存分表現できる
「オーナーシェフ」として成功している点でも、
若い料理人にとって憧れの存在です。

さて、そんな親父シェフたちが本書でもの申したのは、
「レストランの安全」
(BSEの時も牛肉料理を出し続けた理由)
「素材」(最近の野菜はやけに甘すぎる!)
「フランス修業」(現地に行く前に基本を身につけろ!)
「自分の店を持つ」
(店をつぶさないために必死の毎日だった)
「スタッフの育成」(家庭の躾におおいに問題あり!)
など12のテーマ(カッコ内は内容のほんの一部です)。
また、これまで料理人が語ることはほとんどなかった
「お客」や「リタイア」についても語っています。
この座談会では、きれいごとや
カッコイイ台詞は一切禁止。
ベテランならではの縦横無尽な本音トークをお願いし、
自分の考えやお店の現状を包み隠さず
話してもらいました。

普段どのくらい長時間働いているか、
親子ほど歳の離れた若いスタッフに苦戦中、
いかにオーナーシェフという仕事が儲からないか
‥‥こんな話にも編集者として極力手を加えず、
ほとんど忠実に掲載したため、
「ネガティブな話ばかりで、夢がない!」
という投書がきたことも。
また、本文中には
「スタッフに向かって『殺すぞ』って結構口癖」など
一見過激な言葉も飛び交いますが、
これらはすべて、フランス料理を愛するがゆえ、
お客さんにおいしいものを食べてもらいたいが
ゆえの言葉です。


▲農家から直接送られてくる野菜

時に泥臭く、時に笑い、時にしみじみと。
熱く盛り上がるうち、座談会は毎回予定時間をオーバー。
単行本化にあたり、連載時にはスペースの都合で
泣く泣く削っていた内容をようやく加筆でき、
本音トークがさらにパワーアップしました。


▲毎日変えるメニューを考えているところ

座談会の中で、とくに印象的だったのが、
「50歳にしてようやく鼻たれ小僧」というフレーズです。
「この歳にしてようやく料理がわかってきた」
と感慨深げに語り合っているのですが、
なにしろ調理技術の高さに定評のあるシェフたちです。
さぞかし自信満々で厨房に立っていると思いきや、
「俺、もっと料理がうまくなりたい」と
一人が真顔で言えば、
他の二人も「俺も」とうなずく‥‥という具合。

なんて謙虚というか、純粋というのか。
この年齢でそういうことを正直に口にできる
この3人は本当にすごいな、と思うと同時に、
ものごとのサイクルが早いこの時代に、
ずっとトップに立ち続ける理由がわかった気がしました。
3人の料理がいつまでも古びないのは、
現状に満足することなく、
いつも「どうしたらもっと素材を生かせるのか」
「もっと上手に焼くにはどうしたらいいのか」と
考え、悩みながら仕事をしているから。
「こうした地道な作業こそ、この仕事の本質」
この本でシェフたちはそう語りかけます。


▲修業時代から書き溜めてきたメモ

・・・・などと書いていると、
すごくストイックに仕事をしているようですが、
本人たちは「だって料理が好きなんだもん、全然平気!」
と楽しくて仕方ない様子。
「フランスのレストランは素敵。ロマンがある!」
なんて話をする時のシェフたちは、
まるで少年のように目がキラキラしています。

ところで、このサイトの『調理場という戦場。』の
斉須政雄シェフと親父シェフたちは同世代。
お互いを認め合う仲間同士でもあります。
斉須シェフには、連載当時から
「3人が話していることは、大切なことばかり」
と言っていただきました。
シェフたちの「職人」としての生き方には、
「料理人」のところを他の職業に置き換えても
読めるような、普遍的な話がいっぱいです。
斉須ファンの方をはじめ、食べ歩きが好きな人、
シェフたちと共通の悩みを抱える親父世代の人たち、
将来自分の腕で生きていこうとする若い世代の人など、
多くの人に手にとってもらえたら、と思います。

最後に‥‥親父、親父と言っていますが、
本の中ではシェフたちに敬意を示し、
「親父」と書いて一応「ベテラン」と読ませています。


▲ 親父シェフたち
(いつもこんなふうに盛り上がり、
 笑いっぱなしでした)。


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『親父シェフ3人
 フランス料理にもの申す』
著者:田代和久、北島素幸、谷 昇
価格:1,575円(税込)
発行:柴田書店
ISBN:4388353213
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2006-06-06-TUE

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