担当編集者は知っている。



『「創造的である」ということ』
<上巻>農の営みから
<下巻>地域の作法から
(「人間選書」254、255)

著者:内山節
価格:各 1,700円(税込)
発行:農山漁村文化協会
ISBN:<上巻>4540053086
   <下巻>4540053094

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哲学者の内山節さんが、「農業」を軸に
現代社会を考察された講演をまとめたご本。
この本で語られている
100年先を見据えて、森の木を植えたりするような
人の一生よりも長いスパンで物事を考える
「里山」の農業や森づくりの根底にある
考え方や暮らし方は、
効率重視の大量生産・大量消費の社会と
全然違うんだなあと思いました。
たとえば、「進歩する方向」にむかうのではなく、
「深める・極める」方向へ歩むことが大切である
というお話や、
「私有」することを考えるのではなく、
みんなでシェアーする「総有」によって豊かになる
というお話も興味深かったです。
自分の生き方やこれからの社会を考える
きっかけにもなる
このご本を担当された農文協の本谷さんに
お話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/農文協書籍編集部 本谷英基

著者の内山節(たかし)さんは、東京と群馬県上野村との
二重生活をしている在野の哲学者
(最近、立教大学大学院の教授もされているので、
 正確には「在野」とは言えなくなりましたが)として
知られています。渓流の釣り人としても有名です。

■「百姓」としても30年のキャリア

上野村での暮らしは1975年ころからで、
2畝から5畝(5アール)の畑を耕しているそうですから、
百姓(耕作者)としても30年のキャリアを持っています。
そのような経歴と、
わかりやすい言葉で深い哲学を語れる人ということで、
農文協では、農文協が世話役をしている
農家同士の勉強会の講師をお願いしてきました。
その勉強会も今年で20年目を迎えました。
本書の内容は、
上野村での農の営み・村人としての暮らしを踏まえて、
勉強会で講演したものがもとになっています。
勉強会で一貫して内山さんに求められていたのは、
「農の営みをとおして全世界を獲得する思想」
「農の営みをとおして現代世界をとらえなおす思想」
でした。
農家の人たち‥‥農の技をもち、
農村をつくる力をもっている人たちが、
それを土台にして、
現代世界を掌中に収める思想を獲得することができれば、
世の中は静かに変わってゆく。
内山さんの語りの中にその確信がうかがえます。
上巻『農の営みから』では、農の営みを軸にして、
現代世界をつくりだした思想と対決しつつ、
21世紀の新しい思想の方向性を語っています。


■日本の農村に由来する「修業」と「貢献」の労働観

たとえば、日本の農村に由来する
「修業」と「貢献」の労働観を語る節があり、
内山さんの労働観が展開されていますが、
修業と貢献という一連のプロセスをとおして
生活さえできれば、富の問題はどうでもよいから、
修業と貢献を感じることのできる
労働のなかに身を置きたいと感じるのが
日本人だというのです。
ニートとかフリーターといわれる若者がふえたのも、
この「修業と貢献」を感じることができない社会に
なっているからだと考えると納得がゆきます。
「修業と貢献」が色濃く残っているのが
職人の世界や農の世界です。
若者はこの世界をめざすようになるだろうと、
内山さんは本書(1994年の講演)で言っていますが、
その予言はまさに的中し、
職人の仕事や農村で暮らすことを選択した
若者が確実にふえています。
内山さんの「哲学」から導き出された
この潮流は必ず大きくなることでしょう。


■「作法」を持つ人たちの根源性

下巻『地域の作法から』で、内山さんは
「私の研究史を振り返ってみると、
 農民や農山村の人々から教わったことの
 多さに驚かされる」と言っていますが、
地域(農山村)の人々こそが、
自然とともに、土とともに、村とともに生きてきて、
近代的世界の矛盾や近代的な思想の問題点を
深いところでつかんでいるのだというのです。
現在、近代社会が生みだしたシステムや思想は、
さまざまな領域で限界を露呈していますが、
本書は、その原因はどこにあったのか、
私たちは何を学びなおさなければならないのかを、
内山さんの身近にいる人たちの
「創造的である」地域の作法ということから考えています。
ここで作法というのは、
いわゆるマナーの次元のことではありません。
たとえば、村人は
山=森とつき合うときの作法をもっています。
それは山菜や茸のとり方の作法だったり、
山の木の切り方の作法や猟のときの作法だったりします。
農にもまた農の作法があります。
自然に対する人間の作法、
自然とともに生きる人間の作法です。
つまり、人間とは何か、生命とは何か、
他の生きものたちと人間との間につくられている関係を
どう考えたらよいのか、といった思想が、
「作法」として表現されているというのです。
ヨーロッパ近代思想は、人間の知性を絶対視したのですが、
「地域の作法」はそれに対する根源的批判である、
と内山さんは言います。
それは、地球大の破綻が種々危惧される
21世紀の「新しい哲学の誕生」を予感させるものです。
内山さんとは、1986年の『自然と労働』という本を
担当して以来の長い付き合いですが、
このたびも、平易な、
しかし極めて上質な思想・哲学書の発行に
立ち会えたことに
編集者として大きな喜びを感じています。

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『「創造的である」ということ』
<上巻>農の営みから
<下巻>地域の作法から
(「人間選書」254、255)

著者:内山節
価格:各 1,700円(税込)
発行:農山漁村文化協会
ISBN:<上巻>4540053086
   <下巻>4540053094

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2006-05-30-TUE

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