担当編集者は知っている。



『コンテンポラリー・ダンス
 徹底ガイド HYPER』

著者:乗越たかお
価格:2,100円(税込)
発行:作品社
ISBN:4861820707
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コンテンポラリー・ダンスとは、
モダン・ダンス以降出てきた
新しいダンスの総称です。
本書は世界の有名ダンサー&カンパニーから、
注目の若手までをとことん網羅し、
コンテンポラリー・ダンスの全体像を
一気に知ることができるガイドブックです。
「ほぼ日」でも以前ご紹介した
「珍しいキノコ舞踊団」も紹介されています。
「作り手を応援し、見る人が劇場に足を運びたくなる、
 そんなことを目指して作った」と、
著者の乗越たかおさん。
ダンスや演劇が好きな方はもちろん、
新しい趣味を開拓したい方にも
おすすめの1冊です。
(「ほぼ日」渡辺)


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担当編集者
/作品社 編集部 青木誠也

いま、コンテンポラリー・ダンスが活況を呈しています。
国内のダンスカンパニーでは、コンドルズ
H・アール・カオスが数千人規模の公演をし、
海外のカンパニーの来日公演も続々と行なわれています。
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館では、
金森穣氏を芸術監督に迎え、
日本初のレジデンシャル制の
ダンスカンパニー・Noismが誕生しました。
また、各地で、若手ダンサーたちが発表の機会を得られる
大きなイベントが行なわれていますし、
東京都写真美術館でも、コンテンポラリー・ダンスを
テーマにした展覧会「恋よりどきどき」が催されました。
「美術手帖」、「現代詩手帖」などといった雑誌が
コンテンポラリー・ダンスの特集を組んだかと思えば、
「bacchus」、「DDD」、「DANZA」などの、
ダンス専門の雑誌も立て続けに創刊されました。

ですが、本日ご紹介する
『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』の
改訂前の版『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド』が
刊行された2003年ごろ、さらにその以前は、
現在の状況とはまったく違うものでした。
“コンテンポラリー・ダンスが活況”どころか、
「コンテンポラリー・ダンス」という言葉自体が、
あまり浸透していなかったのです。
しかしそれは、たんにコンテンポラリー・ダンスへの
無理解から生じたことではありませんでした。
以下は、本書の著者、乗越たかお氏が、
2000年に雑誌に発表した文章の一部です。

コンテンポラリー・ダンスに興味を持ち始めた人が
一番はじめにつまずくのが、
「コンテンポラリー・ダンスって、何なの」ということだ。
調べてみても、なかなかスッキリ
説明してくれるものはない。
それはなぜか? 理由はカンタン。
「コンテンポラリー・ダンスの明確な定義」
というもの自体が存在しないからである。
カタギの衆には意外かもしれないが、
専門家といわれる先生方でも、要は
「バレエじゃなく、モダンダンスでもなく、
 なんとなく新しい、あのへんのダンス」
といったところで書いているのである。
UFOの定義
(「よくわからないけれど空を飛んでいる物体」)
というのと大差ない。
(「Ballet」00年9月号より)


言葉の定義がはっきりしないんじゃあ、
その言葉が浸透していかないのも、無理からぬことです。
しかし、そんな曖昧なコンテンポラリー・ダンスについて、
どうやって一冊の本に
まとめることができたのでしょうか。
以下、旧『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド』の
「はじめに」の一部分です。

本書で紹介しているものは、
バレエ作品として上映されるものもあれば、
ほとんど演劇、ほとんど映像、ほとんど動かない、
などなど百花繚乱である。というかそもそも
「ジャンル分けの必要性自体を感じない」のが
本当のところだ。考えてみてほしい。
腹が減っている人にとって、
「どこまでがラーメンか? 冷やし中華は入るのか?
付け麺は? カップラーメンは?
ベビースターはラーメンに入れていいのか?」
という問いかけがどれほどの意味があるか。
うまけりゃいいよ。というところだろう。
本書のスタンスもそうだ。


このような乱暴な‥‥じゃなかった、
思い切った方針を立て、
コンテンポラリー・ダンスをタイトルに冠した、
初めてのガイドブックが出来上がったわけです。
しかし、刊行前から刊行直後にかけて、この本の前評判は、
決して高いとはいえませんでした。
さる有名なバレエ評論家/編集者の方が、
「バレエならともかく、コンテンポラリー・ダンスの
本なんて売れるわけがない」と断言したという
噂さえ伝わってきたほどです。

ところが、豈図らんや、この本は
ロングセラーとなりました。
コンテンポラリー・ダンスをいろいろと観たい
というダンスファンの方が
ひそかに増えていっている状況の中で、
その全体像を体系的に把握できる便利な本が
他にまったくといっていいほどなかったことも、
大きな理由の一つでしょう。
しかし何よりも、この本をロングセラーたらしめた
最大の要因というのは、
「乗越たかお氏の、ダンスへの大きな愛」
に、ほかなりません。

たいてい、こういったガイドブックを作るのであれば、
何人かの執筆者が、分担して書くものでしょう。
ところが、乗越氏は、それを一人でやってしまったのです。
旧版で取り上げた作品は約600ですが、
乗越氏はこれらをもちろんすべて観ているわけです。
さらにそれに数倍する、本の中で取り上げなかった作品も。
ネット上で、この本の感想として、
「この人、これだけのものを観に行ってたら、生活は一体
 書く時間や食べる時間やら、どないしてんねん?」
「関心空間 birochanaの空間」より)
と書いていた方がいらっしゃいましたが、きっとそれは、
この本を読んだほとんどの方が共有する疑問です。
ちなみに、担当編集者も共有します。

視覚的要素の強いダンスという芸術ジャンルの魅力を、
圧倒的なダンスへの愛に裏打ちされた、
独自の評言をもって読者に伝えようとするパワー。
ダンサーや振付家ら、つくり手の側に向けても、
本の中で賛辞を送り、励まし、時に叱咤する、
一本気な熱意。
ただのガイドブックではない、
“熱い評論”の詰め込まれた本だからこそ、
好評をもって迎えられたのでしょう。
そんな乗越氏ですから、つくり手たちからも、
高い信頼を得ています。あるダンサーの方は、
「乗越さんの文章で乗越さんってひとが
 ダンスの神かのように思えました。
 ダンスへの元気がでます」
とさえ言っていらっしゃいました。

結果として、『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド』は、
一般書店の店頭でのみならず、
ダンス公演の会場などでも幅広く販売していただき、
版を重ね、さらにめでたいことに、
今回の改訂版『HYPER』刊行の運びとなったわけです。
『HYPER』編集にあたって心がけた、
本書の特長として特筆すべき点は、以下の通りです。

(1)2003〜06年の新作を一挙解説!
まあ、改訂版ですから、当然といえば当然なのですが、
これによって作品名索引の項目数が、前回の600から、
750にまで増えました。前回は入れなかった映画作品を
索引で拾ったせいもありますが、ものすごい分量です。

(2)期待の若手をまとめて紹介!
すでに評価の定まった中堅から大御所ばかりでなく、
まだ誰もきちんと評論していないような若手も
どんどん取り上げるのが、乗越氏の特長のひとつです。
実際、前の版で取り上げた無名のダンサーたちも、
その後どんどんと名を上げ、人気を得ていきました。
乗越氏の、ダンサーの将来性を見抜く力は、
特筆に価します。

(3)新図版150点以上追加!
写真がやたら多い、というのもこの本の特長の一つですが、
改訂版編集にあたり、とにかく、前の版の図版は
全部差し替える! というのが、当初の方針でした。
さすがに、どうしても外せないものなどはありましたが、
8割以上は差し替えたはずです。
新しいものだけで、150点超が収められています。
さて、今回は、そのうちのごくごく一部ですが、
日本の若手ダンサーの写真を何点か、ご覧下さい。


▲伊藤郁女


▲康本雅子


▲常樂泰(身体表現サークル)


▲森下真樹


▲北村成美


(4)旧版より32ページ増!
コラムの内容を変更したり、新たな人物を取り上げたり、
さまざまに加えたり減らしたりした結果、
前の版より32ページも増えてしまいました。
ただし、定価は一緒です。
文章もかなり新しくなりましたし、
図版も大きく入れ替わっていますので、
旧版のお持ちの方も、ぜひともご購入下さいませ。

(5)年表/索引、一層充実!
「これだけで2100円(定価)分の価値がある」と
乗越氏が豪語するのが、
巻末の「コンテンポラリー・ダンス関連年表」。
改訂版では、2003年の項目に、
「『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド』発売」
の1行が。
著者のお茶目というより、評論家の矜持と受け止めました。
作品名索引は750項目、
人名&カンパニー名索引は760項目。
人名ではダンスにまったく関係ない人まで
拾っていますが、
そこを、逆に楽しんでいただければ幸いです。

本書はまさに、“コンテンポラリー・ダンス”を定義づけた、
すべてのダンスファン&ダンスのつくり手たち
必読の書の、大増補・大改訂版です。
この本が、日本のダンスシーンを、
より一層盛り上げていく。
そんな自負を込め、帯に、こんな一文を加えてみました。
「これを読まなきゃ、モグリです」

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『コンテンポラリー・ダンス
 徹底ガイド HYPER』

著者:乗越たかお
価格:2,100円(税込)
発行:作品社
ISBN:4861820707
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担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
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2006-05-02-TUE

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