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| 担当編集者は知っている。 |
『唯脳論』『バカの壁』の著者である 解剖学者の養老孟司さんと 日本マンガ学会事務局長の 牧野圭一さんの対談集。 ひらがな、カタカナ、漢字、ルビなどを 複雑に組み合わせる 日本のマンガの独特の表現方法は、 脳をどのように刺激しているか? マンガを読むことで 脳にどんな変化が起きるのか?‥‥など、 おふたりで楽しく語り合われています。 この本の編集を担当された井上さんに お話をおうかがいしました。 (「ほぼ日」渡辺) ******************************** 担当編集者 /晃洋書房編集部 井上芳郎 マンガを描いていなければ‥‥ 「僕がマンガを描いていなかったら 人を殺していたかもしれませんね」 ジョージ秋山さんの言葉です。 すさまじいほどの暴力シーンなどが描かれた 秋山さんの作品『アシュラ』『銭ゲバ』は そのあまりにも露悪的な作品のために、 有害図書に選ばれました。 その後、一転『浮浪雲(はぐれぐも)』など、 なんとも穏やかで心あたたまる作品群が発表されて、 その落差に驚かされたものです。 「将来は、浮浪雲みたいな生き方をしたいなあ」 という人も多くいます。 その落差を埋めるものこそがマンガという表現行為だった、 というのが宗教学者の山折哲雄さん (マンガ『親鸞』バロン吉元・画の原作者でもあります) の分析です。 ちょっとかたい話から入ってしまいましたが どうして、みんなマンガに夢中になるのでしょう? 編者の私も読み始めたらとまらなくなり、 頭がボーッとするまで読み続けてしまいます。 一体なぜ? ジョージ秋山さんが言った意味は何なんでしょう。 みなさん、考えたこと、ありますか? 実はこの本で養老先生と対談している 牧野先生も同じことを疑問に思っていたのですね。 マンガ家である牧野先生が大学にマンガ学科 (今年からマンガ学部になるそうです) まで作って、活動してもその謎が解けなかった。 その謎を解く鍵がこの本の中に秘められているのです。 養老先生が解剖学的に脳を分析しています。 なんでも、脳はカナを読むところと 漢字を読むところは別々らしいです。 日本語は音読みと訓読みがあり、 日本のマンガはその両方を刺激する。 吹き出しの文字に漢字が入っていて、 そこにまたカナが振ってあるというような、 入れ子型の構造もある。 こんな複雑なマンガ表現はもちろん、日本だけ。 だから日本のマンガの世界的水準が高いというわけです。 そして、マンガを読むと頭が良くなる! というのです。 日本人が日本語を使っているかぎり、 マンガは日本の最高峰の文化の一つとして続くはずである、 と先生は断言されています。 ![]() ところで、 養老先生が世界中で一番逢いたい人が、 『うる星やつら』作者の高橋留美子さん ということだから、 先生のマンガ好きはハンパじゃありません。 小さい頃から大の虫好きで、 今も子どもたちの昆虫採集の指導をしている先生の 一番のお気に入りはヒゲボソゾウムシ。 なんといってもホレボレするほど美しいとか。 そこに美しさを感じる感性が、 研究者としての感性に結びついていきます。 そしてその感性は、 マンガを読む日本人の感性論にまで及んでいきます。 ‥‥なんてむずかしい話はこの本の中では語られません。 徹底してわかりやすくお二人の先生が勝手に脱線しながら、 好き放題にお話をされています。 でも好き放題っていいですねえ。 いつのまにかその脱線にひきずりこまれていきます。 (今までの養老センセ本の中では 一番読みやすい本を創るゾ! 中学生からわかりやすく読める本にするゾ! の編集方針でスタートしました) この本はマンガ学の教科書である 本文中には中山星香さんの作品、ドラえもん、 『釣りキチ三平』、『夏子の酒』、「九相詩絵巻」の図、 そして数々の牧野センセの書き下ろし作品が 散りばめられています。 京都精華大学の現役マンガ学科の生徒作品も 数10ページにわたって掲載されています。 大学のマンガ学科の生徒ってどんな作品を書くのか、 それもお楽しみに。 大学が取り組んでいる、 医科大学との共同プロジェクトの一環として 「脳出血」の説明図も紹介されています。 うーん、やっぱりマンガってすごい、のかなあ。 あのアンパンマンの作者、やなせたかしさんが 「この本はマンガ学の教科書である」 とおっしゃっています。 この本を読んだある読者は 「この対談で言われていることは、教育と同じだと思った」 と感想を述べています。 なぜなんでしょう。 ジョージ秋山さんは『アシュラ』などの作品発表のあと、 すべての仕事をやめ、日本一周放浪の旅に出ます。 その後『ばらの坂道』で復帰。 この空白の期間の謎は、 マンガをもっと読みなさいと勧められる謎と どこかで一致されるはずです。 ********************************
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2006-01-31-TUE
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