担当編集者は知っている。



『1円も儲からずにTシャツを作る方法
 オンラインTシャツショップGbMの伝説』

プロデュース:黒松ブックス
著者:胡口桂子
価格:1,575円(税込)
発行:ラピュータ
ISBN:4947752564
【Amazon.co.jpはこちら】

編集者でゲームクリエイターの
伊藤ガビンさんがプロデュースする
本のレーベル「黒松ブックス」。
その第一弾のご本がこちらです!
(第二弾はご紹介が前後してしまいました、
 『二桁のかけ算 一九一九(イクイク)』です)。

オンラインTシャツショップGbMは、
編集者の胡口桂子さんと
マンガ家のタナカカツキさんが
一緒に立ち上げて運営されているTシャツ屋。
本書には独創的で類を見ないTシャツのデザインや、
ついつい読み浸ってしまうTシャツ解説が
ぎっしりと詰まっていて、
斬新なデザインのアートブックでもあり、
Tシャツの作り方ノウハウ本でもあり、
新時代のビジネスを考える
ヒント本のようでもあります。
常識ではとらえられない面白さに溢れたこの本の
編集を担当された伊藤ガビンさんに
お話をお伺いしました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/伊藤 ガビン


「前失礼します」

著者のコグさん、こと、胡口桂子さんと初めて話した日、
彼女は僕にそう言いました。
確かトイレかなにかでいっしゅん席を
はずすときだったと思います。
「あ、すいません、前失礼します」
でもねー、これね、チャットでの
ひとコマだったんですよね。
チャットで席をはずすときに「前、失礼します」。
いやいやいやいや、チャットに前も後ろもないですからね。
この一言を聞いたときに僕は、
「あ、この人、そういうことを、
 やってくるタイプなわけね」と思ったわけです。
「けっこうイケルくちなのな」と。
ひいては「こりゃ文章かけるなこの人は」と。

彼女のことは、「タナカカツキがデザインしている
TシャツショップGbMの代表」として
紹介されたんですけど、
聞けば本業はライターだっていうじゃないですか。
そりゃそうだろうと思いましたよ。
チャットで話していても、
いちいち言葉のこまかーいところにピクンと反応してくる。
ましてや、「ほぼ日」でもおなじみのマンガ家
タナカカツキのような「奇」の人と
いっしょに仕事しているわけだから、
そーとーこの人も「奇」や「異」を共有してんだろなー、
と思ったわけです。

ちょうどそのころは僕もタナカカツキと
いっしょに仕事をしはじめたばかりということもあって、
彼の過去の仕事や現在の仕事の細部を
じーっと眺めてみる機会が増えたころだったのですね。
そして当然のことながら、
彼がデザインして胡口さんが代表をつとめる
GbMというTシャツショップのことも
深く知るようになりました。
そしたらこれが通常オンラインショップといって
想像するものとまったく違っていてですね、
安直にいえば衝撃を受けたわけです。
このことについて詳しく書き出すときりがないので、
ほんの数点だけ書かせてもらいますね。

BBSが異様に盛り上がっている。

まあ、そういうショップサイトはありますよね。
ちょっとおもしろいこといって盛り上がっている。
しかし、ここではそのおもしろ書き込みに対する
ピリピリ感が尋常じゃなかったです。
お客さんのほどほど愉快な書き込みに対して
タナカカツキが冷たくバッサーッと切るわけです。
さながら寿司屋の頑固オヤジが
客にマナーの悪さに怒鳴るように、
心に響くグサリをやるわけです。
客にしてみたらえらいとばっちりですよ。
いやな店だなー、て思いました。

なんかコラムが更新されまくってる。

たとえば胡口さんが、本日のGbMというコラムを
毎日のように更新するわけです。
まあ、Tシャツと関係なーい話だらけ。
これも今ではオンラインショップの
定番のようなスタイルになってますけれど、
彼女の書くものは
さすがにプロのライターをしているだけあって
滅法おもしろかったんですね。

カートもない。

すでに何年もオンラインショップを
運営しているにもかかわらず、
いわゆるオンラインショップサイトがもっているような
機能のほとんどを持ってなかったんですよね
(05年にいろいろあって導入)。
いまどき、オンラインショップを作ろう!
みたいな本を読むと
最初の5ページあたりで書かれるカートやら
決済の方法やらについて、
完全になにもしてないんですよね。
注文はメールで。決済は銀行振込して自己申告。
ショップの側からの返事も毎回しこしことメールを書く。
いまって何世紀? 
と思えるようなド手作業で運営してました。
でも、これでいいんだな〜、と思ったんですよね。
みんながほしがるような商品があって、
むこうがわとこっちがわに人がいる。
それで商売は成り立ってしまうわけですよね。
印刷された年賀状よりフル手描きの年賀状が
「ありがたい」ものであるように、
GbMはそうした商売やコミュニケーションの
基本にたちかえっているのなー、とか思ったりもしました。

キャプションがどうかしてる。

これは、、、本書の内容と密接に結びついているわけですが、
とにかくTシャツにつけられたキャプションが、
かなり「らしからぬ」ものでったんです。
そして「GbMらしい」ものでもあるなーと。

現在のGbM
http://kuromatsu.jp/gbm/

とまあそんな感じで、
オンラインショップとしてはプリミティブといえば
あまりにプリミティブ。電子だけど原始。
という感じで、まずこのショップの在り方に
僕は感動してしまったんですね。
それで勢いあまって胡口さんに、
これ本にしなよ、本、本、ねえ本にするといいと思うよー、
どこもやらないならオレやるよー、
だしなよ読みたいし、ほれほれ、
という調子でいってしまったんですよね、、、。
僕が思ったのは、彼女はそれまでやっていた
お堅いライター仕事と、
本来の持ち味である「奇」な部分との
仕事のバランスがわるいなーと思ったりもしたわけです。
「奇」な原稿をもっと書いてみてほしいし、
みんなももっと頼めばいいのに、と。
じゃあまずそれをわかりやすい形で
まとめて見るのは価値があることなのではないかと。
じゃ、本作ろ! とね。

そこからまた紆余曲折というには
あまりにカーブのきつい曲がりっぷりなどを
経験しつつもどうにか本作りがスタートしたんですけど、
最初にいつくか決めたことがありました。
ひとつは、これを「読み物」の本にしたい、
ということでした。
Tシャツの本というと、
普通はTシャツのグラフィックが
前面に出る本を想像しますよね。
たしかにGbMのTシャツデザインは
相当おもしろいし美しいし小気味いいです。
でも、それを中心に据えると
あまりにこぼれ落ちてしまうものが多い。
それにタナカカツキの本、という風に見えすぎるのは、
今回はちがうな、と思ったんですね。
いや、ほんとは充分タナカカツキの力が
大きいプロジェクトなのだけど、
でも、読者にしってほしいことは少なくとも
グラフィックだけじゃない。
おそらくGbMというショップのふりをした
「運動」のようなものだろうと考えたんです。
だからもっとも異様なものに成長していっていた
「キャプション」におもいきり主役をはっていただき、
「キャプション文芸」なる
新ジャンルを築いていただこうではないかと。
そのためには文章の量も必要。
というわけで、Tシャツの本にしては
異様なほど文章量を増やしました。
サイトにのっていたキャプションに書き足し、
書き換え、結局のところ、
胡口さんには「ぜんぶ書き下ろしじゃん!」
と言わしめるまでに書きまくってもらってしまいました。
またやりすぎちゃった。
その内容については、
ここで「説明」してもわからないと思いますので、
立ち読みpdfをご用意しましたので、
楽しんでいただけたら、と思います。

デザインについてもひとこと言わせてください!
この本のデザインは、
千原航さんと大岡寛典さんのふたりにしていただきました。
しかしぜんぜん制作費がなかったんですよね。
率直にいうと撮影するお金がぜんぜんない。
Tシャツの撮影は凝り出すときりのないものなんです。
実際のTシャツの色味を印刷で出すためには
細かい細かい色調補正もしなくてはなりません。
そこでデザイナーの方々と相談して今回は、
「ぜんぶスキャンでいいじゃん!」
と開き直りました。
つまりTシャツをスキャナの上にのせて
ジョワ〜とかスキャンして
それを「撮影とする」ってことです。
Tシャツがまるごと載るほど
大きなスキャナはもっていません。
ですから、この本は
Tシャツの本なのに、
Tシャツの形がぜんぜん載ってない!
本だったりもしてます。
ただしスキャナというのは
どんな大判カメラよりもある部分では
高解像度で「撮影」できますので、
見たことないビジュアルを作ることも
できたのはないかと思います。

やばい。無限に長く書いてしまう。
実はまだまだ書き足りていない、
胡口さんの書いた「キャプション文芸」について、
僕の熱い思いもあるのですが、
それは本書「あとがき」に
じっくり書かせていただいたので、
そちらを読んでいただけたらと思います。

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『1円も儲からずにTシャツを作る方法
 オンラインTシャツショップGbMの伝説』

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著者:胡口桂子
価格:1,575円(税込)
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ISBN:4947752564
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担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2005-12-13-TUE

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