![]() |
| 担当編集者は知っている。 |
イタリア、フランス、中国、韓国、 タイ、インド、中南米、極北‥‥ 世界20地域の食を徹底取材した、 スローフードの世界全集です。 単なる料理の本にとどまらず、 食を切り口にして地域や民族の文化を 浮き彫りにした読み応えのあるご本。 食のプロの方はもちろん、 好きな料理や好きな国をより深く知るのに とっても役立ちそうです。 また、独特のブックデザインは アジア図像の研究家としても著名な グラフィックデザイナー、 杉浦康平さんによるものです。 (「ほぼ日」渡辺) ********************************** 担当編集者 /農文協書籍編集部 本谷英基 台所と食卓から世界を読み解く 『世界の食文化』シリーズ全20巻 満を持しての大型企画 「鉄の胃袋を持つ人」といわれ、世界中の食べものや 酒を食べかつ飲み、世界の食文化に精通する石毛直道氏 (国立民族学博物館名誉教授)が監修し、 全巻書下ろしの『世界の食文化』(全20巻)が、 今、ホットな話題を振りまいています。 世界の食文化をテーマにしたシリーズは、 日本にこれまで一つだけありました。 朝日新聞社から80年12月〜83年8月に出された 『週刊朝日百科 世界のたべもの』です。 写真を豊富に使った世界各地の食の博物誌・民族誌 というべき内容でした。 以来、グローバリゼーションが 急速に進展したにもかかわらず 「世界の食文化」をテーマに掲げたシリーズは、 20年以上経た今日まで刊行されることはありませんでした。 それは何故でしょうか。大きな理由の一つに、 極北から熱帯、南半球までの食の世界を カバーする執筆者の確保がむずかしかった ということがあります。 世界中の諸民族の食生活と食文化の実態を浮き彫りにする というこの企画では、 文献主義は役に立たず、現地体験は欠かせない要件です。 そこに研究者の世代が一回りする必然性があった ということです。 このシリーズは、このような難題を乗り越え、 満を持して実現した大型企画です。 図書館や学校、食に関心のある読者から 歓迎されているゆえんです。 台所と食卓から世界を読み解く さて、『世界の食文化』シリーズのコンセプトは、 「台所と食卓から世界を読み解こう」というものです。 台所の食材には、その地域の環境と 生産様式が反映されています。 台所用具や料理方法には、 民族の伝統的技術が集約されています。 食卓の作法には、民族の伝統的な人間関係のルール、 信仰する宗教が顔をのぞかせます。 冠婚葬祭や年中行事は、その地域の食卓に 色濃く反映されます。 作物や家畜の多くは、歴史的な異文化交流によって もたらされたものです。 食のありかたを見ることによって、 その地域や社会を理解することができます。 「食は文化を映す鏡」です。 食を切り口にして各地域・各国の個性、 人びとの暮らしの姿を浮き彫りにする―― それが『世界の食文化』刊行のねらいです。 執筆陣は文化人類学者・民族学者・社会民族学者・歴史家・ 作家・文学者・フォトジャーナリストなど多士済々です。 以下で、既刊書の中からいくつかの国の 食文化の特色を紹介しましょう。 「パスタ感覚」から読み解いたイタリアの食文化 ![]() 第1回配本は、2003年10月に同時発売の 『タイ』(山田均著)、『トルコ』(鈴木董著)、 『イタリア』(池上俊一著)、 『ドイツ』(南直人著)の4冊。 『イタリア』を執筆された池上俊一氏は イタリアで長く暮したことのある 西洋史家(東大教授)ですが、 イタリアの食文化を解き明かす鍵は 「パスタ感覚」であると喝破しております。 パスタは母親が全身を使って捏ね上げ、 手で成型してゆきます。 その手仕事には彼女の魂が込められ、 パスタは子どもにとってはまさに母乳の延長とも 言えるもので、 子どもはそのパスタ感覚のもとで大人になるというのです。 現在のイタリアが、世界に比類のない 多様で豊かな農=食の「国家遺産」をもっているのは、 このパスタ感覚が生きつづけているからと言えるでしょう。 「スローフード」運動がイタリアから始まったことが 素直にうなずけます。 世界3大料理の一つトルコ料理 ![]() 一方、東洋と西洋の交わる地に花開いたのが、 フランス・中国と並び「世界3大料理」の一つと 称されているトルコ料理です。 トルコのイスタンブル大学に4年間留学していた経歴を 持つ著者の鈴木董氏(東京大学東洋文化研究所教授)は、 その世界3大料理の一つたるトルコの食文化の真髄を 歴史を遡って解き明かしてゆきます。 トルコ民族の本来の故郷はモンゴル高原の北、 アジアの北東辺です。 その後、長い年月の間に南下西進し、 中央アジアに広く分布し、イスラムの文化に出会いました。 さらに、トルコ民族は巨大なオスマン帝国を築き上げ、 ローマ帝国の正系の後継者ともいうべき ビザンツ帝国をも征服し、 地中海世界に到達して海水魚に出会ったのです。 著者は、トルコ料理の特色を東西の食材、民族の歴史、 食の伝統、食材の空間的背景、イスラムの戒律などの 諸要素から見事に解き明かしてゆき、 トルコ料理が世界3大料理の一つであることを実証し、 トルコ料理が世界へ向けて拡がっていることを 述べて結んでいます。 極北にも環境汚染の影響が ![]() 『極北』(岸上伸啓責任編集)で取り上げるのは、 西シベリアのツンドラ地帯に住むネネツ、 タイガ地域に住むハンティ、 ロシア極東のアムール川流域に住むナーナイやウリチ、 ウデヘ、ニヴヒなどの先住諸民族、 北海道のアイヌ、カナダのイヌイットなどです。 極北の少数民族は、寒冷の地でとれる動物や魚を主体にした 固有の食生活を営み、 その地域固有の食文化を築いてきましたが、 それはその地に閉じ込められたものではなく、 毛皮貿易などを通じて外部世界と接触し、 その影響を受けてきました。 たとえばイヌイットの食文化には スコットランドの捕鯨者や毛皮商人がもたらした 紅茶を飲む習慣が、 ロシアのネネツやハンティにはロシアの食文化の影響が、 アイヌの食文化には和人の食文化の影響が見てとれます。 また、清浄無垢の地と思われがちな極北にも 地球温暖化や環境汚染によるさまざまな影響が 顕現しており、本書には その最新の知見が報告されています。 モンゴルの食文化は現代人の食生活への指針 ![]() 東洋では何といっても『中国』。 中国に精通した文化人類学者・周達生氏 (国立民族学博物館名誉教授)が、 鳥獣虫魚から蛇まで多様な食材を食べ尽くす 多民族国家・中国の食文化の全容に分け入っています。 特に、少数民族の食事情の詳細と 近年30年間の急激な食の変容の報告は、 現代中国を読み解く鍵といっても過言ではありません。 『モンゴル』は気鋭の女性民族学者・小長谷有紀氏 (国立民族学博物館教授)がリポートする モンゴル高原の食卓。 モンゴルの遊牧民の食生活は 農耕を基盤にする人びとに比べると、 より動物性の食材に重きをおいてきました。 しかし彼らは高脂血症などの生活習慣病とは無縁だと、 著者は報告しています。 この不思議を解くカギは、動物の全体食や馬乳酒・ 乳製品などの発酵食品の豊富な摂取。 モンゴルの民の食生活は、 動物性の食材に急激に傾斜してきた 現代人にとってもっとも学ぶべき知恵かもしれません。 「近くて近い国」になった韓国の食の真髄 ![]() 最新の05年9月発行が 『韓国』(国立民族学博物館教授・朝倉敏夫著)。 「日本人は目で食べるが、 韓国人はからだ全体を使って食べる」 といわれる韓国の人たちの食へのこだわりを 掘り下げています。 韓国料理の特色は、なによりもご飯であり、 なくてならないのが汁と鍋物(チゲ)であり、 加えて多彩なスープとキムチ、味の決めてのトウガラシ、 薬食同源思想にもとづく補身食と言えるでしょう。 韓国では、料理を作る上で最も大切なのは、 「精誠(真心)」をこめて作ることだといいます。 そして客をもてなすため、 脚が曲がるほどお膳の上に料理が載せられます。 食べることに力いっぱいの韓国人の社会や文化は、 食を切り口とすることで見えてくることが たくさんあります。 **********************************
|
担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。
2005-11-04-FRI
![]() 戻る |