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| 担当編集者は知っている。 |
金閣寺と銀閣寺と並び、 京都三名閣と呼ばれる飛雲閣。 ほとんど一般公開されることのないこの国宝を、 アラーキーこと荒木経惟さんが 1年をかけて撮った写真集です。 この写真集の担当をされた、 本願寺出版社 藤本真美さんに お話をおうかがいしました。 また、今回は飛雲閣のすばらしさと 荒木さんの写真を見ていただければ‥‥と、 写真をいくつかご紹介いたします。 「ちょっとのぞいてみる」ボタンを、 ぜひクリックしてくださいませ! (「ほぼ日」渡辺) ************************************ 担当編集者 /本願寺出版社 藤本真美 ――この写真集が生まれたきっかけは? 飛雲閣は「金閣・銀閣・飛雲閣は京の三名閣」 と謳われながらも、公式には年に一度しか 公開することのない国宝建築です。 多く方から「飛雲閣っていったいなに?」と、 ご質問いただくにも関わらず、 それに応えるきちんと解説した書物がなかったため、 だったら「大まかな解説書兼カラーグラフを作りましょう」 という企画がもちあがったことがきっかけでした。 ただ、今想えば、「飛雲閣の意志(差し金?)」 だったのでは? という気がしないでもありません。 実は、この写真集の撮影の終盤(冬)以降、 飛雲閣のある庭園(滴翠園)を、 建築当時の約400年前の姿に改修する工事が進み、 華やかな春のツツジも、艶やかな秋の紅葉も、 池の周りの年季の入った緑も、趣深い石塔も‥‥ 今や全部ぜーんぶなくなっちゃいましたから! その工事の計画は、まったく私たちにとっては 「寝耳に水」でした。 ですから、もう半年でもスタートがずれていたら、 本書はあり得ませんでした! そんなわけで、「私の今の姿を、最高の形で残したい!」 という飛雲閣のメッセージを、 私は知らず知らずのうちに受信し、 突き動かされたような気がするのです。 もちろん、それは後付けの理由ですけど、 そうとでも考えないと、軌道の乗り方が唐突すぎるんです。 ――荒木経惟さんとお寺の組み合わせには驚きました。 荒木さんにお写真をお願いしたきっかけは? 「ただの美しい建築写真、 上手なカレンダー的写真では絶対ダメだ」というか 「イヤだ」という想いが、まず、ありました。 そもそも飛雲閣の「いわく言い難さ」を写し留めるのが 超難しいことは、 大学時代、写真に傾倒していた素人の私でも判りました。 余談になりますが、20才の誕生日プレゼントとして、 同じ写真サークルの友人から、写真集をもらいました。 荒木さんの「愛しのチロ」でした。 その時まで 「アラーキー=きわきわの女性ヌード=いやらしい」 というイメージしかなかった私は、 「どうせ表紙がネコっていうだけでしょ‥‥」と 思いつつ開きました。 が、読了とともに、「これが写真というものだー!」と 瞠目していました。 セザンヌが絵画空間でしかなしえない世界を 構築したように、 アラーキーは、写真空間でしかなしえない世界を、 選んでいると同時に世界から選ばれている! と、思いましたね。 そこからずっとファンです。 というわけで、「写真はアラーキー!」と すぐさま思ったのでした。 ――荒木さんはこの写真集について なにかおっしゃってましたか? うちから発行している新聞、 『本願寺新報』のインタビューで、 「世間の人は、アタシが飛雲閣を撮るのを 不思議に思ったんじゃないかな。 アタシは今回、飛雲閣に呼ばれたと思っている。 すごい出会いだった。 でもアタシは言葉じゃ、 飛雲閣の素晴らしさを伝えられないから、 この写真集『飛雲閣ものがたり』を見てよ。 すごく良くできてるから、多くの人に見てほしいね。」 とこたえられてます。 そして、装幀デザインを担当された鈴木一誌さんは、 「荒木さんが建物だけの写真を撮るのはたいへん珍しい。 これは画期的で新しい荒木さんが発見できるはず。」 とコメントをくださいました。 ――飛雲閣をご存知ない方に紹介を お願いいたします。 飛雲閣はそれ自体が生きているかのような、 不可思議な魅力のある建物です。 変化に富んだ左右非対称な形でありながら、 巧みにバランスを取っている繊細な構造は、 艶やかで、表情豊かです。 「日本むかし話」とかそういうのに、 何百年と経ったモノには魂が宿って‥‥というのが、 よくありますよね? それと一緒にしたら、 飛雲閣に怒られてしまうかもしれませんが(笑)。 とにかく、飛雲閣のぐるり、あの塀の中では 時間の流れ方が違う気がします。確実に。 それは、京都という土地柄に加えて、 浄土真宗本願寺派の本山であるという由緒、 秀吉の聚楽第の面影、 風雅な遊興の場としても使われていたという 歴史に鑑みると、 そうならない方がおかしいくらいかもしれません。 この写真集は伝説の絶世の麗人(両性具有?)、飛雲閣が、 初めての姿を荒木さんだから見せた、 プライベート写真集だといっても 過言ではないと思います。 「私のすべての顔を見せてあげる。 だから、すべての季節とすべての時間に来て」 という声に応えて、荒木さんは、春夏秋冬、 もう一回春、途中に台風の時と初夏‥‥ という計7回の撮影にみえられました。 正直言って、毎回が「奇跡の数珠つなぎ状態」 だったわけですが、 なかでも冬、しかも夜明けの撮影はすごかったです。 底冷え厳しく、暗い午前6時に 御堂の前で待ち合わせをしました。 道すがら、道路に積雪はなかったのですが、 「阿弥陀堂門」の屋根がぼんやり白く見えました。 飛雲閣と同じこけら葺ですから、 「ひょっとして」とドキドキしました。 「冬、雪の飛雲閣」は、撮れたら素晴らしいだろうけれど、 2泊3日のスケジュール中に必ずしも遭遇する とは限りません。 「雪が降ったら連絡してくれよ。行くからさ」 とおっしゃってくださったものの、 その年の京都は一度も雪が降っていませんでした。 そして、6時から御堂で勤められている 朝の勤行に皆でお参りした後、 うすら明るくなりつつある敷地内に足を踏み入れると、 「おおお!」といきなり感動。 「雪が積もっている」というにはあまりに儚げですが、 屋根は白でした。これぞ「雪化粧」です。 そして陽光が差しはじめ、 薄くはたかれたパウダースノーが、キラキラ光って、 それはそれは奇跡的な美しさでした。 ------- ■展覧会のお知らせ 荒木経惟写真展「 飛雲閣ものがたり 」が、 新宿のエプソンのギャラリー「epSITE」で開催中です。 会期は11月3日(木)までとなります。 お近くの方はぜひお立ち寄りください。 くわしくはこちら「epSITE」 ------- ************************************
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2005-11-01-TUE
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