担当編集者は知っている。


『あなたのことが、いちばんだいじ』
著者:盛田隆二
価格:1,365 円(税込)
発行:作品社
ISBN:4861820545
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本書に収められている
盛田隆二さんの幻のデビュー作を読み、
これが高校2年生の書いた作品?! 
と、びっくりしました。
時に生々しく、時に繊細に、
心の動きを書き綴る丁寧な描写力は
高校生とは思えないすごさ。
なんでもバタイユの『青空』に衝撃を受けて、
生まれた作品だそうです。

ところで、
本に収められている6つの短編はどれも、
最後まで一気にぐいぐいひっぱられる
スリリングなストーリーで、
淡々とした語り口から、
秘められたせつなさや愛情が浮かび上がり、
強烈な余韻が残ります。
この本を担当された作品社の青木さんに、
お話をおうかがいしました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/作品社 編集部 青木誠也


盛田隆二さんといえば、2004年2月に文庫化された
小説『夜の果てまで』が25万部の大ヒットとなり、
現在、非常な注目を集めている書き手です。

盛田さんは、1954年生まれ。
大学卒業後にぴあに入社し、
「ぴあ」副編集長、「ぴあムック」編集長などを経て、
1996年に退社、作家専業になっています。
書き手としても、1990年に刊行した最初の単行本
『ストリート・チルドレン』で野間文芸新人賞候補に、
1992年に刊行した『サウダージ』で三島由紀夫賞候補に
なっていますので、編集者としての最後の数年は、
作家としてもご活躍されていたというわけです。

今回ご紹介する『あなたのことが、いちばんだいじ』は、
この盛田さんの書かれた小説6作を集めた短篇集ですが、
意外なことに、単著としては初めての短篇集なのです。

収録作中、最も執筆時期が古いのは、
オビで「幻のデビュー作」と謳った、「糠星」です。
1971年に旺文社の雑誌「高二時代」の懸賞小説で
一等を取ったものですので、
なんと34年前の作品ということになります。
著者の分身と思しき「守田」少年と和泉少年を
主人公とする、とても若々しい青春小説です。

「穴のなかの獣」は、1989年に雑誌「早稲田文学」に
発表された作品。当時「早稲田文学」の編集者として、
盛田さんにこの原稿を依頼したのは、『ビタミンF』で
直木賞を受賞した、小説家の重松清さんでした。
ちなみにこの短篇は、原型となった作品はすでに76年に
執筆されており、筑摩書房主催の公募新人賞・太宰治賞に
応募して、最終選考直前まで残ったそうですが、
このときの受賞は、宮本輝さんの名作「泥の河」。
盛田さんは当時を振り返って、
「そりゃあ、勝てるわけない相手だよね」
と苦笑されていました。

「ひらひら」は、編集者を辞め、文筆一本で生活することを
決意した男の、退職後最初の一日が描き出されます。
この小説では、主人公の妻が語り手となっていますが、
自分の夫がアダルトビデオに出演させられそうになっても、
酒を飲んで怪しげな男に殴られて身包みはがれても、
まったく動じることなく、淡々と小説を語りつづける視線が
不思議な印象を残します。
本作中、主人公がゲラ校正をしている小説のタイトルは、
『ニッポンの狩猟期』
盛田さん曰く、
「だって、この小説に書いてあることは、
 全部実話ですからね」。
(いや、冗談だと思いますが‥‥)

「エーテル密造計画」は、75の断章からなる、
夢のように理不尽な、筋の通らない小説。
冒頭(第2節)には、「16歳のときに書いた『糠星』」が
本人の知らない間に文庫化されていた、
という一節があります。

表題作「あなたのことが、いちばんだいじ」は、
高校生の愛娘を捜す私立探偵の物語。
数年も会っていない高校生の娘を思う父親の心情の描写も
さることながら、事件が意外な結末を迎えるラストには、
一流のミステリー小説の趣きもあります。

2005年執筆の最新作「折り紙のように」では、
少年時代、父親の不倫相手に淡い恋心を抱いていた男が、
その父親の死によって、30年ぶりに故郷に
帰ることになります。

以上6篇が、本書『あなたのことが、いちばんだいじ』の
収録作です。笑いあり、涙あり、青春あり、不倫あり、
シュールあり、愛あり、なんでもあり。
なにせ、執筆期間34年の一冊ですので、
一人の人間の半生と同じくらい、
いろんなものが詰まっています。
長篇小説は、国内外で評価の高い盛田さんですが、
短篇作家としても、多彩な作風を持った、
すばらしい書き手であることを、
本書によって知っていただければ幸いです。

この、色とりどりの本書のパッケージに、
雰囲気のある美しい写真を提供してくださったのは、
以前「ほぼ日」でも連載をされていた、
佐内正史さんです。
盛田さんとの打ち合わせで、本のタイトルを
『あなたのことが、いちばんだいじ』と決定したときに、
装丁は、佐内さんの写真を使おう、と心に決めました。
かなりの数の写真を見ましたが、結局、「これだ!」と
ピンと来たのは『安倍なつみ写真集 出逢い』に収められた
部屋の中に女性の淡い陰が落ちている一枚でした。
そう、カヴァーに写っているあの足、
実は、安倍なつみさんなんです。
言われなければ、まず誰も気づかないですよね(笑)。

最後に、本書の刊行を記念したイベントのお知らせです。
10月30日(日)、午後2時から4時まで、
東京都豊島区の千登世橋教育文化センターで、
著者・盛田隆二氏自身が本書について語る、
読書会を開催いたします。
詳しくは、こちらをご覧ください。
また、このイベントについての
問い合わせ及びご予約は、主催の講演会ドットコムに、
Eメールでお願いいたします。
メールアドレスは、event@ko-enkai.comです。

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『あなたのことが、いちばんだいじ』
著者:盛田隆二
価格:1,365 円(税込)
発行:作品社
ISBN:4861820545
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担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2005-10-11-TUE

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