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| 担当編集者は知っている。 |
藤井東さんは、山梨県で35年以上、 学習塾を経営されている先生です。 吉本隆明さんや芹沢 俊介さんと共に 現代の教育が抱える問題点について 考察したご本をお出しになるなど、 幅広く活動されています。 長年の子どもたちとの交流を 綴ったこのご本について、 吉本隆明さんはこう語っています。 「生徒に与えつづけている影響が どれほどのものなのか 藤井先生自身に判るのは、 もしかすると、ずっと後なのかも知れない。 本当の影響とはいつも そういう現われ方をするのだとおもう」 (本書より) この本を担当された、 春秋社の平野さんからお話をお伺いしました。 (「ほぼ日」渡辺) ********************************* 担当編集者 /春秋社 平野麻衣子 「あったらいいな、私にとってのこんな場所」 ●ここって子どもの居酒屋!? いつ行っても喜んで迎えられて、 ゆっくりくつろぐことができて、 気の合う友だちがいて、 なんの気がねもなく話すことができる、 なにかつらいこと、うれしいことがあったら 足を向けたくなる‥‥ 自分にとってのそんな場所ありますか? 大人だったら“行きつけの居酒屋”とか “学生時代の友だちの家” が思い浮かぶかもしれない。 わたし? 正直なところ、そんな場所は思いつかない。 子どもでも大人でも、女だろうと男だろうと、 そんな幸せな居場所を持っている人は、 恵まれた人だと思っていた。 『ここって塾!?』のなかに出てくる 子どもたちにとって、 著者である藤井東さんの塾は、 そんないつ行ってもくつろげる楽しい場所だ。 子どもいないし、塾なんて関係ないし、 という人もたくさんいるだろう (わたしも30代子なし)。 けれど、子どもが藤井さんに見せるふるまいは、 まだひりひりと感じやすく小さかった自分に 出会わせてくれる。 ●宿題なし! テストなし! 34年前に8畳たらずの場所で塾をはじめてから、 藤井さんは子どもに宿題を出したことも、 テストをしたこともない。 それどころか、お菓子の持ち込みOK、読書OK、 塾では自分が今したいことをすればいい。 勉強がわからないという子には、 手書きのプリントを作って渡す。 甲府にある藤井さんの塾を訪ねる前、 わたしは密かに、 「そうはいっても、勉強する子はするのだろう」 「なだめたりすかしたりしながら、 結局は机に向かわせる術があるんじゃないか」 と勘ぐっていた。 けれど本当のところ子どもたちは 気ままに思い思いに過ごしている。 塾の部屋には、 いつまでも携帯電話から目をはなさない子、 塾に着いてからずっとマンガを読んでいる子、 おしゃべりしている子、お菓子を食べている子、 勉強している子が同席することになる。 ときには塾に泊まっていく子どもたちもいる。 藤井さんはそのなかで、おしゃべりの相手をしたり、 質問してくる子どもに勉強を教えたりする。 ![]() ●塾なのに勉強しないの!? 「藤井さん、いままで一度も、 そろそろおしゃべりをやめたら? 勉強はじめようよ、 と言ったことないんですか」 と聞いてみた。 「ありませんねえ」 とのんびり答える藤井さん。 こんなふうに書くと、 「そんなことで受験勉強はどうするの?」 「せっかく塾にお金を払って来る意味は?」 という声が聞こえてきそうだ。 実のところ藤井さんの塾の子どものほとんどは 志望校に合格していく。 正確に言えば、自分で自分が行くべき道をさがして、 これならいけそう、という方向に進んでいく と言えばよいか。 ![]() ●公開できなかったエピソード 本の中には書くことができない いくつかのエピソードがあった。 あまりにも過酷な状況であったり、 現在進行中の出来事であったりして、 公表がはばかられるようなことだ。 それらの出来事は、藤井さんの日常が “子どもたちと一緒に楽しむ”ばかりの日々 でないことも伝えていた。 なにも強要されない、怒られない、 いつでも耳を傾けてくれる人にだけ 子どもたちが見せる子どもだけの世界。 こんな先生と出会える子どもたちを、 こんな居場所を一瞬でも持つことができた子どもたちを、 うらやましいと感じる人もいるだろう。 藤井さんが子どもに向ける穏やかでやさしい視線、 子どもたちが受け取るどこまでもつづく安心感。 実際の藤井さんは、やさしい声で静かに話す、 文体に表れる以上にやわらかな人です。 *********************************
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2005-09-20-TUE
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