担当編集者は知っている。


『ここって塾!?』
著者:藤井 東
価格:1,890円(税込)
発行:春秋社
ISBN:4393332105
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藤井東さんは、山梨県で35年以上、
学習塾を経営されている先生です。
吉本隆明さんや芹沢 俊介さんと共に
現代の教育が抱える問題点について
考察したご本をお出しになるなど、
幅広く活動されています。

長年の子どもたちとの交流を
綴ったこのご本について、
吉本隆明さんはこう語っています。
「生徒に与えつづけている影響が
 どれほどのものなのか
 藤井先生自身に判るのは、
 もしかすると、ずっと後なのかも知れない。
 本当の影響とはいつも
 そういう現われ方をするのだとおもう」
(本書より)
この本を担当された、
春秋社の平野さんからお話をお伺いしました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者
/春秋社 平野麻衣子


「あったらいいな、私にとってのこんな場所」

●ここって子どもの居酒屋!?

いつ行っても喜んで迎えられて、
ゆっくりくつろぐことができて、
気の合う友だちがいて、
なんの気がねもなく話すことができる、
なにかつらいこと、うれしいことがあったら
足を向けたくなる‥‥
自分にとってのそんな場所ありますか?

大人だったら“行きつけの居酒屋”とか
“学生時代の友だちの家”
が思い浮かぶかもしれない。
わたし? 正直なところ、そんな場所は思いつかない。
子どもでも大人でも、女だろうと男だろうと、
そんな幸せな居場所を持っている人は、
恵まれた人だと思っていた。

『ここって塾!?』のなかに出てくる
子どもたちにとって、
著者である藤井東さんの塾は、
そんないつ行ってもくつろげる楽しい場所だ。

子どもいないし、塾なんて関係ないし、
という人もたくさんいるだろう
(わたしも30代子なし)。
けれど、子どもが藤井さんに見せるふるまいは、
まだひりひりと感じやすく小さかった自分に
出会わせてくれる。

●宿題なし! テストなし!

34年前に8畳たらずの場所で塾をはじめてから、
藤井さんは子どもに宿題を出したことも、
テストをしたこともない。
それどころか、お菓子の持ち込みOK、読書OK、
塾では自分が今したいことをすればいい。
勉強がわからないという子には、
手書きのプリントを作って渡す。

甲府にある藤井さんの塾を訪ねる前、
わたしは密かに、
「そうはいっても、勉強する子はするのだろう」
「なだめたりすかしたりしながら、
 結局は机に向かわせる術があるんじゃないか」
と勘ぐっていた。
けれど本当のところ子どもたちは
気ままに思い思いに過ごしている。

塾の部屋には、
いつまでも携帯電話から目をはなさない子、
塾に着いてからずっとマンガを読んでいる子、
おしゃべりしている子、お菓子を食べている子、
勉強している子が同席することになる。
ときには塾に泊まっていく子どもたちもいる。

藤井さんはそのなかで、おしゃべりの相手をしたり、
質問してくる子どもに勉強を教えたりする。




●塾なのに勉強しないの!?

「藤井さん、いままで一度も、
 そろそろおしゃべりをやめたら?
 勉強はじめようよ、
 と言ったことないんですか」
と聞いてみた。
「ありませんねえ」
とのんびり答える藤井さん。
こんなふうに書くと、
「そんなことで受験勉強はどうするの?」
「せっかく塾にお金を払って来る意味は?」
という声が聞こえてきそうだ。
実のところ藤井さんの塾の子どものほとんどは
志望校に合格していく。
正確に言えば、自分で自分が行くべき道をさがして、
これならいけそう、という方向に進んでいく
と言えばよいか。




●公開できなかったエピソード

本の中には書くことができない
いくつかのエピソードがあった。
あまりにも過酷な状況であったり、
現在進行中の出来事であったりして、
公表がはばかられるようなことだ。
それらの出来事は、藤井さんの日常が
“子どもたちと一緒に楽しむ”ばかりの日々
でないことも伝えていた。

なにも強要されない、怒られない、
いつでも耳を傾けてくれる人にだけ
子どもたちが見せる子どもだけの世界。
こんな先生と出会える子どもたちを、
こんな居場所を一瞬でも持つことができた子どもたちを、
うらやましいと感じる人もいるだろう。

藤井さんが子どもに向ける穏やかでやさしい視線、
子どもたちが受け取るどこまでもつづく安心感。
実際の藤井さんは、やさしい声で静かに話す、
文体に表れる以上にやわらかな人です。

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『ここって塾!?』
著者:藤井 東
価格:1,890円(税込)
発行:春秋社
ISBN:4393332105
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2005-09-20-TUE

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