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| 担当編集者は知っている。 |
ポール・オースターやリチャード・パワーズなどの アメリカ文学作品の翻訳者、柴田元幸さんと、 スタニスワフ・レムやヴラジーミル・ナボコフなどの ロシア・東欧文学作品の翻訳者の沼野充義さんの 初めての共著がこれから出ます! (発売は8月27日ごろです。) 新しい世界文学のオススメ作品を 紹介してくれるこの本は、 読書の秋を迎える今の時期にぴったり。 この本を担当された作品社の増子さんに お話をおうかがしました。 (「ほぼ日」弥絵) ************************************ 担当編集者 /作品社 増子信一 「200X年 文学の旅」――もちろん、これは キューブリックの「2001年 宇宙の旅」に ちなんで名付けられたもの。 本書の元になった雑誌『新潮』の連載も、 21世紀を目前に控えた2000年1月から始まり、 世紀を跨いで2003年12月まで続けられたものです。 柴田元幸さんと沼野充義さんは、 いずれも1954年、東京の大田区生まれ、 しかも現在の職場(東京大学)も一緒。 したがって、アメリカ文学と ロシア・東欧文学と専門こそ違え、 育った環境、時代の感性など、 まさしく同時代を共に生きてきたお二人です。 各種シンポジウムや会合など、 二人はさまざまなかたちでコラボレートしていますが、 実は共著は今回が初めて。 それだけでも楽しみな本です。 さて、いまさら言うまでもありませんが、 柴田・沼野両氏は、それぞれの分野で 文字通りトップランナーとして駆け続けてきました。 柴田さんは、オースター、エリクソン、ミルハウザー、 ユアグロー、レベッカ・ブラウンなど、 現代アメリカ文学の最も活きのいいところを 紹介してきて、 「柴田訳」というのが一種のブランドのようにも なっているのは、みなさんご存じのところ。 沼野さんは、ロシア文学といえば、 ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフ、 新しいところでもソルジェニーツィンといった イメージでしかなかったところに、 ペレストロイカ以降の新しいロシア文学の動きを いち早く紹介し、ロシア・東欧文学を、 同時代文学として位置づけてくれました。 またその一方で、スタニスワフ・レムの 名著『ソラリス』の翻訳や、 20世紀を代表する多言語作家 ヴラジーミル・ナボコフを、 ロシア文学者と英文学者との共同による 日本ナボコフ協会を立ち上げるなど 多方面の活躍をされています (なお同協会のメンバーによる 『ナボコフ短篇全集』全2巻が 作品社から出ています)。 本書は、この二人の稀代の文学ハンターが、 未踏の世界文学の森をめざして旅に出るという趣向です。 それぞれ、旅先からとっておきの獲物をひっさげ、 互いの成果を披露する、なんとも贅沢な文学案内です。 ちなみに、どのような作家や作品が 登場するのかというと、 まず「新しい世紀へ」と題して、 沼野さんがイスラエルの小説家 アハロン・アッペルフェルドを紹介しながら、 波瀾の生涯の中で、ドイツ語、イディッシュ語、 ウクライナ語、ルーマニア語、ヘブライ語と 言語から言語へと動き続けてきた彼の越境性と 20世紀の世界文学がシンクロする様子を描いています。 それに対して、柴田さんが紹介するのは、 スコットランド出身のカナダ作家エリック・マコーマック。 彼の『ミステリウム』という小説は、 小さな田舎町で、人々が言語に関する奇病―― 寡黙な人が異常に饒舌になったり、 逆さまに喋ったり――にかかり、 次々に死んでいくというもの。 警察が調査に乗り出して捜査するうちに、 ドイツ軍捕虜たちの謎の死や、 街の暗い歴史が明かされていく。 さらには、ソシュールやデリダの パスティーシュが駆使されるという はなはだ奇妙な小説。 こんな具合に、交互にこれぞといった作家や作品を (もちろんほやほやの新情報)を紹介していきます。 その他、お二人のある時の仕事ぶりが 日記風に描かれて、 学者の舞台裏を覗ける楽しみも。 巻末には、池内紀、中村和恵、堀江敏幸の 各氏を迎えての 「外国文学は『役に立つ』のか」と、 レベッカ・ブラウンさんと 三島賞作家小野正嗣さんを交えての 「新しい文学の声」という 二つのシンポジウムも併録されています。 とにかく、盛りだくさん。 巻末の人名索引を見るだけでも、 二人の関心の広さは一目瞭然です。 また、本文には、詳細な脚注もついていて、 これを読めば、さらに文学世界が広がってゆきます。 装幀はご存じクラフト・エヴィング商會。 この組み合わせも初顔合わせ。 本文にもクラフト・エヴィングによる ちょっとした仕掛けがありますので、お楽しみに。 どうか、この刺激的で楽しい本を、ご賞味ください。
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2005-08-23-TUE
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