担当編集者は知っている。


『野菜だより』
著者:高山 なおみ
価格:1,680円(税込)
発行:中央出版株式会社アノニマ・スタジオ
ISBN:487758613X
【Amazon.co.jp】はこちら

暑くなって参りました。もう夏バテの方も?
食欲がないときには、旬の野菜たちから
元気と栄養をもらいましょう!
本日のお薦めは『野菜だより』です。
この本にはビニールカバーがついています。
そして、余白が多い。
最初のページをめくると
「どうぞ、台所で使って下さい、
 自分なりのメモを書き込んで下さい」と
書いてあります。
これは、お料理の本だから、是非是非活用してね、
というメッセージ。

料理レシピだけではなく、野菜の保存方法や、
余った野菜で作る簡単常備菜もそっと教えてくれます。
3本1パックの人参、1本余っちゃったよ〜
という時も、この本を見ればOKというわけ。
とても気配りされた本なのです。

もちろん、本題の野菜への気配りはもう言わずもがな!
本の内容については、担当編集者の丹治さんが
詳しく語ってくれます。では、どーーぞー。

(ツルミ)

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担当編集者 
/アノニマ・スタジオ 丹治史彦


「野菜は小さな自然です」
高山なおみさんがよくいう言葉です。

吉祥寺に「諸国空想料理店kuukuu」という
レストランがありました。
エスニックという言葉も無国籍料理という言葉も
まだそれほど使われていなかったころに
吉祥寺で始まったレストランで料理の腕を
ふるっていたのが高山なおみさんでした。
そこで出される料理は、
まさに「諸国」を「空想」で旅したような、
不思議な存在感のあるメニューばかり。
旅の途上で、映画の中で、本の中で、
高山さんが出会ったさまざまな味が、
まさに彼女の空想という
フィルターを通して形を与えられて、
「どう、おいしそうでしょ? 食べて食べて!」
といわんばかりの勢いでテーブルに運ばれます。
量もアイデアも出し惜しみしないその気前のよさに、
たくさんのファンがついたのもうなずけます。
そして高山さんは独特のスパイスや
ナンプラーなどのエスニック調味料の使い手として、
雑誌やテレビなどで活躍するようになりました。

2002年12月、今から振り返れば
「kuukuu」が店を閉じるちょうど一年前に
高山さんは店を離れ、
「料理人」としての活動を開始します。
シェフという殻を脱ぎ捨てた彼女の料理は、
もちろん長く親しんだナンプラーや
粒の黒こしょうなどの使い方に
「kuukuu」時代からの香りは残っていましたが、
それよりも何よりも、
野菜をはじめとした素材の力を信頼しきって
その味を引き出す、
シンプルで力強いものになっていました。

「野菜は小さな自然です」

一本のにんじんにも、ひと束の小松菜にも、
自然のいきおいがみなぎっている。
そのいきおいを素直に料理にもちこむこと。
高山さんの料理には、
時として編集者のこちらがひるんでしまうような、
(まるでひとの恋愛をのぞき見るようで)
赤面してしまうような野菜との
ゆるぎない信頼関係がありました。

たとえばこの本の表紙を飾る「かぶの厚切り焼くだけ」。
(この料理のネーミングからして、
 すでにただごとではないと思うのですが、
 いかがですか?)

これは文字通り、厚めに切ったかぶを、
オリーブオイルをひいたフライパンで焼いただけのもの。
ですが、これが驚くほどおいしいんです。
旬の時期のかぶは内側に驚くほどの
みずみずしさをひめていて、
フライパンで焼くことでほくほくした食感をひきだします。
しいたけは、焼き網で焼き目をつけると
驚くほどに香りをまして、
「松茸いらず」と呼びたくなるほどのいい匂いを
キッチンに振りまきます。

高山さんは、ほんとうにまるで野菜たちと
対話するように調理法を選びます。
そのさまは、ジャズのミュージシャン同士が
あうんの呼吸でコードを進めたり
テンポを変えたりするのに似て、
スリリングで、しかも気持ちいいものでした。

ルールに縛られるのではなく自由に、
しかし「おいしい」という線路からは決して離れない、
それどころか
「えええ、こんなに簡単で、
 しかもこんなにおいしくていいんですか!?」
という驚きもあります。
まるで手品を見ているようで、
しかしどこにも隠された「タネ」がない、
開けっぴろげな魔法。
それが高山さんの料理です。

この『野菜だより』を作るときに、
最初に決めたルールがありました。
まず、一年を通してその野菜が一番元気な
「出盛り」の時期のものを使うこと。
そして、近所のスーパーや八百屋さんで手に入れること。
つまり、「有機」や「無農薬」といった
特別な野菜を使わなくても、旬の時期の野菜を使えば、
味も見た目も十分おいしいものができるはずだ、
という野菜への全幅の信頼です。

そのかわり、撮影期間は当然ながら
一年以上を要しました。
2003年の暮れから冬の野菜の撮影を開始し、
季節を一巡りして2004年の冬まで丸一年、
季節の野菜を追いかけながら
高山さんはメニューを考え、料理をしました。
その結果できあがったのが『野菜だより』です。
本を見たある人がいいました。
「なんか、写真がばらばらに思えるけれど‥‥」
当然です。
春先には柔らかな、夏にはじりじりとした、
秋にはしっとりと湿り気を帯びた、
冬には部屋の奥まで伸びてくる、
季節それぞれの太陽の光で撮影しているのです。

料理の写真はもちろんですが、
それぞれの章の冒頭に使っている
野菜たちのポートレートをぜひ見てみてください。
季節の光が、季節の野菜の表情を、
しっかりと写しとっています。
どれも近所のスーパーで買ってきた、
ごくふつうの野菜たちです。
でも、どれも自信に満ちた表情をしています。
「もやし」のような野菜ですら、
誇らしげに写っていますから。

「野菜は小さな自然です」
スーパーの棚にも、きちんと季節は巡っています。
これから夏野菜がいきおいます時期です。
ぜひ『野菜だより』のレシピで楽しんでください。

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『野菜だより』
著者:高山 なおみ
価格:1,680円(税込)
発行:中央出版株式会社アノニマ・スタジオ
ISBN:487758613X
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2005-08-02-TUE

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