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| 担当編集者は知っている。 |
ページをめくる前にまず表紙にびっくり。 だってだって、傘をさしてる勘三郎さん (それも歌舞伎の装束)が表紙なんです。 それも場所はニューヨーク!! いきなり度肝を抜かれます。 もちろん、中身もそれはそれはポップで これが歌舞伎の写真集??? とびっくり。とても新鮮です。 けれど、舞台の迫力はひしひしと こちらに伝わってきます。 さすが、篠山紀信さん。 そして、さすが勘三郎さん、なのです。 この本の魅力を、 小学館和樂編集部 新居典子さんに 語っていただきました! (ツルミ) **************************************** 担当編集者 /小学館和樂編集部 新居典子 「いいカメラマンというのは、運がいいカメラマン。 撮れちゃったんだよ」とは、 写真家の篠山紀信さんが中村勘三郎さんの楽屋で ポロリとつぶやいたセリフ。 そもそも今回出版した 『十八代目中村勘三郎襲名記念写真集』の写真は、 雑誌『和樂』4月号で掲載した勘三郎さんの 十八代目襲名特集のために、 襲名前後の数か月間の舞台を 篠山さんに撮り続けていただいたもの。 その写真があまりにすごい! もっとたくさんの方々に見ていただきたい! と言うわけで、一冊の写真集として 出版することになりました。 毎回、写真ができあがるたびに、 勘三郎さんの楽屋を必ず訪ねては 「気に入った写真があったら印をつけといて」 という篠山さん。 で、「選べないよ、だって全部いいんだもの」と、 やはり必ず困った顔で、でもうれしそうな勘三郎さん。 そのやりとりの中で 「こういう舞台写真、見たことないよ。 やっぱり先生、うまいんだね」 という勘三郎さんの褒め言葉に対して 漏らしたセリフが、冒頭の篠山さんの言葉です。 これまでの歌舞伎の舞台写真というと、 見栄を切るシーンなど決まったポーズの写真がほとんど。 ところが今回の篠山さんの写真はとにかく動きがある。 「見栄を切る」にいたる、 徐々に力が凝縮されていくその過程を 余すところなくとらえています。 たとえば 「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」では、 刀を振りかざして八ツ橋に飛びかかるシーンが そのまま一枚に切り取られているし、 「東海道四谷怪談」の髪梳きの場面にいたっては、 それはそれは空恐ろしく撮れている (ここで見せられないのが残念!)。 「わっ、こんな芝居をしていたんだ」と、 勘三郎さん本人も驚き、 じっと狙って、その場面を確かに撮影したはずの 篠山さんも驚く。 観客として観ていた私もこの写真を見て、 あらためて驚きました。 勘三郎さんの演技を、 客席から目をこらして見ていたはずなのに、 篠山さんの写真には、そのときは気がつかなかった 微妙な演技が映し出されている。 それは観客席からは決して見られない表情。 某演劇評論家に言わせると、 「我々と全く違う視角が新鮮だし、 それでいて芝居のイキがピタリと撮れている」と。 篠山さんは坂東玉三郎さんを撮って37年。 それでも 「僕は歌舞伎に関しては素人。歌舞伎ではなく、 玉三郎さんの表情をずっと追っかけてきた。 今回の写真も同じ。とにかく勘三郎さんが 演じる歌舞伎ではなくて、 勘三郎さん自身を撮り続けた」と語ります。 その言葉を証明するのが、 「野田版 研辰(とぎたつ)の討たれ」の写真。 撮影当日、舞台の横から奈落から撮影する篠山さんに 「篠山さんあそこで待ってて、次あそこから撮って」 と次々と声をかける勘三郎さん。 そしてそれに答えるように所狭しと走り回る篠山さん。 撮影終了後、役者でもないのに 篠山さんの声が涸れていたのが印象的でした。 そしてあがってきた写真はと言うと、 これまた客席からは決して見られないもの。 写真集の最後を飾るにふさわしい写真となりました。 この写真をたまたま見たのが、 「研辰の討たれ」の演出をした野田秀樹さん。 客席から見る舞台を計算する演出家、その目の前には、 計算上あり得ない場所から写された舞台の写真。 「演出家としてこの写真どう思う? 掲載しても大丈夫かな?」 と勘三郎さんに聞かれた野田さんは、 「すごいね。写真が良ければいいよ」 とあっさりひと言。 役者も写真家も演出家も「これはレベルが違う」 と思わされた瞬間でした。 「偶然撮れた」と語る篠山さんですが、 この写真集のインデックスを見ればわかるように、 ゴールデンウィークもクリスマスイブも 休み無く撮影しています。しかも嬉々として!(笑) その姿はまさに密着、 これは偶然などではなくて“必然”的に撮れた写真だ と痛感しています。 そして最後に忘れてはならないのが、 井上嗣也さんによるブックデザイン。 手に取っていただいた方は おわかりになると思いますが、 この写真集、左開きになっているのです。 通常日本の本は、右開き。 伝統を重んじる歌舞伎界で左開きの写真集なんて、 実は画期的なことなんです。 井上さんに左開きの写真集を提案された時、 「歌舞伎ですから、それは無理です」 とすこしひき気味だった編集サイド。 ところがそのアイディアを勘三郎さんに伝えたところ 「いいねぇ。それでいきましょう」。 ニューヨークで大成功をおさめた 平成中村座をはじめ、 常に歌舞伎界に新しい風を吹き込み続け、 「外国の方にももっと歌舞伎を見ていただきたい」 と言い続けている勘三郎さんならではの英断。 と言うか、歌舞伎を見ている私たちのほうが、 ずっと保守的だと気づかされました。 今回の写真集は、中村勘九郎が中村勘三郎に 生まれ変わる前後10か月を写真家篠山紀信が追った 「奇跡の10か月」の軌跡です。 すでに襲名歌舞伎をごらんになった方も、 まだごらんになっていない方も 「新しい歌舞伎が生まれる瞬間」の 目撃者となってください。 ****************************************
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2005-07-13-WED
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