担当編集者は知っている。


『失踪日記』
著者:吾妻ひでお
価格:1,197円(税込)
発行:イースト・プレス
ISBN:4872575334
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「全部 実話です(笑)」(吾妻(帯の言葉より)

「この本、すごいよ!
 吾妻ひでおが失踪して、首つりしようとして、
 失敗して、ま、いっかーって、
 その場で寝ちゃったりしてるんだよぉー」
と、話を聞き、衝撃でした!
吾妻ひでおといえば、伝説のマンガ家。
キュートでシュールな不思議ギャグが特長。
「不条理漫画」と称されるジャンルを
生み出したのもこの方だし、
デビュー当時は「週刊少年チャンピオン」や
「週刊少年サンデー」に連載を持ち、
代表作「不条理日記」はSF界の歴史に残る1冊に。

それほどのマンガ家が、
どうして失踪・自殺未遂・ホームレス生活・肉体労働???
本屋で売り切れ続出のため、探し回ってようやくゲット。
読んでみると、過酷で残酷で絶望的な内容なのに、
飄々としているため、読後感が明るい。
視界が晴れ晴れとひらけたような気さえする!

このすごい本が生まれた経緯を、
担当編集者の堅田さんにお伺いしました。

(「ほぼ日」弥絵)

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担当編集者
/イースト・プレス編集部 堅田浩二


ほぼ日 『失踪日記』、ものすごく面白かったです!
堅田 ありがとうございます。
吾妻さんのターニング・ポイントとなる作品に
関われたことを、とても光栄に思っています。
当初は、かつてのファンの人しか
読んでくれないかな
と心配していたんですが、
男女問わず幅広い年代の方に
読んでいただいているようで、
本当にありがたいことです。
ほぼ日 吾妻ひでお先生は、
わりとマニアックというか、
漫画好きの方の間で評価が高い作家
というイメージがあったと
思うんですけれど、
この作品は非常に読みやすかったです。
堅田 本人はマニアックな道を、
あえて進みたがるほうなんですが(笑)。
でももともと根底にポップさと
エンターティンメント性を兼ね備えている方
なんですよね。
サービス精神旺盛というか。
絵柄も丸っこくてかわいいですし。
「漫画は楽しんでもらってナンボ」
というのを、強い信念、プロ意識として
持ってらっしゃるんです。
ですから『失踪日記』は結構ヘビーな‥‥
すでに読まれた方はご承知だと思いますが、
事実だけ見ると、
相当にショッキングな内容でしょう?
人気絶頂だったのに
いきなり仕事を捨てて失踪して、
山に籠もって、ホームレス生活をして、
家に戻ったと思ったらまた失踪して、
肉体労働を始めて、
しまいにはアルコール依存症で
病院に送られるという。
ほぼ日 それが全部、
先生自身の実話というから衝撃です。
堅田 でもどこかユーモラスに描かれてるし、
これはこれで楽しいのかも、
と、思っちゃいますよね(笑)。
人間って逃げてもなんとかなるんだなぁと。
他人事だから笑えるのかも知れませんが、
描いている吾妻さん自身も、
かつての自分を客観的に見ている。
だから余計なヘビーさを
感じさせないんだと思います。
それは吾妻さんが弱さを抱えながらも、
なんだかんだいって強い部分も持っている、
であるがゆえに為し得ることですよね。
だから読んでいて元気が出る。
そこがすごいと思ったんです。
内容の衝撃さもさることながら、
編集者としてはそうした部分が
さらに衝撃でした。
ほぼ日 もともとどういう経緯で、
出版に至ったんですか?
堅田 とある会合で知り合った方から、
連絡を頂いて。
「自分は吾妻ひでおファンの
 メーリングリストに参加しているが、
 なんでも吾妻さんの原稿が
 単行本にならなくて困っているらしい」と。
それが後の『失踪日記』の原型でした。
でも連絡をもらった時点では正直なところ、
本にするのは難しいだろうなぁと。
ほぼ日 どうしてですか?
堅田 やはりそのころは
「吾妻ひでお=ちょっと過去の人」
っていうイメージが、
世間的にもあったと思うんですね。
実際、何年か前に出された近作も
売上げは思わしくないようでしたし、
線も荒れていたしで。
それは後で、アルコールに依存していたころの
作品だったと知ることになるんですが‥‥。

ほぼ日 『失踪日記』によると、その作品は
「アル中病棟」の時期に描かれたものだった
堅田 そうです。
でもその時はまだ、
そんなことは知りませんでしたから。
とはいえ興味を惹かれたので、
吾妻さんに連絡をとってみたんです。
自分も小学生のころからの吾妻ファン、
アズマニアだったので。
ほぼ日 そうだったんですか。
堅田 そうだったんです。
考えてみたら不思議な巡り合わせですよね。
それで聞いてみたら
「雑誌連載分と描き下ろしで、
 すでに原稿は本一冊分くらいあるが、
 出版してくれる版元がない」と。
やはりどこの出版社も、
最近の売上げのデータを元に判断して、
刊行に二の足を踏んでいたみたいでした。
でもとにかく原稿をお借りして
読んでみたら‥‥
もうびっくりしましたね。
本当に腰を抜かすほど面白かった。
読むほどにひきこまれ、
吾妻さんの非日常を
追体験することができたんです。
噂には聞いていた失踪時のことが、
赤裸々に描かれている。
でも暗くないし笑えるし、
絵も全然荒れてないし、
全盛期と同等、むしろそれ以上の、
本当に素晴らしい作品で。
私小説的な内容ながら、
吾妻さんのことをまったく知らない人でも、
もっといえば、
普段、漫画を読まれない方でも楽しめる、
普遍性のある内容になっている。
おおげさでなく、震えがきたんです。
読んでいて。
ほぼ日 これを本にしないわけにはいかない! と。
堅田 はい。
とはいえやはり、
社内でも売上げを不安視する声が
無いでもなくて。
だから
「過去のデータより、
 とにかくこの作品を読んでほしい。
 本当に傑作だから。
 ここでこの本を出さなかったら、
 一生後悔することになる」
と言って説き伏せました。
ほぼ日 おお!
堅田 でも自分も普段、
データを根拠に人の企画に
ダメ出ししたりしてるから、
全然偉そうなことは
言えないんですけど(笑)。
もちろん最終的には販売部のほうでも、
原稿を熟読して、充分納得した上で
販促活動をしてくれました。
ほぼ日 装丁も素晴らしいですよね。
ずっと取っておきたくなる本です。
堅田 鈴木成一デザイン室にお願いしました。
こちらの意を充分にくんでいただき、
そしてそれ以上の装丁を施してくださって。
ほぼ日 どのような意図をお持ちだったんですか?
堅田 さっきお話したことと被るんですが、
『失踪日記』はヘビーな体験を
描かれているものの
作品そのものは吾妻さん一流のユーモアと
エンターティンメント精神にあふれており、
読後感は悪くない、と。
読み応えがあるけれど、
重い印象ではなく手に取りやすい
という相反する要素を折衷して
表象していただければ‥‥
みたいなお願いを最初にしたと思います。
それで
「重すぎず、かといって軽すぎず‥‥」
とか曖昧なことを言っていたら、
鈴木さんは「どっちなんだ(笑)」と。
ほぼ日 なかなか困難なリクエストですね(笑)。
堅田 でも鈴木さんのすごいのは、それに続けて
「いや、わかるけどね」と
言われたところで。
それこそ、おおっ!と思いました。
まさに一を聞いて十を知る、だと。
あと印象に残っているのが、
最初鈴木さんに
あらかじめ原稿を読んで頂いて
その後で改めて打ち合わせを
させて頂いたんですが、
そのとき開口一番「面白かったよ」と
いわれたんです。
あ、この本は絶対いい本になるな、
と確信した瞬間でした。

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第34回漫画家協会大賞を受賞。
刊行2カ月めにし第6刷、累計14万部突破。
雑誌「ダ・ヴィンチ」5月号、
糸井重里氏、秋山具義氏、編集長が
選考員を務める
「この本にひと目惚れ」のコーナーでも、
大賞に選出されました!


『失踪日記』
著者:吾妻ひでお
価格:1,197円(税込)
発行:イースト・プレス
ISBN:4872575334
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2005-05-16-MON

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