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| ほぼ日 |
『失踪日記』、ものすごく面白かったです!
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| 堅田 |
ありがとうございます。
吾妻さんのターニング・ポイントとなる作品に
関われたことを、とても光栄に思っています。
当初は、かつてのファンの人しか
読んでくれないかな
と心配していたんですが、
男女問わず幅広い年代の方に
読んでいただいているようで、
本当にありがたいことです。
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| ほぼ日 |
吾妻ひでお先生は、
わりとマニアックというか、
漫画好きの方の間で評価が高い作家
というイメージがあったと
思うんですけれど、
この作品は非常に読みやすかったです。
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| 堅田 |
本人はマニアックな道を、
あえて進みたがるほうなんですが(笑)。
でももともと根底にポップさと
エンターティンメント性を兼ね備えている方
なんですよね。
サービス精神旺盛というか。
絵柄も丸っこくてかわいいですし。
「漫画は楽しんでもらってナンボ」
というのを、強い信念、プロ意識として
持ってらっしゃるんです。
ですから『失踪日記』は結構ヘビーな‥‥
すでに読まれた方はご承知だと思いますが、
事実だけ見ると、
相当にショッキングな内容でしょう?
人気絶頂だったのに
いきなり仕事を捨てて失踪して、
山に籠もって、ホームレス生活をして、
家に戻ったと思ったらまた失踪して、
肉体労働を始めて、
しまいにはアルコール依存症で
病院に送られるという。
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| ほぼ日 |
それが全部、
先生自身の実話というから衝撃です。
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| 堅田 |
でもどこかユーモラスに描かれてるし、
これはこれで楽しいのかも、
と、思っちゃいますよね(笑)。
人間って逃げてもなんとかなるんだなぁと。
他人事だから笑えるのかも知れませんが、
描いている吾妻さん自身も、
かつての自分を客観的に見ている。
だから余計なヘビーさを
感じさせないんだと思います。
それは吾妻さんが弱さを抱えながらも、
なんだかんだいって強い部分も持っている、
であるがゆえに為し得ることですよね。
だから読んでいて元気が出る。
そこがすごいと思ったんです。
内容の衝撃さもさることながら、
編集者としてはそうした部分が
さらに衝撃でした。
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| ほぼ日 |
もともとどういう経緯で、
出版に至ったんですか?
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| 堅田 |
とある会合で知り合った方から、
連絡を頂いて。
「自分は吾妻ひでおファンの
メーリングリストに参加しているが、
なんでも吾妻さんの原稿が
単行本にならなくて困っているらしい」と。
それが後の『失踪日記』の原型でした。
でも連絡をもらった時点では正直なところ、
本にするのは難しいだろうなぁと。
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| ほぼ日 |
どうしてですか?
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| 堅田 |
やはりそのころは
「吾妻ひでお=ちょっと過去の人」
っていうイメージが、
世間的にもあったと思うんですね。
実際、何年か前に出された近作も
売上げは思わしくないようでしたし、
線も荒れていたしで。
それは後で、アルコールに依存していたころの
作品だったと知ることになるんですが‥‥。
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| ほぼ日 |
『失踪日記』によると、その作品は
「アル中病棟」の時期に描かれたものだった
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| 堅田 |
そうです。
でもその時はまだ、
そんなことは知りませんでしたから。
とはいえ興味を惹かれたので、
吾妻さんに連絡をとってみたんです。
自分も小学生のころからの吾妻ファン、
アズマニアだったので。
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| ほぼ日 |
そうだったんですか。
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| 堅田 |
そうだったんです。
考えてみたら不思議な巡り合わせですよね。
それで聞いてみたら
「雑誌連載分と描き下ろしで、
すでに原稿は本一冊分くらいあるが、
出版してくれる版元がない」と。
やはりどこの出版社も、
最近の売上げのデータを元に判断して、
刊行に二の足を踏んでいたみたいでした。
でもとにかく原稿をお借りして
読んでみたら‥‥
もうびっくりしましたね。
本当に腰を抜かすほど面白かった。
読むほどにひきこまれ、
吾妻さんの非日常を
追体験することができたんです。
噂には聞いていた失踪時のことが、
赤裸々に描かれている。
でも暗くないし笑えるし、
絵も全然荒れてないし、
全盛期と同等、むしろそれ以上の、
本当に素晴らしい作品で。
私小説的な内容ながら、
吾妻さんのことをまったく知らない人でも、
もっといえば、
普段、漫画を読まれない方でも楽しめる、
普遍性のある内容になっている。
おおげさでなく、震えがきたんです。
読んでいて。
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| ほぼ日 |
これを本にしないわけにはいかない! と。
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| 堅田 |
はい。
とはいえやはり、
社内でも売上げを不安視する声が
無いでもなくて。
だから
「過去のデータより、
とにかくこの作品を読んでほしい。
本当に傑作だから。
ここでこの本を出さなかったら、
一生後悔することになる」
と言って説き伏せました。
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| ほぼ日 |
おお!
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| 堅田 |
でも自分も普段、
データを根拠に人の企画に
ダメ出ししたりしてるから、
全然偉そうなことは
言えないんですけど(笑)。
もちろん最終的には販売部のほうでも、
原稿を熟読して、充分納得した上で
販促活動をしてくれました。
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| ほぼ日 |
装丁も素晴らしいですよね。
ずっと取っておきたくなる本です。
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| 堅田 |
鈴木成一デザイン室にお願いしました。
こちらの意を充分にくんでいただき、
そしてそれ以上の装丁を施してくださって。
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| ほぼ日 |
どのような意図をお持ちだったんですか?
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| 堅田 |
さっきお話したことと被るんですが、
『失踪日記』はヘビーな体験を
描かれているものの
作品そのものは吾妻さん一流のユーモアと
エンターティンメント精神にあふれており、
読後感は悪くない、と。
読み応えがあるけれど、
重い印象ではなく手に取りやすい
という相反する要素を折衷して
表象していただければ‥‥
みたいなお願いを最初にしたと思います。
それで
「重すぎず、かといって軽すぎず‥‥」
とか曖昧なことを言っていたら、
鈴木さんは「どっちなんだ(笑)」と。
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| ほぼ日 |
なかなか困難なリクエストですね(笑)。
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| 堅田 |
でも鈴木さんのすごいのは、それに続けて
「いや、わかるけどね」と
言われたところで。
それこそ、おおっ!と思いました。
まさに一を聞いて十を知る、だと。
あと印象に残っているのが、
最初鈴木さんに
あらかじめ原稿を読んで頂いて
その後で改めて打ち合わせを
させて頂いたんですが、
そのとき開口一番「面白かったよ」と
いわれたんです。
あ、この本は絶対いい本になるな、
と確信した瞬間でした。
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