担当編集者は知っている。


『勉強ができなくても恥ずかしくない』
全3巻 (ちくまプリマー新書)
著者:橋本治
価格:714円(税込)
発行:筑摩書房
ISBN:4480687068
【Amazon.co.jp】はこちら


『世にも美しい数学入門』、
『ちゃんと話すための敬語の本』などの
目を引くタイトルと、和柄っぽい装丁が
気になる「ちくまプリマー新書」。
今年初めに登場した、新しい新書のシリーズです。
「中高生から読める新書」とのことですが、
どれも、大人の方にぜひ!
のおもしろい本ばかりです。

            (「ほぼ日」さいとう)

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担当編集者
/筑摩書房プリマー新書編集部 吉崎宏人


本書は、「ちくまプリマー新書」という
新書シリーズの中に入った「小説」です。
ふつう、新書に小説というのは珍しい。
編集部も、べつに「なんでもいいや」と
思って出したわけではありません。
奇をてらって小説を入れたわけでも、
「新書にはあまり小説は入っていないものだ」
ということを知らなくて出したのでもありません。

ちくまプリマー新書は、
「中高生から読める新書」を
目指して創刊されたものですが、
その中には「教育」というテーマも、
切実に入ってきます。
『勉強ができなくても恥ずかしくない』という小説は、
小説という形でこそ最も効果的に成立した、
教育論の本なのです。

お話はぜんぶで3巻で、主人公はケンタくん。
彼が小学校に入学して、高校を卒業するまでの
物語です(エピローグとして、「大人になって、
作家になったケンタくん」も出てきます)。
お察しの通り、モデルは橋本治さんご自身です。
読者は、ケンタくんの目線で、
子どもから思春期にかけてのことを追体験します。
ケンタくんは、目の前のことを、じっくり考えて
自分の頭で理解しなければ、動き出せません。
そのために、小さいころは「トロい」子で、
ケンタくん自身も「自分はなにをやってもだめだ」
と思っています。

でもケンタくんは決して弱音を吐きません。
誰も批判しません。
ぜんぶ一人で引き受けて、一人で考え続けます。
読者は何度も、ケンタくんとして傷つき、
ケンタくんを救ってやりたくなります。
でも同時に、ケンタくんを傷つけたのは
自分かもしれない、と気づいて
考え込んでしまうのです。

    *   *   *

教育論に限らず、政治論も経済論も、
「あいつと差がつくセールス術の本」も、
「外人より上手に英語を話す本」も、
「勉強しない奴ほど頭がよくなる本」も、
そのときは蒙を啓かれ身についた気がして
「ああ、ありがたいなあ」と思っていても、
しばらくするとすっかり中身を忘れてしまうことが
殆どではないでしょうか
(編集者の私が言っては身もふたもありませんが)。

でも『勉強ができなくても恥ずかしくない』は、
たとえストーリーをすっかり忘れてしまったとしても、
ケンタくんになって感じた感覚は、
いつまでも身体の中に溶け込んで残ります。

それは、もし自分が子どもなら、
よく生きるために自分で考える力になるでしょうし、
ケンタくんぐらいの子どもと接する大人なら、
彼らの気持ちをちゃんと考えるヒントになるはずです。
だからこれは、
小説という形式以外には考えられなかった、
「子どものことを本当に考える本」なのです。

小説の力って、やっぱすごいです。

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『勉強ができなくても恥ずかしくない』
全3巻 (ちくまプリマー新書)
著者:橋本治
価格:714円(税込)
発行:筑摩書房
ISBN:4480687068
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2005-04-13-WED

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