担当編集者は知っている。

今の子供がどんなことを考えてるのか、
自分が子供を持ったとき、
今の世の中で、
はたしてちゃんとまっすぐ育ってくれるのか、
漠然とした不安を抱えているかたに読んでもらうと、
ちょっと安心してもらえるかもしれない、
そんな本です。
子供は、やっぱり元気いいです!


『子供力! 詩を書くキッズ』
著:増田修治と子どもたち
出版社:弓立社
本体:1450円+税
ISBN4896671066


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担当編集者/弓立社 宮下百合子

きっかけは今年1月30日の朝日新聞、
「教室に笑いを」という記事でした。
増田先生のユーモア詩の指導と
小学生の詩が紹介されていました。
こんな詩です。

   *

『お母さんとの会話』 北田 梓(6年)


テレビで活き作りの魚のことをやっていた。

・・・それを見てママが

「あの魚にビールを飲ませたらどうなるだろうな」

と言った。

「出てきちゃうんじゃない」とこたえた

そして二人で笑った。

久しぶりにママと会話したのでうれしかった。

そしたら突然涙がでてきた。

ママはいつも疲れていてあまりしゃべらないから

これだけの会話でもとてもうれしかった。

その夜、私はふとんの中で

なきながら魚のことを考え

笑いながら寝た。

   *

ふだん、詩への関心はなく、まして子供の詩?
とも思ったのですが、惹きつけられて、
少し迷いながら連絡をしたのです。
増田先生からはすぐ、OKの返事とともに、
たくさんの詩集や学級通信が送られてきました。

うんこ、おなら、おちんちんのオンパレードかと思うと、
オシリにバラをさすパパがいます。
クラス全員が書いていますし、
4年間のものですから、あらゆるタイプの子供がいます。
また、そのお父さんお母さんやきょうだいがいます。
活き活きとしていて、
オイオイと突っ込みをいれながら楽しめたので、
これは当たりだねと思い、出版を決めました。

小学生の詩に触れる機会が
皆さんあまりないと思いますので、
ちょっと紹介してみましょう。

   *

『ぼくのお母さんは』 和智 海人(4年)

ぼくのお母さんは、

短気で短足です。

ぼくもそうだけれど・・・。

お母さんは

ソフトボールをやっています。

結構うまいけど、

やっぱり短気で短足です。

お母さんはホントに

た・ん・き

た・ん・そ・く。

   *

なかなか絶妙なフォロー。
そして、たんき、たんそくの繰返しがいいテンポです。
4年生というのは、
1〜3年生と5〜6年生にはさまれた
微妙な時期のようです。
何も考えていない虫のような幼年期から
やがて思春期を迎える
ターニングポイントなんだそうです。
3年生から6年生までの詩をずーっと見ていくと、
そんな変化を感じとれました。
もっともっと、いろんな発見をしながら編集したのです。

   *

『先生ないしょだよ』 浅田慧子(5年)

先生、ないしょの話だよ。

ぜったいないしょだよ。

私はちいさいときに、顔に金色の毛が生えていたんだよ。

本当に金色なんだよ。

ようちえんの時にとこやさんに行ったら、

「あら、モモみたいね」と言われて

すごくはずかしかったんだ。

今日モモを見たら

本当に金色の毛がはえていたので、

私の金色の毛って、

本当にモモみたいだなと思ったよ。

   *

『お母さんが「なぐる」と言った』 石井裕之(4年)

ぼくが

お母さんの近くにいくと

あと10cmで抜かせることがわかった。

そしたらお母さんが、

「背を抜かしたらなぐる!」

と言った。

だからぼくが、

「じゃあ、逆に小さくなったら・・・?」

と聞いた。

すると今度は、

「つぶしてやる!」

と言った。

ぼくは、どうすればいいのか

わからなくなった。

   *
   
『お母さんのアゴ』 東 宇宙(5年)

お母さんのアゴは、

とっても気持ちいい。

いつさわっても

気持ちいい。

お化粧の時が一番気持ちいい。

ぼくがアゴをさわったら、

下を向いて、

手をはさんできた。・・・

   *

ふつうにおしゃべりしているみたいな
のびやかさで書いています。
先生がどういうふうに子供と付き合っているのか
彷彿とします。
なんか安心しきって書いている感じです。
楽しい詩が一杯なのですが、
「今どきの」子供らしく、
親の離婚や不和などの事情も背後にほの見えます。
難病の子もいます。
よくよく注意して読まないと分かりません。
それでも、ユーモアのある詩を書き、
クラスや家庭で受けることで、
どんどん書けるようになっていきます。

その詩が書けるようになる過程も、
第2部の<授業ライブ>でヴィヴィッドに伝わります。 

   *

また先生は、自分が生まれたときの話を
親に聞き取りをさせたり、
父母の系図をたった10代前までさかのぼると
千人以上になることを発見させたり、
脳死移植を親やクラスで話しあう授業も試みています。
そこで子供たちは、自分の命が、
ポツンと、ただ自分だけのものではないことを
実感します。

また、脳死移植ってよいことだろうけど、
自分や家族のはあげたくない、
そんな誰も解くのが難しい問題を、
大学生もびっくりしたくらい
一生懸命考えたりします。

これは、パート2として
授業ライブ風に紹介することにしました。

柔らかみを出すよう、
全篇にカットをたくさん入れました。
20才の学生(セツモードセミナー)に頼みました。
若い子なら感覚が近いかなと思ったのですが、
もう全然忘れてしまっていたので新鮮、
と言ってました。

   *

この本が出る1カ月前の9月に、
増田先生は児童詩教育賞を受けました。
また、10月29日に本が出てすぐ、
11月15日に、NHK第1の「スタジオパーク」で
授業風景と詩が取材放映されました。

どれも出版以前に決まったこと。
先生と子供たちの力です。

その後、朝日新聞埼玉版に出ましたし、
埼玉TVの出演も決まりました。
この辺から、本の力も加わってきたかもしれません。

   *

本のタイトルは、初めは
<笑う教室  詩を書くキッズ>に決めていました。
増田先生はじめ、皆気に入っていました。
でも、子供たちが、
予想以上に書いたり考えたりするのが
好きなことを発見し、
それは凄いパワーだと思い始めました。
そこで、最後の最後になって、
<子供力!  詩を書くキッズ>としました。
デザインを印刷所に入れるその日でした。
赤瀬川原平さんの『老人力』の感じも借りています。

そう、こんな子供たちのパワーを信じないでどうする! 
という思いをこめました。
私たちの未来は、こんな子供たちが背負うのですから。

周りには意外な波紋が広がっています。
この本を読んで、50才の男なのに泣いたといってきたり、
子供を持つことを決めた30才の女性もいます。
もっと子供たちの魅力が広がるといいな、
と思っています。

2001-11-26-MON

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