担当編集者は知っている。

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『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』
著者:鴻上尚史
定価:本体 1,400円/230ページ


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『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』

担当編集者/講談社 田中浩史さん

野田秀樹さんとともに、1980年代から日本の小劇場界
(こうした言葉がいま適切かどうかよくわかりませんが)
をリードしてきた鴻上尚史さんの変わらないテーマは、
『どう生きるか』ということです。
そして今回の本のテーマは、
「もっとよりよい人生を生きるため」の方法について、
です。

この本はもともと、
「なぜ、みんなもっとメイクやファッションと同じように、
自分の感情や声、体、言葉に気をつけないんだろう?
もう少し気をつけたらみんなもっと魅力的になれるのに」
という鴻上さん自身の長年の疑問から生まれました。
たとえば街を歩いていると、
ファッションはばっちり決まっているのに、
「いい服着てるんだけどなんかなあ・・・」
という人はいませんか?
たとえば、みんなの前で実際は
すごくいい話をしているのに、
たいした話をしていないように感じる人はいませんか?
そうした人たちは、自分の魅力の出し方を
よく知らない人です。
反対に、特別美男美女というわけではないのに、
おもわず惹きつけられてしまうような人、
あなたの周りにいませんか?
その人は、ちゃんと自分の魅力の出し方を
知っている人です。

もちろん天性の魅力を
なんの努力もなく出せる人もいるでしょう。
でもそうした人は、たとえて言えば、
勉強しなくても東大に行けるような人、
練習しなくても100メートルを10秒台で走れる人、
そんなにたくさんはいません。
そしてもし、「私、魅力ないから」
と思っている人がいたら、
それはその人の魅力がないのではなくて、
魅力の出し方を知らないだけなのです。
「魅力的な人になったほうが自分の人生がよくなるなら、
 魅力の出し方を知っていたほうが絶対いいじゃない」
この解答が一冊にまとまりました。

本では、
「では実際に魅力的になるにはどうすればいいのか」を
「感情」、「声」、「体」、「言葉」の
4つのパートに分けて
できるだけわかりやすく、実践的に、
そして鴻上さんならではの、
ユーモアも織り交ぜて解説されています。
タイトルも今回はわかりやすくということで、著者曰く、
「おもわず赤面してしまうほど」やたらに長くて
「そのまま」というものにさせていただきました。
(あまり長くて僕自身よく言い間違えるのが困りものです)

でも内容はやっぱり結構深いです。
できれば読みながら実際にやってみてください。
たぶん、読む人それぞれに、
自分についていろいろな発見があるはずです。

最初にこの本のテーマは、
「よりよい人生を送るため」と書きましたが、
じつはもうひとつのテーマが
「自分のことをきちんと知ること」です。
鴻上さんはここであえて
「教養」という言葉を使っています。
教養とは、
「モノを知っていてそれを有効的に創造的に使える」
ことだとすれば、
自分についての「教養」が足りなかったなあと思う人は、
結構多いのではないでしょうか。
(もっともそれ以前に
「自分についての教養なんて考えたこともなかったよ」
という人が大部分でしょう。
僕もいままでまったく考えたことありませんでした)

一時ほどではないですが、いまでもよく、
「自分探し」ということが言われます。
その背景には、いまの自分に対して
漠然と感じている不満があるような気がします。
「いまの自分は本当の自分じゃない。
 本当の自分は別にいるんだ」
でもこの本でのメッセージは、
「そんなこと言う前にさ、まずもっとよく自分を知ろうよ」
ということです。
「知る」ことははじめの一歩なのです。きっと。

最後にちょっとだけ私事を。
僕が鴻上尚史の名前をはじめて知ったのは、
15年前のこと。
ギューギュー詰めの下北沢ザ・スズナリで
体育座りをしながら観た第三舞台の
『もうひとつの地球にある水平線のあるピアノ』
という一度ではとても覚えられないタイトルの芝居は、
それまで観劇体験といえば、小学校の授業で観に行った
『モモと時間泥棒』くらいしかなかった僕にとって、
「芝居っておもしろいんだ!」という(大)発見とともに、
ほんとに衝撃的なものでした。
それから鴻上さんは僕にとって片思い?の人になりました。
そうした人の本を担当できるのは、
まさに編集者冥利につきるってもんです。
まあ実際には、こんな幸運は滅多にないんですが。

2000-12-27-WED

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