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最新のオススメ本
『できればムカつかずに生きたい』

著者:田口ランディ
出版社:晶文社
本体価格:1400円(税別)
ISBN:4794964560
284頁 19cm(B6サイズ)
2000年10月20日出版
読書の秋ですね。(もう冬か?)
田口ランディさん、いいですよ〜。どれもこれも。
その中から先日でたエッセイ集をご紹介します。
1冊読むと、はまってランディさんの本を
かたっぱしから読んでしまうというくらい、
惹きこまれること請け合い。
思いきりのいい文章に笑わせられたり、
頷いたり、時にはぢーんとすることも。
すっごく真面目な問題を扱ってるんだけど、
それが、お説教やお節介では全くない。
読み終えると、なぜか元気が出る本です。
詳しいことは担当編集者の安藤さんにお願いしまーす。
ツルミ
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担当編集者:晶文社編集部 安藤聡さん
今回ご紹介させていただくのは、田口ランディさんの
『できればムカつかずに生きたい』というエッセイ集です。
「ほぼ日」の読者ならご存じの方も多いと思いますが、
田口ランディさんは、毎週一回
「田口ランディのコラムマガジン」という
メールマガジンをインターネットで配信されている方です。
このメールマガジンがたいへんな人気で、いまでは
6万人を超える読者の方々に読まれています。
私たち出版社が発行するへたな雑誌なんかより
よほど大きな数字です。
また、コラムだけではなく小説も書かれていて、
幻冬舎から出された長編小説『コンセント』と、
それに続く『アンテナ』はたちまちベストセラーになり、
いま最も注目を集める新進作家となりました。
晶文社からの3冊目のエッセイ集となる
『できればムカつかずに生きたい』は、
ひきこもりの末亡くなったお兄さんのこと、
犯罪が多発するという17歳という年齢について、
犯罪被害者たちは恨みつらみをどう晴らせばよいか、
プチ家出をする少女たちの心情とは、
いじめの本質ってなんだろう?……などなど、
主に社会で起きている事件、心の病、
家族間・世代間の軋轢などを題材に、
ランディさんがそれらについてどう感じ、
どう考えたかがまとめられています。
私たちが、ふだんテレビのニュースや新聞・雑誌の
記事などで目にしている事件や問題に対して、
第三者的な立場からではなく、
「自分だったらどう考えるだろうか」といった
当事者としての立場から発言されているのですが、
その説得力たるやたいへんなもので、
ランディさんの意見を読むと、
テレビのコメンテーターはもとより、
なにかコトがあるたびにひっぱり出される
精神科医、評論家などのいわゆる「識者」たちの意見など、
うすっぺらなものに見えてきます。
ランディさんは、「あたしは普通の主婦ですから」と
自分を称して言いますが、これまでの経歴は
「普通の主婦」と言い切ってしまうには
ずいぶん波乱に満ちたものです。
本書のなかのエピソードにも出てきますが、
猛烈に酒癖が悪く酔うと暴れる父親のおかげで
家庭内のごたごたが絶えず、お兄さんはひきこもりで
家庭内暴力を繰り返した末に衰弱死をとげています。
そうした家庭環境からのがれて十代から自活、
新聞配達所で住み込みで働いたり、
銀座でホステスをやったり、
編集プロダクションを起こし
がむしゃらに働いたりしたのち、
ものを書く仕事に専念すべく会社を辞め、
兄の死、高齢での出産、母親の死と
立て続けに起こる家族の離散と再生を経て、
インターネットに一文にもならないコラムを書き始め、
それが次第に数多くの読者を獲得していき、今日にいたる。
その間出会ってきたさまざまな困難と
悪戦苦闘してきた体験が、ランディさんに
生きていくうえで必要な聡明な判断力や
智恵を身につけさせたということは言えると思います。
実際ランディさんが書くいろいろな事件に対する見解は、
自分の身体を使って体当たりで得たものならではの
リアリティがあります。
ただ、ランディさんの書くものが、よくある
「人生経験豊富なオジサン・オバサンの人生訓」と
決定的に違うのは、
「世界はこうなっている」
「人間とはこういう存在なんだ」という世界観が、
その洞察の底にあるからだと思います。
そうした世界に対する理解
(あるいは理解しようという意志)が根本にあって、
その世界観を反映して個々の現象に対する判断が出てくる。
安易な対症療法をほどこすのではない、
根源的なところにさかのぼって
ものを考えようという姿勢がそこにはあります。
よくある“世の中にもの申す”的なご意見コラムと
決定的に違うのは、その点だと思います。
私の好きな、とある思想家の文章にこんな記述があります。
正確な記憶ではないのですが、
自分がものを書いたり考えたりするのは、
その成果があとから来る人間にとって
あたりまえのものとして受け取られることを
願ってのことだ、というような主旨です。
ランディさんの書かれるものを読んでいると、
私はその思想家の言葉を思い出します。
ランディさんがこれまで生きてきた過程で出会った、
さまざまな困難に対する悪戦苦闘の記録、
その末に手に入れたものの考え方、見方は、
同じように悩み考えるひとびとが
困難を乗り越えるよき手がかりとなるにちがいありません。
*
この本の企画が動き出す少し前の6月、
大阪で行なわれたとあるイベントで、
ランディさんのサイン会を催したことがありました。
そこに来ていた、名刺から判断するに
超キャリアの30代とおぼしき女性が
「私、田口さんが書かれるもので毎日救われています」
と真顔でつぶやいていた、あのときの真剣な目を
私は忘れることができません。
あのとき私が感じた複雑な思いを
ここで説明することはできないのですが、
それに対するひとつの答えがこの本なのだと
自分では思っています。
本を作る作業も、
また世界とつながっているのだということを、
職業人としての私にあらためて感じさせてくれた
ランディさんに、深く感謝したいと思います。
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