担当編集者は知っている。

最新のオススメ本

「アイドル 1970 - 2000」



撮影:篠山紀信
出版社:河出書房新社
本体価格:4900円(税別)
ISBN:4309264271
30cm(A4サイズ)
2000年10月20日出版




担当編集者:河出書房新社編集部 安島真一

20世紀末の30年、500人余のアイドルを
512ページに集大成した画期的写真集


本書には、1970年から2000年に至る30年間に
篠山紀信さんによって撮影された写真
約660点が収録されています。
その被写体となった人物はなんと500人以上!!
これまでにさまざまな写真集が出版されてきましたが、
一人の写真家の名前で、文字通り“アイドル”たちが
集大成された書籍は、まさに前代未聞といえるでしょう。

山口百恵、郷ひろみ、小林旭、キャンディーズ、
ピンクレディー、アグネス・ラム、キャロル、
長嶋茂雄、松田聖子、おニャン子クラブ、
ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、坂本龍一、
ビートたけし、宮沢りえ、松たか子、安室奈美恵、
モーニング娘。、きんさんぎんさん、椎名林檎……。
ページを繰るごとに、
それぞれの時代に輝いていた人々が
次々に姿をあらわし、見る者を圧倒します。


あらゆる時代、あらゆるメディアの記憶を開放する
起爆装置『アイドル』


しかし、本書のなかには、
今回のために特別に撮影された写真はありません。
それはあくまでも“アイドル”が、
時代とメディアの奇蹟的な出会いのなかから
生まれてくる存在であるからです。

篠山さんはデビュー以来、
つねにメディアと積極的に関わり、
アイドルたちが産出/消費されていく
生々しい現場に立ち会ってきました。
本書に収録された写真のすべてには、その一回限りの、
かけがえのない出会いが刻み込まれています。

『週刊少年マガジン』『明星』『anan』
『週刊プレイボーイ』『GORO』『週刊朝日』
『CAPA』『写楽』『SPA!』『週刊現代』
『FLASH』『Friday』『BRUTUS』をはじめとする
多数の雑誌に封印された黄金時代の記憶が
今まさにここにひらかれたのです。


アイドルとは“過去”だけでなく、
“未来”に属する人々の理想


ラテン語の「イドラ(idola)」を語源とする
「アイドル(Idol)」は、
もともとはイデア(真実)に対して
幻影や虚像を表す語を意味しました。
それが時代を経て、崇拝される対象となる
彫像や絵画などの「偶像」を示すようになり、
さらには心酔される人や、人気者の意味をもちはじめ、
いわゆる「アイドル」を指す言葉として
使われるようになりました。

本書でも、そのようなさまざまな意味をふまえ、
「アイドル」という言葉を、
より豊かにしたいと思いました。
そのため、人気歌手や人気タレントはむろんのこと、
スポーツ選手、小説家、アーティスト、
無名の少女たちといった、「アイドル」を活性化させる
幅広い分野の人々の写真が数多く収録されています。

それらの写真を見ていると、つくづく「アイドル」は
“過去”だけに属しているのではなく、
“未来”にも属するのだと思います。
本書の冒頭、山口百恵さんのもつ〈少年性〉と
郷ひろみさんのもつ〈少女性〉が重ね合わさるところに、
これからの時代を切り拓いてゆく人々が理想とするような、
しなやかで力強い新たな人間像が
浮かび上がってくるようです。


空前絶後のドキュメンタリー!
日本、時代、文化、芸能、表現、風俗、流行……


それぞれの写真には、アイドルとともに、
その時代の文化が凝縮されています。
本書『アイドル』は「篠山紀信」という
世界でも稀有な存在である一人の写真家が生み出した、
壮大なドキュメンタリーであると言えるのです。
ここに収録された膨大な数の写真群は、それだけで、
世紀末ニッポンの30年そのものではないでしょうか。
本書は、あらゆる世代の読者に共感を呼ぶとともに、
1970年代以降の日本の文化、芸能、表現、風俗、
流行、ファッション、都市論、メディア論……など
さまざまな思考をも喚起する広がりを持っています。


ひとつの〈実験〉としての本づくり

だからこそ、本づくりは、一年という時間をかけ、
慎重に、なおかつ大胆に進めました。
本書はアイドル写真をただ単に集めた
オムニバス写真集ではなく、
また、いかにも重厚でいかつい、
記念出版のような写真集でもありません。

内容はあくまでも豪華に、造本はあくまでも軽やかに、
来るべき世紀を先どりする
ひとつの〈実験〉としての本づくりを目指しました。
アートディレクターの井上嗣也さんには、
写真の選定から造本の細かい点に至るまで、
「今までに存在したことのない本」を
作り上げていただきました。

本書には一切文字が入っておりません。
あくまでも「写真」だけで構成されています。
そして別冊の小冊子には、本書に関する詳細なデータと、
批評家の八角聡仁さんによる
「篠山紀信『アイドル』のための基礎知識」
という論考が収められています。

本書の企画段階から参加していただいた
八角さんによるこの篠山紀信論は、
断章形式で非常に分かり易く書かれていながら、
今まで誰もとらえることができなかった
篠山さんの仕事の全体像を
はじめて明らかにしたものではないでしょうか。

多くの幸運と、篠山さんをはじめ多くの人々の
強い意志で、この本はかたちづくられました。
ぜひ一度ゆっくりと手にとって御覧いただければ幸いです。

担当編集者さんへの激励や感想などは、

メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2000-10-29-SUN

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