担当編集者は知っている。

最新のオススメ本



世界へ発信する創造のエネルギー
『武道の原点』
著者:宇城憲治

出版社:合気ニュース
本体価格:2300円
ISBN:4-900586-59-5 C0075
2000年6月22日出版


担当編集者:
合気ニュース 木村郁子さん


●本の出版にいたるまで
著者の宇城憲治氏との出会いは、
少しややこしいですが、9年前の、
甲野善紀という武術家との出会いにさかのぼり、
そして、その武術家との出会いは、
それよりずーっと前の、
合気ニュースという、自分で言うのもなんですが、
知る人ぞ知る超マイナーな、
武道関連の出版社との腐れ縁にさかのぼります。

当時、合気ニュースという会社は、社長以外は全員女、
唯一男である社長兼編集長はアメリカ人、
そのうえ武道書のくせして雑誌や書籍にしろ
みんなバイリンガル編集という、
なんだかハイカラであやしげな本を出す出版社でした
(最近は男の子も働いているので、華やいで?ますが)。
イギリスへの2年間の遊学から帰国して、
さて翻訳のアルバイトでも、と気楽にはいったのに、
ずるずる今日まで居着いてしまったのは、
やはり、たくさんの、ほんとにたくさんの、
おもしろいおじーちゃんや
おじさんたち(武道家)との
出会いがあったからでした。

編集長が独断と偏見で選ぶ武道家にインタビューし、
それを翻訳するという仕事だったんですが、
武勇談やら人生哲学などを
おじさんたちから聞いているうちに、
すっかりはまってしまったんですね。
これは自分でも予想だにしない展開でした。
「なんでこのあたしがさ」という感じでしたが、
気づいたときは、ときすでに遅し、
どっぶりこの世界に足を踏み入れていました。

そんなある日、武術家・甲野善紀氏に
インタビューする機会を得たのです。
甲野氏は、他流儀や異分野の人たちと交流しながら、
古伝の術理を探求されている武道家で、
会ったその日に編集長と意気投合し、
その後何冊か術理本を出させていただいていますが、
この甲野氏が、とにかくすごい武道家がいる、
ぜひ一度会ってみなさいと、紹介してくださったのが、
本書の著者、沖縄古伝空手心道流・宇城憲治氏でした。

さっそく宇城氏にも取材し、以来何年かにわたって、
氏の師匠である、座波仁吉師範とともに、
季刊誌『合気ニュース』に登場していただきました。
取材を重ねるうち、私は、
宇城憲治という武道家の発想のスケール、
クールな視点、人間的な大きさに大変魅力を覚え、
いつか掲載した記事をひとつにまとめ、本にして、
より多くの方々に読んでいただけたらと、
ひそかに思うようになりました。
本を出版する話は、4年前に快諾を得ていたのですが、
忙しい宇城氏のスケジュールにあわせて、
今年やっと夢がかないました。
これまでの会見や取材したものをまとめ、
それに今年、座波、宇城、両氏に行なった
ロングインタビューをあわせて一冊にしました。

●宇城氏のすごさ
「大きくて高い山を作ろうと思ったら、
 裾野を広げることばかりに目を奪われてはいかん。
 自分がやるべきことをしっかりやっておれば、
 いつのまにか山は高くなり、
 気づいたら裾野もどっしりと広がっておる」。

……あれは、半年前、仕事のことで壁にぶつかり、
悩んでいる頃でした、
本書の打ち合わせのあと居酒屋で飲んでいるときに
宇城氏からこの言葉を聞いたのです。
なぜかそのときこの言葉がすーっと心にはいってきて、
言い知れぬエネルギーが私のなかで
ふつふつと湧いてきたことを覚えています。

宇城氏とお会いすると(正確には飲みにいくと)、
いつも帰る頃には、何かしら心がやる気に満ち、
前に進もうという気持ちになる経験をしていました
(足元はよろよろ後戻りでしたが)。
そんなふうな打ち合わせと飲み会の果てに(?)、
この本ができあがったのです。

この本の題材が沖縄古伝空手ですから、
武道をやらない方には無縁であると
思われるかもしれません。
でも本書には読んだ人にエネルギーを残してくれる
不思議なパワーがあるんです。
空手の話をしていながら、いつのまにか、
ものの見方や考え方が変わってくるような、
そんな本なんです。

著者の武道家としての桁外れの実力は、
その道の人には十分知られていて、
武道や現在の格闘技界の常識をはるかに超えるものとして、
昨今かなりの注目を浴びています。

去る2000年2月20日に
池袋コミュニティカレッジで行なわれた
公開演武会では、あらゆる流儀の武道家や
現役の格闘家など、たくさんの方
(糸井さんもいらしていました!)が、
直接宇城氏の演武を目にしています。
一緒に行った編集部の人間が、立候補して
著者と対したときの感想は、
「まるで、陽炎を相手にしているような、
 眼には見えるのにそこにいないかのような動き」
というものでした。

甲野善紀氏曰く、
「日本中、数え切れぬほどの社長さんがいるなかで、
 宇城先生は、例えば株主総会で総会屋ともめたとしたら、
 一流のガードマンがいたって
 逆に彼らをかばって戦えるような、
 それほどに強い、極めてまれな社長さんですね」。
そうなんです、文字どおり、
日本一強い社長さんなんじゃないか、
本気でそう思います。

ところで著者は、
ある会社の社長職にあった方なんですが、
「社長というのは会議ばかりや。
 判子ばかり押していたら技術がへたばってしまう。
 外で実務で動かんといかん!」ということで、
自ら望んで社長から専務に下りて、
研究業務にもたずさわって数多くの特許も取得され、
さらにエレクトロニクスの分野でICの開発をするなど、
とにかくパワフルな企業人です。

思えば、明治維新の頃に活躍した人たちは、
すべて武術の達人でした。
坂本龍馬もしかり、桂小五郎、
山岡鉄舟にしてもしかり。
彼らを突き動かした、勇気と挑戦のパワーは、
やはり武道、武術に源泉があったに違いありません。

●本書の内容について
ここでちょっと著者の代表的な「武術論」を
やわらかくご紹介します。
武術で肝心なのは、できるか、できないか、であり、
その裏付けなくしては武術とはいえません。
できる、という事実がなければ次へ進めないわけですね。

自転車に一度乗れるようになれば、一生乗れる。
あたりまえだけど、乗れるようになるまでは、
ずっと乗れない(できない)わけです。
それまではいくら自転車の上で
曲芸しようたってだめなのです。
それを無理に手をはなしてみたり、
さかだちしちゃったりして、ずっこけている人、
意外に多いのではないでしょうか。

氏に言わせると、
“できる”→“次へいく”というステップを踏んで
前に進むためのしっかりとした根拠……、
つまりそれは理論と実践につきるわけですが、
それが武術、武道にあるんだと、いうことなんですね。

それから、著者は、
創造性は、“ひらめき”で、
知識とかアイデアではない。
“真面目で一生懸命の世界”ではなく、
“真剣で集中力の世界だ”、と言っています。
つまり、こつこつと積み重ねるアナログではなく、
デジタルなステップアップ
(まじめと一生懸命さだけで勝負してる私にとっては、
 とっても耳の痛い言葉ですが)。
そういうステップアップ式の武術の修得過程、
つまりできるようになったらあともどりしない
(非可逆システムというそうですが)、
こうした絶対的な学びの精神というのは、武術に限らず、
いろいろなところに生かされるものと思います。
武術の話でありながら、
なんだかそうでない気がしてきませんか。
私が言いたいのはそこなんですが。

●著者の先生もすごい
本書は、4章にわかれていまして、
1章、武道についての総論、
2章は、心道流空手の5つの型の紹介となっていて、
ちょっと見は、フツーの武道書なんですが、
3章からは『武道の原点を考える』ということで、
「空手はちょっと」と言う方は
ぜひ3章からでも読んでいただきたいのです。
ここから本論に入りますので。
そして、4章では、著者の師である、
沖縄古伝空手心道流の長老、
座波仁吉氏を交えての
ロングインタビューとなっています。
 
この、座波氏がまた、
そんじょそこらの空手の先生ではないんですね。
おぎゃ−と生まれたところが沖縄の那覇で、
兄も両親も、お隣さんも、お向かいさんも
みんな空手をやっている、
という空手どっぷりの環境で育ち、
若いときは、実戦、かけだめし
(かつて沖縄で行なわれた真剣勝負のこと)、
なんでもあり、をたくさん経験してきた人なんです。
朝、奥さんが座波氏を起こすのも、
急に声をかけると蹴りがはいったりすることがあるから、
箒で突いて起こしたというほどだったそうです。

著者は、この座波氏に師事する前は、
空手の大会で何度も優勝し、
自信も深めていたということですが、
はじめて座波氏に習ったとき、構えてたつと、
「次は蹴りか、突きか」と、
動く前からすっかり読まれているのに驚いた、といいます。
そうした座波氏との出会いが、
著者のその後の人生を
180度変えることになっていきます。

それからどう変わってきたか、
書き出すとまたきりがないのでこのへんにしますが、
とにかく、『武道の原点』という
いかめしいタイトルではありますが、
あらゆる意味で、原点にもどって
あらゆる事を考えさせられる本、
であることを強調させてください。

この本を読んで、私のように
心にやる気とパワーが生まれた、という人が
一人でも多く出たら、こんなに嬉しいことは、ありません。

興味をもたれ方は、是非以下をご覧下さい。
http://www2.gol.com/users/aikinews/book/books.htm#bugen

2000-07-02-SUN

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