担当編集者は知っている。

最新のオススメ本


『しっかりしてよ!介護保険』
著者:伊藤真美
出版社:草思社
本体価格:1400円
ISBN:4794209592
2000年3月30日出版
19センチ、190ページ(B6)


担当編集者:植田規夫

2000年4月にスタートした介護保険制度は、
福祉・医療関係者や要介護老人が身近にいる人以外には
「さかんに報道されるわりには縁遠い」
といったものかもしれません。

著者の伊藤さんは千葉県千倉町で
クリニックを開業するお医者さんで、
地域医療に介護の機能や視点は欠かせないという考えから
みずからケアマネジャーの資格をとり、
クリニックは「居宅介護支援事業所」の指定を受けました。
この本には、介護保険制度スタートに向けての
準備期間に著者の伊藤さんのまわりで起こった事実と
介護保険制度についての伊藤さんの考えが書かれています。

「この制度はなんだかおかしい」
という著者の言葉から企画がスタートし、
制度スタートの直前、2000年2月までの出来事が
盛り込まれました。
お役所とのスッタモンダ、地域のご老人のとまどい、
介護と医療がビジネス化していくことへの違和感など、
現場の医療・介護従事者の目から見た
「現実」と「実感」がこの本の成分。

お役所の窓口とのやりとり、
近隣の介護サービス事業者との雑談など、
「なるほど、やっぱり」なことばかりです。
制度をいかに利用するかのマニュアル本や
医療・福祉・社会保障の専門家による
制度批判本とはまったくちがったかたちで
介護保険が理解できる本になっています。
怒ったり、呆れたり、
ときにはボケをかましたりの伊藤さんに
「義侠心」を感じながら、
編集者としての私はお付き合いしました。

2000年3月の刊行後、制度の専門家たちから著者に
「今回の介護保険だって、
 悪いとこばっかりじゃないでしょう?」
という反応があったそうです。
しかし、4月以降、実際に起こっていることは、
この本のなかで伊藤さんが心配したことばかりです。
幸か不幸か、不安が的中してしまったというのが現実です。
介護サービス・医療サービスのスタッフが
すこしでも働きやすい、動きやすい制度がほしいと
願って書かれたこの本が意義をもつのは、
今ではなくて、この制度がなくなる、
あるいは大きく変わるときかもしれません。

ところで、伊藤さんのクリニックは、
南房総の海に近い、とても気持ちのよいところにあります。
この夏、ちょっとお邪魔して、
海で泳ぎ、美味しい魚を食べてこようと考えています。

2000-06-28-WED

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