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最新のオススメ本
『だれも死なない』
著者:トーン・テレヘン
訳:長山さき
絵:金子國義
出版社:メディアファクトリー
本体価格:1400円
ISBN:4-88991-970-8 C0097
2000年3月3日出版
担当編集者:
メディアファクトリー 柏谷直子さん
●であい
この『だれも死なない』は
翻訳者の長山さきさんが、
詩人の谷川俊太郎さんに協力していただきながら、
ずっと以前から出版化を暖めていた、
すてきな短編集です。
ご存じの方もいるかもしれませんが、
この本の一部は、
もともとマドラ出版の『広告批評』に
連載されていました。
ときどき雑誌を買っていた私は、
このかわいくて、哲学的な短編の
熱烈なフアンでした。
とにかく『だれも死なない』という
タイトルが印象的でした。
※あとから知ったのですが、
このタイトルの名付け親は、
谷川俊太郎さんです。
さすが!です。
それから3年後。
ノートに貼った連載のコピーを眺めながら、
「いつ本になるのかな」と思っていた自分が、
いつのまにか書籍の編集者になり、
この本を担当することになったのです。
●トーン・テレヘンのこと
著者のトーン・テレヘンはオランダ人です。
アメリカやイギリスやフランスじゃなくて、
オランダというところが気に入りました。
プロフィールを読んでみると
ユトレヒト大学の医学部を出て
若い頃はアフリカに渡って
マサイ族のお医者さんをしていたこと、
『だれも死なない』は娘さんが小さかった頃、
寝る前にお話してあげるため考えたということ、
詩集も出して賞もとっていること、
オランダで権威のある賞を
総ナメにしていることなどがわかりました。
※その中には、主人公の男の子が
嫌われものの体罰教師に
復讐のシュミレーションをするお話など、
かなりアバンギャルドなものも含まれてます。
テレヘンもすごいけど、
こういうのを児童文学として
出版してしまうオランダってすごい国です。
マスコミ嫌いで気むずかしい、
という噂のある一方で、
翻訳者の長山さんの飲み物を
まちがってゴクゴク飲んだくせにとぼけていた、とか
手紙を出すとすぐ返事を書くなど、
おちゃめでかわいいところもあるらしく、
とにかく、期待以上に「そそる」人でした。
そして、この本は日本語で出版される
最初のテレヘン作品になるのです。
責任重大です。
●どんな本にしようか
もともとは児童文学なのですが、
読者を子どもに限定するのはもったいない。
子どもの頃にうまく言葉にできなかった
純粋で微妙な気持ちを思い出させてくれるこのお話は、
むしろ大人に読んで欲しいと思ったので、
大人向けの本にすることに。
コンセプトは、大人のための哲学童話。
判型は、図書館に置いてもらいたいのと、
オランダ児童文学に敬意を評して
ハードカバーにきまりです。
とにかく、動物たちの棲む森の
不思議な世界観がにじみでてくるような
本にしたいと思いました。
そこで重要になってくるのが、
装幀と挿し絵です。
オランダ語の原書
『Bijna iedereoon kon omvallen』にも
挿し絵がついているのですが、
ちょっとコワすぎ。
挿し絵のない本にする方法もあるのですが、
『だれも死なない』には、
どうしても挿し絵があった方がいい。
昔の外国の絵本みたいな感じで、
動物たちがすごくかわいくて、
でもちょっと意地悪そうで……。
言葉でのイメージはあるものの、
具体的に「誰にお願いする」というのがない、
苦労するパターンでした。
本屋さんや図書館の児童書コーナーを回って
本を探したり、『ぴあ』で探した
イラストレーションの個展を見に行ったり、
海外のアーティストはどうか、と
あたってみたりしましたが、
そう簡単に「これだ!」という人には出会えません。
どうしよう、どうしようとあせっている間に
1カ月、2カ月、3カ月があっという間に過ぎていき、
アムステルダムに住んでいる翻訳者の長山さんから
「本当にいつ出版なんですか」と
国際電話で催促される始末でした。
ふつうは催促するのが仕事なのに
催促されてしまう編集者って……。
●金子先生のこと
そして半年後にとうとう出会ったのが、
本屋さんで平積みになっていた
新潮文庫「不思議の国のアリス」でした。
装幀と挿画は
アリスをライフワークにしていらっしゃる
金子國義先生。
美人のアリス、そしてウサギをはじめとする
動物たちがかわいくて、意地悪そうで、
イメージにぴったりでした。
金子先生は大御所のアーティストですし、
官能的な絵もたくさん描いていらっしゃる方なので
最初に依頼の電話をした時には、
断られるんじゃないかと
それはもうドキドキでしたが、
きさくな感じの方で、ちょっと拍子抜け。
とりあえず会いましょう、ということになりました。
先生のアトリエはツタの絡まる古い洋館。
インテリア雑誌に出てくるような応接間に通され、
ついてきてもらった編集長(金髪美人。でも日本人)と
どきどきしながら待っていると、
金髪ダンディーな金子先生があらわれました。
先生は、年末に伊勢丹で開かれる
個展の準備で大忙しの最中だったのですが、
個展が終わってから少し時間ができるので
挿し絵はもちろん、
装幀もやっていただけることになりました。
発売予定日まで時間がなかったのですが、
先生もこのお話を気に入ってくださり、
思っていた以上の仕上がりでした。
しかも早い!
「のってくると早いですよ」と
秘書の方がおっしゃっていたとおりでした。
描きあがったばかりの
絵を一枚一枚見せてくれながら、
「リスにさ、タコが『入れ替わってくれる?』
っていうんだよね」とか
「このゾウが気に入ってるんだ」など
ニコニコしながらお話ししてくれる先生を見て、
お願いして正解だった、
よかったと胸をなでおろしました。
こんなふうにして
やっと『だれも死なない』は
本になったのでした。
●2000年に読んで欲しい本。
この本に出てくる動物たちは、
リスも、アリも、サイも、ゾウも、コオロギも、
その他の動物も1匹づつしかでてきません。
そしてお話のなかでは、みんな同じ大きさです。
そして、だれも死なない。
(タイトルはここからきています)
はっきりしたストーリーや
これといったオチはありません。
ただときどき、ちょっとした事件があって
とつぜんみんなが空に浮かび上がったり、
リスが海の底に住むタコの家に
お茶を呼ばれにいったりします。
そんな不思議な出来事が
「あたりまえ」のようにおこって、
動物たちもそれをあたりまえのように受けとめる。
そんな不思議な短編が42コ入っています。
動物占いみたいに、自分がこの動物だな、とか、
あの人はこの動物だな、とか思いながら読むのもいいし、
好きな人にプレゼントする本としても
すごくいいと思います。
今年2000年は日蘭友好400周年です。
チューリップ、風車、ミッフィーちゃん以外の
オランダにもぜひ触れてみてください。
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