| 鶴: |
まだ若い学者の方ですし、スラヴ系の門外漢の私は
まったく名前も知りませんでした。
その筋では有名な方かもしれませんが、
吉田さんは、何をきっかけに黒田さんのことを
お知りになったのでしょうか? |
| 吉: |
編集部の先輩社員が趣味でロシア語を勉強しており、
黒田さんの授業に参加していたのがご縁になりました。
先輩社員が、本書にも収めました
「静かなるベラルーシ語」を掲載した冊子を
社に持ち帰ったところを偶然私が読み、
すぐに執筆依頼を決意しました。
黒田さんの文章を読んだのはそれが初めてでしたが、
「この人に執筆をお願いしなければ、
出版社で働いている意味がない!」と本気で感じました。 |
| 鶴: |
どのくらいかかってこの本は完成したのでしょうか? |
| 吉: |
黒田さんに最初にお会いしたのは1996年の1月です。
それ以降、打ち合わせを重ねながら
執筆に同意していただきました。
そのとき「2年半後に脱稿します」とおっしゃって、
その約束通りに書き上げて下さいました。
研究・講義の合間の執筆でしたので、
かなり厳しいスケジュールだったはずです。
そんな中、時期を明言し、それを完璧に厳守された著者は
極めて貴重な例外で、私の編集者生活では
こういった体験は、空前にして、
おそらく絶後だと思います。 |
| 鶴: |
処女作で書き下ろし……文章の出来具合を心配したことは? |
| 吉: |
文章に関しては心配したことは一回もありません。
企画成立前に文章を拝見してましたので確信していました。
実際、いただいた原稿も「誰に何を読ませるのか」という、
文章をものすときの芯を常に捉えており、完成度が高く、
編集者の出る幕なしでした。 |
| 鶴: | 黒田さんは単語集など専門書や参考書の類は
出していらっしゃいますが、単著は初めてですね。
社内の会議ではどう評価されましたか?
そのあたり、御苦労があったのではないか
と推察するのですが。 |
| 吉: |
会議ではさまざまな苦労がありますが、
この本に関してはまったく苦労はありませんでした。
この企画に自信があったので、
いつにない堂々とした姿勢で確信に満ちた答弁を
繰り返すうちに社内の合意を得ました。
逆に質問を受けるのが楽しみなくらいでした。
あれ以来、あのような堂々とした自分を見たことは
ありません。昔の自分が羨ましい。 |
| 鶴: |
読者からの反響はいかがですか。 |
| 吉: |
読者からの反響が大きいのには驚いています。
連日、問い合わせがあります。
老若男女さまざまで、職業もバラバラです。
スラヴ諸語を勉強している方もいますが、
ちょっと興味を持っている人や、
以前勉強したけれど挫折してしまった人が
読むケースも多いようです。 |
| 鶴: |
吉田さんはロシア語もしくは、
スラヴ諸語がお出来になるのですか? |
| 吉: |
いやー、実は知らないのです。ごめんなさい。
そんな私を憐れに思ってか、
黒田さんがロシア語の教科書をプレゼントしてくれました。
慌ててアルファベットの形を覚えましたが
(うろ覚えですが)、本職の校正に役立つレベルでは
到底ありません。
スラヴ諸語に関する校正は
著者にすっかりお願いしてしまいました。 |
| 鶴: |
うーん、立派な著者ですね〜。 |
| 吉: |
この仕事を振り返りますと私自身の苦労話=自慢話が
まったくできないことに改めて気づきます。
本当に著者ひとりの力量で完成した本だと思います。
ほんと、すいません。
開き直って、無理矢理自慢話を考えれば、
優れた著者に執筆を依頼したことくらいでしょうか。
あ、あと、装幀と印刷と製本も素晴らしいと思います。
でも、私の自慢にはなりませんが……。 |
| 鶴: |
この本のよさは? |
| 吉: |
本のいいところを挙げていくと
大演説会になってしまうので、簡単に言いますと
「おもしろ半分、大歓迎」という点です。
読者には、なんの前提知識も要求されていません。
必要なのは好奇心のみです。
その「興味本位」を巧みに支援している本なのです。
ロシア語は馴染みも薄く取っつきにくいかもしれませんが、
まずはページに風を通すくらいの軽い気持ちで
中をパラパラっと覗いてみて下さい。
決して損はさせません!
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