| 鶴見: |
「リング」「らせん」「ループ」と
段々と荒唐無稽になっているような気がしたのですが、
その辺り担当者として読者がついてくるのかどうか?
といった心配はなかったのでしょうか。 |
| 堀内: |
もしも荒唐無稽だとすれば、「リング」「らせん」
を別世界の出来事にしたことについてが大きいと思います。
確かに、根っからのリング・ファンには「ループ」が
荒唐無稽であると不満を持っている向きもあるようです。
しかし物語が、サイバースペースでのことであるから
といってなんら小説の興奮に水を挿すものではないのでは
ないでしょうか。
作り手側の理論になるかもしれませんけれど、
この三部作でやりたかったのは、続編でありながら
単独の作品として成り立っているということです。
あまり指摘されていませんけれど、
これがこのシリーズの一番クリエイティヴなところです。
普通、続編は必ず自己模倣から始まるものですが、
鈴木光司という作家は、前作を否定することから発想を
出発させている、その破天荒ぶりが魅力だと思います。 |
| 鶴見: |
今度の「バースデイ」は短編ですね。
今までの3作が長篇だったのと比べて形式も
随分と違うなあという印象でした。
そこは最終作ということで狙いがあったのでしょうか?
書かれている時期も違うようですし……。
初出を見て不思議に思ったので。 |
| 堀内: |
「リング」は'91年、「らせん」は'95年、
「ループ」は'98年に発表されました。
「ループ」で物語を完結してみて、
どうしても書きたかったのに本編のリズムの都合上
入れられなかったエピソードを発表しよう
と言うことになりました。
それがバースデイです。
したがって外伝集ということで、
それ自体は狙いというわけではありません。 |
| 鶴見: |
この連作は最初からこのような4部作になる予定で
考えられていたのですか。
また、鈴木さんの中で
刊行順に構想されていたのでしょうか。
そうでないとしたら、考えられていた順番を伺いたいです。 |
| 堀内: |
刊行順に構想されました。
鈴木さんとしては、最初はリングだけで
終わるつもりでしたが、新作があがるたびに続編があるな、
という話になってここまで来ました。
「リング」を執筆したのは'89年ですから、
完結に丸10年かかったことになります。 |
| 鶴見: |
映画も好調のようですが、リングシリーズの読者層は
やはり若い人たちですか? それとも? |
| 堀内: |
映画はやるたびに年齢層が下がっています。
今は中高生が中心です。リングはもともと
本を読まない人にも浸透してきましたが、
映画を観た若い人々が、これから3、4年後に
鈴木光司さんの読者になってくれたらいいな、
と思っています。 |
| 鶴見: |
鈴木光司さんがホラーを書く原動力について教えて下さい。 |
| 堀内: |
鈴木さんは怖がらせることを目標にしている作家では
ありません。彼に会うと、ファンの人は皆びっくりします。
明るくてなぜかマッチョな人だからです。
彼が一番怖いことは愛する人の身に何かが起こること
だそうです。
そう考えると、リングという小説もホラーではなく、
たぐい稀な家族愛の物語であると思えてくるはずです。
彼は子育てを10年にわたってやってきたのですが、
その経験は、男が子育てに参加することにより、
家族が、学校が、企業が、日本人のキャラクターが
すべて変わるのではないか、
という考えのもとになっています。
母性に偏った男を父性によって鍛えていく
ということでしょうか。
彼がこれから書く小説は
そこにモチベーションがあるのだと思います。
※詳しくはPHP「家族の絆」参照。 |
| 鶴見: |
最後に、映画が公開中で話題でもありますのでちょっと。
「リング2」は純粋に「リング」の続編
というわけではなかったと思いますが、原作との関係は?
脚本を公募したのだと記憶していますが。
それはテレビドラマの方ですか? |
| 堀内: |
「リング2」はリングの設定をもとにした脚本家・
高橋洋さんのオリジナルストーリーです。
原作とは設定と何人かの登場人物以外は
直接関連はありません。
公募された作品は、佳作が4作品でました。
個性はとても強かったのですが、
そのまま映像化するにはいたらず、
テレビ、映画ともリンクはしていません。
ちなみに佳作は「the RING もっと怖い4つの話」
という本に結実しました。 |