感心力がビジネスを変える!
が、
感心して探求する感心なページ。

第2回 面白がれるとツキを呼ぶ?!

インタビュー当日、
こちら感心力チームは、
わたくし(おぼつかない英語)、
西本69乗組員
(中国語ができそうなことを言う)

そして謎の通訳コイズミさん
(ポルトガル語ができる?)

この3バックであります。
実に不安であります。

対して、先方は、と。
プレスリリースを抜粋して紹介しますと、
『アザー・ファイナル』(原題は『The other final』)の
「オーガナイザー」
(ふつうプロデューサーというのが一般的)で、
オランダはアムステルダムの
「インターナショナル・コミュニケーション・
 エージェンシー」(簡単に言うと広告代理店)の
キャンペーン戦略立案家、
マタイアス・ディ・ヨング氏。
背が高いです。185cmはあるでしょう。
子供の頃は、「もやしっ子」と
言われていたかもしれません。
そして、オランダチームには、謎の同行人が。
こちらは、また逆にコンパクトな方であります。
見るからに日本語通訳では無さそうです。
二人でオール阪神・巨人効果を狙ってるのかもしれません。
(オランダサイドの同行人は、
 結局、最後まで一言もしゃべらなかったです)
こんなことなら、
こちらも柔道着姿を
スタメンに入れておくべきだったですね。

まずは、“Nice to meet you”と、
つくり笑顔と握手でご挨拶。
マタイアス氏から、
塩ビ製の袋を手渡されました。
なんと、これが、名刺。
こういう対人コミュニケーションの
真珠湾攻撃みたいな技はあり?
袋を取り出すと、
ポケモンカードみたいなものが5枚ぐらい入ってます。
割り引き券ではないんです。
今までの仕事をビジュアル入りで刷り込んだカードなんです。
どこぞの企業かが名刺の色を100色つくりましたが、
これは負けてます。



いざ、インタビュー時間は、50分。
キックオフです。

田中 さっそくですが、映画を観てですね、
非常に感動しました。
今日は、
サッカーのこともあるんですが、
(じつはあんまり興味無い)
おもに、ビジネスと仕事という側面から、
お話を聞いていきたいというふうに思います。
最初にこのプロジェクト、
「最下位決定戦」を思いついた
いきさつをお話いただけたらと思うんですけども。
マタイアス まず最初にきっかけとなったのは、
自分たちの母国オランダが、
ワールドカップを予選で敗退してしまって、
「負けるということ」に興味をもって、
この試合のアイデアが出てきたっていうのも
あるんですけど、
もともと映画を作りたいという
気持ちがありました。
世界に向けて、
ポジティブで人々のやる気を起させるような
働きかけができるような
映画をつくりたかったんです。
私たちは、世界中の人たちと分かちあえるような
メッセージ出したかったんです。
あくまで物語の共通言語として
サッカーを選んだわけで、
これはサッカーが主題の映画ではありません。
サッカーは、おたがいのことや
おたがいの文化を知らない同士が、
フレンドリーに出会うための言葉だと考えました。
田中 その最初のすばらしいアイデアを、
実現化されるまでに、
たいへんな苦労を
されたんだろうと思ったんですが、
そのへんのお話を聞ければな、と思うんですが。
マタイアス 面白いことに、
私たちはサッカーの試合を
企画実施した経験が
一度もなかったんです。
田中 そうなんですか!?(笑)
マタイアス 経験が無かったことは、
私たちにとって、
もちろん不利なことだったんですけど、
それがかえって
良かったことでもあったんですよ。
マタイアス 私たちは、このプロジェクトに
協力してくれるところを
必死で探したんです。
この企画を実現するにあたって、
ブータン、モンテセラト、FIFA、
それから審判の手配のために
イングランドのサッカー協会と、
とにかくいろんな協力が必要だったんです。
それに自分たちだけでは
このプロジェクトを達成することはできない
っていうのがわかっていたので、
日本の友だちの会社
(ロボットという制作会社)と
組んで、映画のプロデュースを
してもらったんです。
田中 FIFA
の許可を取ることは簡単だったんですか?
マタイアス FIFAにどういうふうに
アプローチしたかというと、
まずFIFAにそういった
試合の許可を出すような
管理部門があるんですけど、
そこに、自分たちで直接交渉したのではなくて、
まずブータンとモンテセラトに、
私たちの企画のファックスを送って、
彼らからFIFAに
「自分たちはこの試合をやりたい」
っていうのを
送ってくれってお願いしたんです。
田中 それ、素晴しいアプローチですね(笑)。
マタイアス さらにラッキーだったのが、
このプロジェクトが
挑戦だったというだけでなく、
時間が無かったということなんです。
時間がなかったので、
すごい挑戦できたんですけども、
6月30日のワールドカップの決勝まで、という
締め切りがあったからできたんです。
田中 最初にそのファックスを
モンセラトとブータンに送られたのは、
いつだったんですか?
マタイアス 1月の末ですね。
田中 2002年の?(笑)
マタイアス そうです。
ブータンは、試合をやることを決めるまで
2ヶ月かかったんです。
2ヶ月間考えさせてくれと
言われ続けたんですよ。
だから残り3ヶ月で
実現を図らなくしちゃいけなかったんですね。
田中 その実現にこぎつけたコツというか、
なぜうまくいったかっていうのを
いちばんお聞きしたいんですけども。
マタイアス まず、私たちはツキに助けられたと思います。
それから、関わっている人たちに、
このアイデアに対して、
のめり込んでもらえるように
努力したんです。
あとはもうボールとおんなじで、
転がるまんまに
自然に流れに乗っていけました。
たくさんのツキが重なったんです。
モンテセラトとブータンの政府が
とても協力的だったし、
映画づくりで
日本の制作会社のロボットと仕事ができたし、
それからFIFAがこれを承認してくれた。
とにかくツイてました。
田中 たぶんプロジェクトを
実行する資金の目処もなくて、
先に動かれたかなと思ったんですけども、
そのあたりはどうだったんですか?
マタイアス まず自分たちとロボットの資金があって、
あとイタリアの会社から資金、
それからオランダの文化基金から
お金を出してもらいました。
あとは、映画配給のロイヤリティ収入を
あてにしていました。
しかし、大事な点は、
もともと非営利を前提にした
アイデアだったので、
もし万が一儲かってしまったら、
ブータンとモンテセラトに、
彼らのサッカーのこれからの発展のために、
寄付します。
田中 「非営利で行こう」という
アイデアがはじめに無かったら、
このプロジェクトは
これだけうまく
行かなかったかもしれませんね。
マタイアス その通りだと思います。
田中 最初ファックスを送られたときには、
資金のお金の算段もせずに、
まずは自発的に
動いてみようとされたんですか?
マタイアス そうです。
ほんとに思い立ってすぐ
ファックスを送ったんです。
私たちの会社の財務状況はとても良いので、
儲けること自体、あんまり考えてなかったんです。
私たちは広告業なんだけども、
社用車は無く、社用自転車はあるんですよ。
だからお金も節約できるんです。
一同 笑(69西本乗組員を除く)


<ワンポイント考察>

最後のマタイアスさんのコメントを書き起こしますと、

Also, although we work on advertising,
we don’t have company cars,
but we have company bicycles.
It saves lots of money.

わたくしの勤務先が広告代理店であることを意識した
ひねりの効いたユーモアのつもりなんでしょうが、
うちには社用車はありません。
デーブスペクターのアメリカンジョークみたいで、
ちょっとつらかったです。

マタイアスさんは、
そもそもサッカーの映画を
つくりたかったわけでは無かった、というのが、
愉快ですよね。
もっと深い動機はのちのち出てきますが、
むしろ思いつき、
とつぜん降ってきたアイデアに
無性に突き動かされたんでしょうねえ。
で、そのアイデアの魅力に、
両国政府やFIFA、資金援助先などを
つぎつぎ感染させていったから、
この大胆なプロジェクトが
実現できたんだと思います。
無心に損得抜きに面白がろうとしてる
マタイアスさんの姿勢や態度に、
人々が魅せられ、
ラッキーを呼び込んでいったんだなあと感心しました。
それに、締きり仕事だったのも
実現の追い風になってますよね。

FIFAを口説いたやり口は、
なかなか見事な手だと思いました。
「子供にせがまれて親がおもちゃを買う」式の
ビジネスアプローチですね。

アイデアこそすべてのはじまりであったわけです。
ここで、アイデア関連本を紹介しときます。


ジェームス・W・ヤング
『アイデアのつくり方』(TBSブリタニカ)
この広告業界の古典を発展させた


ジャック・フォスター
『アイデアのヒント』(TBSブリタニカ)
どちらも他業界の方にも役立ってしまうはずの
名作だと思います。

2003-03-26-WED

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