第25回 虫博士チームが、昆虫写真の第一人者
海野和男さんに出会った!


毎日虫のことばかり考えている
「ほぼ日 虫博士チーム」。
神様に思いが通じたのか、なんと先日、
知り合いを通じて、
昆虫写真の第一人者と言われている、
海野和男(うんのかずお)さんに
お会いすることができました!

虫博士チームは昆虫初心者3人組なので、
じつは最近まで、海野さんのことを、
詳しくは存じ上げていなかったのです。
でも虫に関する書籍を見ていると、
海野さんのお名前をひんぱんに見かけます。

そしてある日、チャンスがきて
紹介していただけることになったのです!
これはもう、運命かも。
ぜひ、お会いしてみたい。

しかし海野さんにお会いするということは、
未知なる虫の世界の深くに、
本格的に踏み込むことになるんじゃないか‥‥。
でも、もう戻れない。前進あるのみ!
‥‥なんて、大げさですか??
でも、そのくらい、海野さんにお会いする日を
ドキドキして待っていたんです。

海野さんは、いつでも昆虫を観察できるように、
長野県の小諸にあるアトリエで、
1年のほとんどをお過ごしになられているのですが、
東京都内にもお仕事のための事務所をお持ちです。
今回はその東京事務所に、お邪魔させていただきました。

事務所には本や写真がたくさん。
海野さんの昆虫との歴史が、
たっぷり感じられるお部屋で、
いろいろな写真や映像を見せていただきました。
今まで見たことのない幻想的な昆虫の世界は、
本当に震えるくらい素晴らしく、大興奮でした。
(この大興奮については、また改めて、
 みなさまにも、ご紹介しますね。)

海野さんはとてもご多忙で、
いつも世界各地を飛び回っていらっしゃるような方です。
ほんの束の間の貴重なお休みに、
のほほんとやってきた初対面の私たちに、
自ら淹れたコーヒーを出してくださったのですが、
その、コーヒーカップのイラストが、虫!
じ〜ん‥‥。

これを見たとき、
海野さんの、絵に描いたような虫博士ぶりに、
猛烈に嬉しくなってしまいました。
何かひとつを好きでい続ける、愛。
「いとおしさ」のような気持ちを、
そこに感じたのでした。

虫博士チームは、
そんな昆虫写真家、海野さんを
今後も追いかけていこうと思っています。
まず今日は、海野さんの最近の著書である、
「葉っぱをまく虫」オトシブミの季節
という珍しい虫についての本をご紹介しますね。
ではどうぞ〜。




ドキュメント地球のなかまたち
「葉っぱをまく虫」オトシブミの季節


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「落とし文」ってご存知でしょうか??
昔、中世から近世の時代に、
公然と言えないこと(密告、恋文、政治批判など)を
文書(巻物)にして、
人目につくところに落としておいたそうで、
これを「落とし文」と言っていたとのこと。
葉っぱをその「落とし文」の形のように巻く、
「オトシブミ」という虫がいるんだそうです。

この「オトシブミ」、
名前に風情があるためか、
新緑の季節に和菓子の形としてもよく見られます。
画像検索で「落とし文 和菓子」と入れると出てきますが、
きっとみなさんも見たことのある形だと思いますよ。

この「オトシブミ」が、卵を産み付けるために、
葉っぱで小さな筒を作ります。


葉っぱで作った小さな筒、「揺籃(ようらん)」。

揺籃の中には、黄色い小さい卵が入っています。
卵は、この中で幼虫になり、
葉っぱを中から食べて成虫になるまで過ごします。


葉っぱの中で上手に糞を端に寄せていますね!


この揺籃、ほどけないようにしっかりと巻かれており、
なかなか人の手では同じように巻くことができません。
のりもはさみも使わずに、
しっかりと巻かれているとは不思議ですよね。
どうやら、鋭い口と足を使いながら
上手に葉脈を切っていき、
葉を折りたたんでいくようなのです。


揺籃を作りやすい大きさの、
やわらかい葉っぱを選びます。



ところで、この作業をするのは、
卵を産み付けるメスのオトシブミ。
オスは何をしているのかというと、
巻いている葉の下の方で、
自分の子孫を残すメスを守るためか、
ほかのオスとけんか(?)をして
モゴモゴやってるんだそう。


オスのせいで葉っぱが重たくなって、
作業しにくそうにも見えますね‥‥。


このオトシブミ、成虫の寿命は11ヶ月で、
そのうち活動するのは1ヶ月半ほどなんだそうです。
揺籃を作る季節だけ活動して、
あとは何をしているのかよくわかっていない、
いまだ謎の多い虫とのこと。

今まで知らずに見落としていた
オトシブミの落とした筒を、
今年の初夏は、山や林に行った時、
気をつけて見てみようと思います。
見つけたら、ちょっと嬉しくなりそうですね。


さて、海野さんの今後の登場を、
どうぞ楽しみにしていてくださいね。
みなさまからのメールも、随時募集中!
いつも楽しみにお待ちしております。
では、また来週〜!


海野和男さんプロフィール

1947年、東京生まれ。昆虫を中心とする自然写真家。東京農工大学の日高敏隆研究室で昆虫行動学を学ぶ。大学時代に撮影した「スジグロシロチョウの交尾拒否行動」の写真が雑誌に掲載され、それを契機に、フリーの写真家の道を歩む。
1990年から長野県小諸市にアトリエを構え身近な自然を記録する。1999年2月よりデジカメで撮影した写真にコメントを付けて毎日更新する小諸日記をはじめる。
著書「昆虫の擬態(平凡社)」は1994年日本写真協会年度賞受賞。主な著作に「蝶の飛ぶ風景」(平凡社)、「大昆虫記」(データハウス)、「蛾蝶記」(福音館書店)、「昆虫顔面大博覧会」(人類文化社)などがある。
NHK教育「ようこそ先輩」「人間講座」、TBS「どうぶつ奇想天外」など、テレビでも活躍。
日本自然科学写真協会副会長、日本昆虫協会理事、日本写真家協会などの会員。
公式サイト「海野和男のデジタル昆虫記」

★テレビ出演予定
 「地球は虫の惑星だ
  〜知られざる虫たちと海野和男の映像世界〜」
NBS長野放送(長野県のみ)
 1月23日(月)NBS月曜スペシャル午後7時〜8時
フジテレビ(関東1都6県)
 1月31日(火)
 26:33〜27:28(実質2月1日午前2時33分〜)
BSフジ(全国放送)
 3月5日(日) 14:00〜 予定

その他、フジ系列は、およそ2月から3月頭で、
それぞれ独自時間に放送予定となっております。

※正確な放送時間については、
 各テレビ局ホームページなどでご確認くださいね。



今回登場した虫たちをご覧になりたい場合は、
こちらをクリックしてどうぞ。

(検索エンジンgoogleの
 イメージ検索を利用しています。)


オトシブミ



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2006-01-22-SUN



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