DOCTOR
Medic須田の
「できるかぎり答える医事相談室」

Q:新しい最先端の医療や治療法などについて詳しい医師と、
不勉強で適当にクスリをだしてる医師と、いるでしょう?
人格の問題を抜きにして、「かかるべき医師」と、
「かかるべきでない医師」の見分け方があるなら、
ぜひ教えてください。

以下、回答です

これまた難しい質問ですねぇ。
下手をすると同業者(おいおい、まだ無免許だろって)
の誹謗中傷にもなりかねませんからね。

これも2つの場合に分けるとしましょう。


軽い病気でどう治療しても差し障りのない時にかかるべき医者  


重病で、ひょっとして命に関わったり、
長期間に渡って治療が必要な病気の時にかかるべき医者の
二つにとりあえず分けます。

Aの場合ですが、誰にかかっても全く同じでしょう。
この場合は、近所にあるからとか、
勤務先の近くにあるからとか、
竹之内豊に似ているからとか
実は愛人関係にあるから(笑)と、
どんな理由で選んでもOKでしょう。

ただ、一般的にはかかりつけのお医者さんは
なるべく一つのところに決めておいた方がよいと思います。
その人の既往歴から家族歴まで
最初からいちいち洗い出すのは、
話す患者の方にとっても手間だし、
聞く医者の方も面倒ですしね。
かかりつけのお医者さんならそういう手間が省けますから
お互いに楽ができるわけです。

問題はBの場合でしょう。
ただ、この場合でもぶっちゃけた話をしてしまうと、
「その病気を専門にやっている医者にかかる」
そして、
「その病気をたくさん経験している医者にかかる」
のがいいことは言うまでもありません。

例えばこれが顕著なのは外科の場合です。
外科手術の腕ははっきり申しまして
「こなした症例数」に比例します。
(まれに症例をこなさないでも異常に手先が器用な人も
いるかもしれませんが、
「センセイは手先が器用な方ですか?」
なんて聞く勇気のある患者さんはいませんよね)

とある胸部外科のお医者さんが
「アメリカの胸部外科の連中は、
まだ30過ぎのお兄ちゃんみたいな奴でも
めちゃくちゃ手術が上手いんだよな。
こなしている件数の桁が違うからな」
ということを漏らしていたのですが、
これは紛れもない事実です。
高度医療がセンター化されているアメリカでは、
心臓外科の専門医を名乗るには
年間200件の手術をこなさなければならないとのことです。
日本国内ではそれほどの症例をこなしている人には
そうそう巡り会えないのが現状です。
(これは医者の怠慢と言うより、医療施設の形態の違いから
くるところが大きいのです。
だからお医者さんを責めないで厚生省を責めましょう(笑))

ともあれ、外科ではお医者さんを比較する場合、
「こなした症例数」をめどにするのが良いと思います。
だから一部のチェーン展開している美容外科などは
この点で論外であることが分かるでしょう。
なぜなら、チェーン展開するには相当数の医者が必要ですが、
そのために募集する医者は美容外科(形成外科)
として症例数を多くこなした人である可能性は極めて低く、
(実際にこういう病院の求人広告では
“経験不問”に近いことが書かれている)
技術が伴わない可能性が大だからです。
ちなみに美容外科の場合、大学で技術を習得して、
個人で小さなクリニックを開いているような人の方が
安心できるということを形成外科の先生が
おっしゃっていました。

内科系では少々事情が違いますが、
こちらもこなした症例数が重要なことは
言うまでもありません。
こちらの場合にはそれにプラスして、
他の点も重要になってきます。

ある内科のお医者さんが
「だいたいさ、
学生時代から試験前にしか勉強しなかった連中がだよ、
医者になったら突然勤勉になるって、相当なことがない限り
難しいことだと思わないか(笑)」
と語ってくれたのですが、
扱う病気の種類が全身に及ぶ内科の場合、
診断技術をブラッシュアップしたり、
最新のデータや知識を習得する
というような勉強を怠っていると
自分の専門範囲だと思っていた患者に
ちょっと他の疾患が絡んできたりした時に、それを見逃したり、
今まで知られていなかった薬の副作用に
無頓着になってしまったりするなんて恐れもあるでしょう。
5年前まである病気に使ってはいけないとされていた薬が、
現在は治療薬としてまかり通るなんてことがある
(もちろんその逆もある)世界ですから、
最新の知識を仕入れていないと、
新しい治療法を行うことができない
なんてことも考えられます。

だから、内科のお医者さんを選ぶ基準は、
自分の専門に精通していることと同時に、
勉強家で全身の疾患や色々な薬に精通していることも
重要になってくるというわけなのです。

さて、以上をふまえて「具体的にどういう医者を選ぶか」
ということに関してですが、
これは正直言って非常に難しい。

一つおすすめしたいのは、重篤な病気にかかっている場合、
いくつかの医者を回ってみることです。
できれば、違った科の先生の意見を聞いてみることも
いいかもしれません。
それで、以上僕が述べたようなことを、
目の前の医者のプライドを傷つけないように
(↑これがポイント。医者は概してプライドが高く、
自分の専門領域には自信を持っている)
小出しに聞いてみて、
「ああ、それだったらあの先生がいいよ」
という一言を何とか引き出すしかないでしょう。
で、うまくいけば紹介状も書いてもらう、と。

また、最近売り出している『病院ガイド』みたいなものも
参考になるでしょう。
特に、特定の設備やスタッフがないと
できない治療法をやっている病院を探すのに
こういう本は役に立つと思います。
ただし、個々の医者の能力については
こういうガイドには記載されていないので、
医者の専門分野を知るのにはよいでしょうが、
それ以外の情報を得るのは難しいでしょう。

あとは巡り会わせとしか言いようがありません。
いいお医者さんと巡り会えるよう、
みなさまの幸運をお祈りいたします。

1998-11-11-WED


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