Dear DoctorS ほぼ日の健康手帳 --医師の本田美和子さんといっしょに、  「自分を大切にするための道具」をつくりました。
糸井 ぼくは毎年、人間ドックを受けているんですけど、
その結果って、あんまりちゃんと見ないんですよ。
おおむね、おれはどうなの、ってことだけで、
じゃ、健康ね、って言いたいだけなんですよね。
あんまり勉強したくもないし。そんなふうだから、
最初の最初は、あんまりピンときてなかったんです。
だけど、
「転ばないでください」というページを見たとき、
あ、これはみんなが持ってるべきものかもしれない、
って思ったんです。それではじめて、
本田さんが紹介してくれた「大事な友だち」が
ぼくにとっても「友だち」だってことが、
わかったんですよ。
で、ぼくはぼくで考えるわけ、
このずっしりした本田さんの研究の成果を、
いったいどうすればいいんだろう、って(笑)。

きっと、ここにおさめられている要素は、
それぞれに大事な意味があって、
その一つひとつについて、本田さんはいくらでも
詳しく説明してくれると思うんだけど、
でも、そういうことじゃなくて、
どうも、この分厚いファイルの奥にあるのは、
万人にとって必要なものらしいなぁ。
なにをどうするかとか、まだわからないけど、
ぼくらはこれをやるべきじゃないか、
「転ばないでください」がきっかけで
そう思ったんですよ。
本田 うれしいです。
お年を召したかたが転ぶということが
どれほど危険かというのは、
ほんとに知っていただきたいことなので。
糸井 でもまだ、どうしたらいいのかわからなくて、
次に、
「これを持っていると、どんないいことがあるんですか」
って、訊いたんですよね。
ぼくがわかれば、きっとほかの人にも
わかるだろうなと思ったので。
そうしたら、「3分医療」の話になったんですよ。
本田 ええ。
糸井 お医者さんというのは、
はじめて会う患者さんの健康の基本的な情報を
まったくわかっていない、ゼロの状態からはじめると、
ずいぶんと遠回りになって、遠回りした結果、
重要なことを聞き出せないままになりがちだと。
病院の診察時間が全体的に短くなっているなかで、
患者さんが自分の健康のメモを持っていて、
それをもとに話をすれば、
みんながもっと、自分にとって切実な医療にいける。
そういうことでしたね。
本田 ええ、そうなんです。
糸井 それを聞いて、
そこに絞るべきじゃないかな、って思ったんですよ。
とにかく「ちっちゃく、薄くなりますかね」と言って、
できるかどうかわからないけれど、
まずは試しに、ぼくらのほうで
やってみることにしたんですよね。
本田 はい。
糸井 ぼくがイメージしていたのは、
「ほぼ日手帳」にはさめる、小さくて薄いもので、
大事なのは、これを手にした人が、いらない、って
つっかえすようなものじゃないようにすること。
表情をつけるために、
イラストレーターの江田ななえさんの絵が欲しいなぁ、
つまり、捨てにくい可愛さを出したい。
そうやって、まずつくってみようよ、って、
はじめたんです。
あれだけいっぱい書いてあることを
こんなに少なくしてしまったら、
本田さんは泣いちゃうかもしれないな(笑)、
と思ったんだけど、
本田さんがいいって言う範囲で、
少なければ少ないほどいいなと思ったんですよ。

それから、少し時間をおいて
ぼくらが構成してみたものを見てもらったら、
本田さんはこれでいいって言ってるというし。
あぁ、じゃあ、接点あるなぁと思って
いまの形に至ったわけです。
で、本田さんはどうしてこれを、
合格と言ってくれたんですか。
本田 あれ(健康手帳の原型のファイル)を渡されたら
だれでも途方にくれると思いますから(笑)。
糸井 だって、あんなにあったものが、
こんなに小さくなっちゃったんですよ?
本田 からだのことって、
やりはじめたらきりがないんです。
医者が患者さんを診るときに、
いちばんはじめの段階で、
これだけわかっていれば、
患者さんの時間を有効に使うことができる、
その内容としては、これで十二分です。
糸井 それは、何科のお医者さんであっても
そう思うものですか。
本田 そうだと思います。
糸井 実際に自分で書き込んでいくことを考えると、
ある程度の知識がいるようなことも、
あると思うんです。いま書けない部分は
そのままにしておくぐらいの気持ちで、
まずは、みんながこれを持って、
これについて話をしたりすることが、
第一歩でしょうかね。
本田 そのとおりですね。
糸井 うん、でもすくなくとも健康診断を受けている人は、
書き込めますよね。
本田 そうですね。人間ドックの結果でも、
何か気をつけるように言われたことがあれば
ここに書いておいて、
なければ何も書かないでいていいと思うんです。
細かい数値をすべて書いておく必要はないですから。
糸井 アレルギーを書いておくのは重要ですよね。
ぼくはぜんそく出身なので、
これに関しては実感がある。
本田 そうです、アレルギーはすごく大事です。
この手帳にも書く欄をしっかりつくってあります。
糸井 ぼくがなぜこの健康手帳をリアルに思うかって、
自分自身が「ぜんそく手帳」をつけていたおかげで
ぜんそくが治ったからなんですよ。
本田 ピークフローも毎日つけてらしたんですよね。
(ピークフロー:ぜんそくの状態を把握する指標となる数値)
糸井 そう、まじめにまじめに、
ぜんそく手帳をつけてたんです。
それがあったので、どの薬がどうだというような、
「データが大事」だということがよくわかったんですよ。
ぜんそくのころ、肋骨が折れたんですよ、咳で。
あんまり咳をして、横隔膜がはげしく動いて、
痛いのは神経痛かと思ったら「骨が折れてますね」って。
本田 スケート選手の清水宏保さんと対談もされてましたね。
糸井 あの対談は、ぜひやりたかったんです。
ぜんそくだった人間のひとつの義務じゃないけど、
ぜんそくのときに、自分が希望をなくしていたのを
覚えているんでね。
治るという話を聞くだけで、ほんとにうれしいんです。
清水さんのことも、ものすごく尊敬してますもん。
現役のスケート選手ですからね。
本田 ほんとですよね。
寒いところは発作もでやすいと思うんですよ。
糸井 みんな、自分はアレルギーはないと思っているけど、
花粉症の人は、アレルギーを持ってるってことですよね。
花粉症の人はこの健康手帳に、
「花粉」って、書くことがすでにある。
本田 それと、いまどこかの病院に
定期的に通っていらっしゃるかたは
ぜひこれにまとめておくといいと思います。
もし、いくつかの病気をおもちだったら、
別々の病院に通っていることもあると思いますが、
それをそれぞれの医者は知らないこともあるので、
いまある病気はこれで、かかりつけの病院はここで、
飲んでる薬はこうなんです、ということを
この1冊にまとめておいていただくといいと思います。

そして、さらに新しい病院に行くことがあれば、
これを見せることで
はじめて会うお医者さんとの時間を
自分のからだのことを相談するために
ゆっくり使うことができるようになりますから。
(明日につづきます)


2008-12-11-THU