ITOI
ダーリンコラム

<吉本隆明さんと、新しい本をつくります。>

『悪人正機』という本をつくる過程で、
吉本隆明さんの話をお聞きするために、
なんども、ご自宅におじゃましました。

それまでにも、なんやかんやと、
お寺のお坊さんを訪ねる近所のおにいさんのように
(いや、いまじゃ、おっさんのようにですが)、
吉本さんにおつき合いいただいてきました。

来年に、吉本さんといっしょにする仕事を
思いついたので、
また、お宅に通うことが多くなりそうです。
出来上がりは、かなり先のことになりそうですが、
ぼく自身にとっても大事な仕事になると思います。
ふたつ、考えていることはあるのですが、
ひとつは『学校の先生へ』という仮題の本です。
ぼくは、いつか『今日のダーリン』にも書きましたが、
学校の先生から、ずいぶんたくさんの贈り物をもらって
育ってきたと思っています。
吉本さんの話のなかにも、
よく下町の塾の先生のことや、
東京工業大学の数学の先生の名前がでてきます。

「先生」のことを、
根っこのところから考えるような本を、
たくさんの人たちの「先生」でもある吉本さんと
つくろうと思いました。
内容について、細かくは記しませんが、
ぼくなりの質問の構想はできあがってきています。
これも仮ですけれど、帯のコピーまで出来てます。
『いいわるい先生と、わるいいい先生と、ふつうの先生』
ま、中身が出来たら変えるかもしれませんけどね。

いわゆる「いい先生」という
理想像(というか呪縛)から、
どれだけ離れられるかが、勝負だと思っています。
ま、吉本さんの口からなにが飛び出すか、
それ次第で、こんなコンセプトも
変わっちゃうかもしれないんですけどね。あはは。

やることだけ決まって、
なにも進んでない本のことを、
こうやってここに発表してしまうのは、
けっこうわざとやっていることです。
他のどんなに大事そうな仕事があっても、
これを後回しにしないぞ、という気持ちがあるんです。
こんなふうに言っちゃったら、
後には引けませんからねー。

完成してから突然に発表してサプライズにする意味も、
あんまりないような気もするし、
この内容で、このチームでというプランを
まねする人も出版社もいないだろうし、
たのしみにされたいというつもりもあって、
あえて、書きました。

たぶん、まだ「たのしみにします!」という人の数も、
そんなにたくさんはいないようにも思います。
ちょっと興味がでてきた、という人は、
大きな予告編を見るような感じで、
『悪人正機』という本を読んでみてください。
つくったぼく自身が、何度も何度も読んで、
読んでないときにも思い出しては考えている本です。

ぼくの考えの、とてもたくさんの部分は、
吉本さんの考えの「へたなパクリ」なんですから。

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2006-12-04-MON
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