ITOI
ダーリンコラム

<起き抜けの清々しい気分>


寝起きってのは、どういうもんだ。
なぜに、人は寝起きの機嫌の悪さを許すのか。
寝起きだから頭が働かない、という言い訳も同様である。

科学的に説明すれば、できないこともないようで。
要するに、脳が栄養として必要としているのは
でんぷんが分解されてできた
グルコース(ぶどう糖)というやつだけだ。
眠っている間にも脳は活動しているから、
当然、体内のグルコースは消費される。
6時間とか8時間とか、寝てるときにはメシも食わないから、
目覚めたころには、グルコースが足りなくなっていて
脳がすっかり腹を減らした状態になっているわけだ。

よくある寝過ぎて疲れるというのも、
このことと関係がありそうだし、
朝に「おめざ」とかいって甘いものや果物を食べるのも、
脳に糖分あたえてやるための昔の人の知恵だ。

脳の働きが寝起きに低下しているってのはわかるけれど、
脳以外の働きも、低下してるんだよなぁ、寝起きは。

たぶん、人間には誰しもそういう傾向があって、
そのことを理解しあっているから、
「寝起きの不機嫌」を許し合ったりしているのだよな。

おっと、これでおしまいになっちゃう。

そうじゃなかった。
もっと言いたいことがあったような気がする。
つまり、その、オレは寝起きが悪いということか?
それだけじゃない。
寝起きに弱い、ということかもしれない。

いまの時期だと、部屋に冷房がないと暑くてしかたない。
だから、先に起きた家人が冷房をつける。
しかし、その冷房、弱めにかけているはずなのに、
寝起きのぼくはクシャミをするのだ。
寝起きでなかったら、なんでもない室温なのに。

そうそう、そういえば、
かつてぼくはアレルギー性鼻炎だった。
これも、朝、起き抜けのときがいちばんひどかった。
とにかく寒いような感じで、くしゃんくしゃんと、
クシャミが止まらなくて難儀したものだった。
寝起きのときだけ、ぼくは特別に弱いのだ。

だーから、朝が苦手になったのではなかったか。
夜中から向かう朝には、なんでもないのに、
起きたばかりの朝には、さまざまな苦労がある。
それで朝型の生活から逃げ出したという面もありそうだ。

そしていまでも、起き抜けは不調である。
いつまでも寝ていれば不調でないタイミングで
起床できるのかということでもない。
いつでも、起き抜けがダメなのだから、
何時間余計に寝ようが、ダメなのだ。

ってことは、ぼくのジンセイは、毎日毎日、
スタートからよろよろしているということになる。
大損害ではないか、これは。

寝起きのいい人というのも、たしかにいる。
「おはようっ!」と清々しい。
あっちのほうが、人として優れていると、ぼくは思う。
彼や彼女の脳だって、寝ている間にグルコースが消費され、
起きたときには脳が栄養不良になっているはずだろう?
なのに、どうして、あんなに清々しいのだ。
「朝早くのほうが、勉強や仕事の能率が高い」と、
当たり前のように言ってくれたりもするのだけれど、
そういうふうに実感したことがないのだ、ぼくは。

でも、そうなってみたい。
早起きして、
「やっぱり、朝型になって絶好調だね」と、
周囲の人たちに何気なく自慢してみたい。

なーーーーんか、コツとか秘密とかが
あるような気がしてならないので、
いずれ、ぼくもその清々しさにたどり着くと思うのですが。
知ってる人は、ぜひ教えてください。

なんてことを、夜中の4時過ぎに書いています。

2002-07-29-MON

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