ITOI
ダーリンコラム

テレビというメディアとつきあうときには、
自分の沸騰点を、
いくらかでも下げて設定しておかなくてはならない。
喜怒哀楽の感情を、いつもより多く表さないと、
「変人」に見えてしまうからである。
ま、それをキャラクターにしている人なら、
無表情でもいいのだが、
普通の人が普通にしていたら、絶対に普通には見えない。

タレントという職業の人たちは、
生まれつきその沸騰点の低い人と、
沸騰点を自由に設定できる人とがいる。
どちらにしても、テレビカメラが回りだしたら、
その場の喜怒哀楽の沸騰点は急速に低くなるのだから、
その温度を「その場のルール」にしなくてはいけないわけだ。

このほうが、うまくいくのだったら、その邪魔をするのも
大人げないというわけで、ぼくも、できるかぎりは、
「場の設定した沸騰点」に気をつけるようにしている。
(ただ、このごろは、広告のプレゼンテーションの場まで、
沸騰点が妙に低く設定されてきていて、気持ち悪い)

今週末(12日・土曜日)にオンエアされることになった
NHK教育テレビの「未来潮流」という番組については、
当のスタッフがレポートを書いてくれているので、
詳しくはそっちを読んでほしいのだが、
ぼくはぼくで、ちょっと書いておこう。

はじめに、この番組が「企画の候補」であった段階で、
ぼくは、ひとつもウソをつかないで
この企画につきあおうと思った。
喜怒哀楽の沸騰点を下げないということは、
ウソをつかないということとはちがうかもしれないが、
そのへんのルール設定から、
いろんな「ヘンなこと」が起こるものなのだ。

村山ディレクターのことを
「ぼーっとした女子高生」にヒントを得て、
「くうき」と名付けたのにも、理由があった。
彼には、とにかく、
どこもかしこも自由に出入りしてもらっていい、
いつどこにいてもいい、
そのかわり、邪魔にならないように
「空気」のようにいてくださいと、
お願いした。
「インターネットは夢の世界」でもないし、
「ほぼ日刊イトイ新聞」が、
「たのしい未来的な組織」であるともいえないし、
ここに出入りしている関係者が
性格のいい優秀な人々であるとも限らない
(ごめん。文脈的に判断してね)。
いつでもどこでも、に、「空気に変装した取材者」がいたら、
ぼくやスタッフがいくら繕っても、
いつかはぼくらの欠点が見えてくるだろう。
そこまで見せないと、
ぼくらのためにも視聴者のためにもならないのではないかと、
思ったからだった。

おそらく、土曜日にはじめて観ることになる
「ほぼ日」を主役にした番組は、
素人まるだしのぼくらが、どたばたやっているところや、
青臭い夢想家なのか詐欺師なのかわからないようなイトイが、
くたびれた受験浪人のような姿で、眠い目をこすりながら
法螺を吹いているところばかりが目立つことになるだろう。
しかも、沸騰点は日常と同じだから、「暗い」かもしれない。

それでも、今回ほど大勢の人たちに、
自分の出た番組を観てください
という気持ちになったことはない。
観て、がっかりしたら謝ります。
ぼくたちは、まだ、
その程度の力量しかないということなのです。
そうそういうことがばれてもいいから、
みんなに観てほしいのです。

たぶん、「世界ふしぎ発見」が、
時間帯的にはライバルなんでしょうが
(友だちがやってるから悪いなぁとは思うんですが)、
NHK教育テレビの「未来潮流」のほうを観てください。
お願いします。

1998-09-14-MON

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