ITOI
ダーリンコラム

<苦労しらずで肥れる! 間食肥満法>

(まずは、先日の『今日のダーリン』より)
・続けようかなと、考えているもの。
 『宣伝会議』車掌、いや、社長の東さんが、
 妙にスッキリしていたので、理由を訊いてみたら、
 「万歩計」をつけて、
 歩数の記録をつけているとのこと。
 10キロも痩せ、とても快調だと
 熱弁をふるってました。
 『ダ・ヴィンチ』の編集長、横里さんも、
 半年くらいやっていたけど、
 とてもよかった、と‥‥。
 もちろん、入手しました「万歩計」。
 おおぜいが始め、おおぜいが効果を認め、
 おおぜいがいつの間にかやめた
 「英会話」のようなもの。
 その名は「万歩計」。


「1日1万歩」というのは、
なんとも魅力的な響きだった。
激しく体力を使うわけでもなく、
金銭的な負担があるわけでもなく、
老若男女すべての人が実行できて、
健康によくて、美容によくて、
たぶん精神的にもいいことがある。
実際、歩いているときに、
ナイスなアイディアが浮かぶということは、
前々からわかっていたことだった。

これまでにも、何度か「ウオーキング」については、
ほめたり考えたり、実行したり、やめたりしてきた。
そして、またまた、その気になるときが来たのだった。

金曜日に「歩数計」を手に入れて、
土曜と日曜は、それを着けて歩いてみようと思った。
ぼくは“急がば回れ”を座右の銘にしている
“善は急げ”な人間なのです。

まず、土曜日。
午前中に、
表参道駅のあたりから、代々木公園まで歩いて、
代々木公園のなかをしばらく散歩して、
そのまま表参道に戻ってきて、
「これでもう12000歩くらいになったかな」と
「歩数」の表示を確認したら、
約6800歩にしかなってなかった。
夕方になってから、また青山墓地に行って、
近所をぐるぐる回って歩数を足し、
なんとか深夜に1万歩を超えることができた。

日曜日は、
表参道から広尾の駅に向かって、
とどめだとばかりに有栖川公園を歩き回って、
帰りも決してタクシーを拾うようなことをせず、
生真面目に歩いて帰ってきたのだけれど、
これは、6000歩に満たなかった。
土曜日よりあきらかにたくさん歩いたつもりなので、
カウンターがちゃんと回ってなかったのか、と、
少し疑ってもみたのだけれど、
家の中で歩き回ってたしかめてみたら、
それなりに正しく数字を刻んでいた。
この日も、夕方にもういちど、
それなりの散歩をして、一万歩の帳尻を合わせた。

で、その土曜と日曜の「万歩生活」を終えて、
わかったことがあったのだ。

「さぁ、おれは1万歩を一気に歩いてくるぞ」
とばかりにまなじりを決して歩き出すよりも、
あちこち小まめにちょこちょこ歩いているほうが、
歩数が稼げているということが、実感としてわかったのだ。
たぶん、ファミリーレストランでバイトしている人だとか、
あんまり苦労したというつもりもなく、
1万歩を歩いているのではないだろうか。
「だーっと点数稼ぎをして、あとは休んでる」というような
短期集中型の歩き方は、結局、
総合的には歩数が稼げないのだ。

これを、ぼくは「間食」と同じだなと考えた。
多くの現代人が、
自分のボディが一日に必要としているカロリーを、
上回るカロリーを摂取している。
カロリー過剰が、常態化しているのだ。
そこで、食べ方や、食べる量などを考え直すことで、
カロリー管理をしようとする。

カツ丼は800カロリー近いんだとか、
おにぎりが150カロリー程度だとか、
それなりに記憶しはじめて、
ざっと計算ができるようようになる。
ものすごく乱暴に言うと、
ふつうに仕事している成人男性だったら、
一日3回カツ丼を食べても、
熱量としては2400カロリーにしかならない。
しかし、間食としていかにも軽そうな
スナック菓子だとか、菓子パンだとかを
ちょこちょこと食べていたら、
1000カロリーくらい摂るのは、たやすいことなのだ。
あんまん1個と、肉まん1個食べたら
もう軽く600カロリーを超える。
それにせんべいが2枚ほど加わったら、
100カロリーはすぐに上乗せされる。

だから、しょっちゅう何かを食べているという人が、
いちばん「(肥るために)いい感じ」で、
カロリーを摂取しているということになる。

つまり、
「苦労しらずで、どんどんデブになれる!
 間食肥満法!」
というようなキャッチフレーズが成り立つわけだ。

生活のなかに、少しずつ組み込まれているものは、
積み重ねられてかなり大きな分量になる。
そういうことなのだなぁ、と思ったのだ。
一夜漬け的に徹夜で試験勉強したところで、
成績に反映されることは難しい。
しかし、毎日少しずつでも、
勉強がクセになっている学生は
いつのまにか実力がついている(んだと想像する)。
これだって、間食でカロリーを摂るのと同じリクツでしょ。

仕事でも、似たようなところがあって、
「楽しそうに、ちょこちょこと
 自分のいまやっている仕事について立ち話している」
なんていう環境が、いちばんいいように思う。
もちろん、合宿みたいに、
一気に土台の部分をセットするようなことも必要だけど、
遠くまで伸びていく仕事というのは、
やっぱり積み重ねのおかげでできているのだ。

(いつやめてしまうのか、自分でも心配なので、
これは言いにくいのですけれど)
DSの『えいご漬け』を初めて、約1ヶ月になった。
最初、当然のように最低からスタートしたのだけれど、
毎日10分くらいずつやり続けていたら、
それなりに進歩しているのが、わかるようになった。
これも、間食でカロリーを摂るのと同じようなことだ。

いいことも、わるいことも、
毎日ちょこちょこと積み重ねていくのは、
どうやら、すっごいことになるみたいだ。
「ほぼ日」が8年半も、毎日更新し続けていることを、
たまにちょっと自慢そうに言ってしまうのだけれど、
これだけやっていると、たしかに、
なにかしらの力はついているようにも思える。

間食で、のべつムシャムシャやっているような感じで、
歩くことや、学ぶことや、考えることがやれたら、
「いいことの大肥満体」になれるかもねー。
あんまりいい表現じゃないけどさ。

『歩数計』や、『ウオーキング』については、
とても興味があるので、もう少し、
しつこくいろいろ考えてみたいと思っています。

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2007-01-29-MON
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