・先月、夕方のテレビで偶然見ていて、
 なんども人に話している場面があります。

 味噌や醤油をつくってきた老舗の会社が、
 あの日の地震と津波に襲われ、
 すべての生産手段が破壊されてしまったのでした。

 工場の跡地に、従業員たちが集まっています。
 着の身着のままという感じです。
 おそらく、そこにいる人たちの周囲には、
 さらに大きな被害があったのだと想像します。
 社長が、包みを抱えてやってきます。
 「みんな、これがなんだかわかるかー?
  給料袋だぞぉ!」
 そう言って、紙袋を渡していきます。
 
 そして、そこにしゃがんでいる社員に向って、 
 「見た通り、(何代も続いてきた)この会社は、
  味噌も醤油もつくれなくなった。
  でも、かならず立ち上がるからな。
  町の人たちも、少しずつ戻ってくるから、
  そのときに、ここにいて、何でも売ろう。
  そうやって生きていこう」
 というような内容のあいさつをした、そんな場面‥‥。
 
・社長のいちばん大事な仕事というのは、
 「ちゃんと給料を払うこと」なんです。
 まず、瓦礫に囲まれた元工場で、それを実行している。
 そして、「町の人たち(お客)」に「何でも売ろう」
 というのは、まさしく「顧客の創造」です。
 味噌醤油という武器が奪われても、
 新しい顧客のための、新しい仕事を創ろうとしてます。
 最低限できることを、確実に、あの環境でやっている。

 ぼくら、境遇はちがうのですが、前代未聞の大震災の後、
 「この社長のように考えよう」と思いました。
 なにがどうなるのかはわからないけれど、未来に、
 「この震災やら原発事故やらで、おれたちは倒れた」
 なんて絶対に言いたくないからね。
 「あいつら震災のせいで、妙に強くなりやがった」と、
 悪口言われるくらいの「ほぼ日」になってやります。
 
今日も「ほぼ日」に来てくれて、ありがとうございます。
しぶとく生きて、しつこく支援。長丁場だ、健康でいよう。