2010年12月31日の「今日のダーリン」
池谷裕二さんの研究室で、実験中の
 「脳の細胞の動き」を見せてもらったことがありました。
 たぶんラットの細胞なんだろうけれど、
 顕微鏡で見るその世界は、
 まるで宇宙船から見た地球の光のようでした。
 
 ランダムにあちこちが発火し点滅していて、
 そこやここが、たがいにくっつこうとして
 触手を伸ばしあっているような、そんな光景。
 
 あの顕微鏡のなかに見えた「世界」が、
 忘れられません。
 じぶんなりの直感ではあるのですが、
 「わたし」も「せかい」も、
 「これだったのか」と見えたように思えました。
 
 点滅してる。
 くっつこうとして
 気配のする方向に手を伸ばしている。
 
 それが、生きることであり、
 それが、生きものであり、
 生きものがつくっている社会なのか。

 
 わかったようなことを言ってるみたいですが、
 ぼくの素敵な悪夢を語っているだけですから、
 ここはひとつ、かんべんしてください。
 一年、太陽のまわりを、地球が一回りしたことを、
 しみじみ思う大晦日に、
 なにを書こうかなぁと考えていたら、
 あのときの顕微鏡のなかに見えていた世界が、
 「書いてくれ伝えてくれ」と言ってるような気がして、
 よろこびと共に記しました。
 
 とても具体的に起こっていることを、
 ありふれた生きもの脳のなかで、
 いつも起こってることを、ただ、見た。
 それだけのことなのですが、そうは思えませんね。
 ぼくも点滅してます、手を伸ばしています。
 さぁ、太陽のまわりを、もうじき次の一周です。
 
今日も「ほぼ日」に来てくれて、ありがとうございます。
伸ばした手が、あなたからの手と結べますように。