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「今日のダーリン」

台湾の仕事と聞茶

読者の方から、今年の2月3日の
「今日のダーリン」を、というリクエストがありました。
なになに?と見てみると、こんな話がありました。
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そういえば、去年、台湾に行っていた仕事が、
もうオオヤケになりました。
『悲情城市』や 『冬冬の夏休み』の
候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督で、井上陽水出演。
そうです、テレビで流れはじめている『聞茶』のCMです。
おそらくオンエアの量もけっこうあると思いますので、
あの撮影現場のカメラフレームの外側、見えないところに、
イトイが隠れているんだなぁとか、
余計なことを想像してください。
ロケバスの中での会話の一部再録。

糸井「長生きとかって、興味あるんだ。
   その長生きって、井上的には100年以上とか?」
井上「・・・300年とか・・・そのくらいかな」

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あ、CMはみなさんご覧になりましたか?
CM中の風景だけのショットを一瞬みて、
これは、候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の映画は
みておかねばならない、と思ったのでありました。

さて、じゃあ、台湾でのdarlingはどうしてたんだろう??
ちょっと過去帳をひも解いてみましょう。

まずは、2001年の12月18日〜12月21日までの
台湾から苦労の末に送信された今日のダーリンです。
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ほぼにちわ。darlingdarlingです。
心配していたとおり、通信環境がぐちゃぐちゃだった。
いま、深夜の1時くらいなんだけれど、
これをタイピングしているのは、
いざとなったら、ここでタイプした原稿を手書きで写して、
明日(今日の朝ですね)ロケに出発する前に、
フロントの人にファクシミリで東京に送ってもらうためだ。
えー、ここは台湾の山奥であります。
飛行機の着陸した台北からクルマで4時間。
備え付けの観光パンフレットを見ると、
日月潭という有名な湖が近くにあるようだ。
「日月潭」というラーメン屋が青山にあったけれど、
値段がむちゃくちゃに高いわりにうまくない。
(これは八つ当たりである)
日本で「環境設定」してきたはずだったけれど、
まったく箸にも棒にもかからない状態で、
ロケのコーディネーターの女性が、
「コウヤッテミタラ、ドウデショウ」という
摩訶不思議な指示にしたがって、とんでもないことを
やっていたら、どういうわけか、つながったのでした。
アクセスポイントの電話番号から、市外局番を削除したり、
ホテルの外線番号の9の次にカンマを挿入したりするんだ。
なにを意味しているのかわからない謎の手続きだったけど、
<ワラにつかまろうとする水死体>のような了見で、
やってみたら、なんと「ぴ〜ぎゃーりぎゃりがりる〜」と、
ネットに接続できた音が聞こえてきたのでした。
アナログ回線で、300通ほどのメールを受信して、
いったん接続を切って原稿を書きはじめるつもりだった。
「待てよ」と思い、もう一度接続にトライしてみたら、
ああ、またまたつながらない!
もう、あとは野となれ山となれという気持ちで、
こうして、原稿を書いているのです。
・・・しかし、あらまっ!
いま、またつながったぞ!
もう、電話料金をケチってなんかいられない。
接続しっぱなしにして、原稿を書いてやる。
接続の鬼になってやるんだ、ワシ。
と、ここまで書いていたら、電源が切れるとアラート。
電気の来てないコンセントにつないでいたらしい。
テレビのコンセントを引っこ抜いて、こっちを差し込んだ。

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アナログ回線で遅いことは遅いけれど、
なんとかネットへの接続が安定してきた。
ただ、早朝から夜まで、チームでの動きが多いので、
メールを読んだり、原稿を書いたりする時間がとりにくい。
昨日は、いつもの東京ペースで朝方まで
パソコンの前にいたのだけれど、
それだと、出発時刻の午前6時とかまで
睡眠時間がとれないことになってしまう。
つながったからって、いい気になって
いつものようなことをしていてはダメだと知る。
夕方、小一時間ほど空き時間があったので、
よろず屋のような店で安い釣り道具を買って、
雨の中で、ちょっとだけ釣りを楽しんだ。
(昨日は、近くに『日月潭』という湖があると書いたけど、
 朝起きて窓の外を見たら、なんと、
 ホテルは『日月潭』の湖畔に建っていたのだった)
エサやらハリやら仕掛けやらのなかから、
どういうものを選ぶのか、ここで釣果が決まると思った。
ヤマベを狙うのに、レンギョ用のセッティングをしたら、
釣れるはずはないし、フナを釣るのにコイの仕掛けは違う。
店のばあさんに訊いても、まったくわからないので、
「何だか知らないけれど小魚やエビを食べる魚」を
対象にすることに決めた。
ところが、それをするためのエサもルアーも売ってない。
これだけでかい湖に草食の魚ばかりというはずはない。
釣具の隣りに、肉や魚を売っていたので、
ぼくはイカとハサミを買って、イカでルアーを作った。
こいつにチヌ用のハリを付けて、玉砕してみよう、と。
そしたら、あんた、来たよ来たよ!
ぐぐっと強いアタリがあって、
フッキングはできなかったけれど、イカルアーに、
なんかしらの魚が食いついてきた。
結局雨もひどくなったし、30分くらいで竿を納めたけど、
あのアタリは、うれしかったなぁ。
明日こそ、とも思うのだけれど、明日は5時起きでロケ。
そのまま夜に4時間かけて台北に向かうので、
日月潭の魚の顔を見ないで、ぼくは去ることになった。

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また朝早いロケ現場への出発なのに、
ついつい、日本にいるような気持ちで、
メールチェックしたり原稿を書いたりしている。
移動のバスの中が、現在のぼくのベッドだ。
昨夜、台中の先の山奥から、大都会・台北に入りました。
都会はいいなぁ。
「まごころとか、愛情とかいらないから
 陶器の食器で、キレイでうまいものを食わしてくれー」
という気持ちになるは、カミサマ、悪い子でしょうか。
悪い子です。わかってますとも。
ロケは、とても順調です。
詳しいことは機密保持って感じで、言えないけれど、
順調以上、のいい感じで、うれしいです。
撮影現場のひと休みの時に、同世代の人と、
中学や高校時代に流行していた歌を、
思い出しながら歌ったりしています。
「3日前のことも忘れちゃうのに、
 どうして、こんなに憶えているんだろう」
なんて言いながら、記憶の沼地を浚渫して遊んでいます。

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テレビで流れてるCMを見るたびに、
darlingの通信トラブルをあたまにおもいうかべて
しまうのでありました。

それでは、また!

いままでの「今日のダーリン」で「こんな理由でよみたい」
というものがありましたら、
postman@1101.comへ、
タイトルを「いままでのダーリン」としてお送りください。


2002-02-24-THU
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