ぼくは、水野くんに
誕生日に作ってもらったカレー以来、
「いい加減にする」って方法で、
こうなったんだよ。
市販のインスタントカレールーを使いましたね。
それがうまかったんです。
で、水野さんたちは、
最後にインドアメリカン貿易商会
ガラムマサラを入れたんだよね。
あれを入れるといいんだ、
っていうことが分かったんだけど、
あれだけだとやっぱり物足りないんだ。
いつも同じになっちゃうんで。
うん、そうですね。
それで、気分によって、
S&Bのカレーパウダーを足してみたり、
C&Bを使ってみたり。

── インスタントカレールーは、
糸井さんちでは決めてるんですか。
うちはね、あんときの食べ比べで、
ハウスバーモントカレーがおいしかったんで、
それでやってたんだけど、
飽きないように、時々、ほかの銘柄を。
混ぜるんですね。
ただ、調合スパイスが勝っちゃうからね。
インスタントカレールーは
やっぱり材料だなあ。
── 飯島さんは決めてらっしゃいますか?
私は決めてないんですけど、
2種類ぐらい、混ぜるんですよ。
でも確かに、ハウスバーモントカレーは
自分に合うような気がします。
何か落ち着くというか。
実家がそうだったってことないですか?
そうです、そうです!
それがいちばん大きいんですよね。
それにしてもインスタントカレールーって
各社がすごく工夫してますよね。
ですよね。
いや、もう、すっごいですよ。
ほんとね、すごいと思います。

(笑)。
ほんっとに!
外国人が日本のおみやげに
買ってくぐらいですもんね。
そうそうそう。
── いわゆるカレールーは、
固形の練りタイプと、
フレークタイプがありますね。
フレークって増えましたね。
フレークってこれを削ってあるってこと?
簡単に言うとそうです。
── スパイスが足し算できるみたいなものもあります。
そうそう、ちょっと楽しいですね、それは。
「うま味」があるんですよね、
インスタントカレールーには。
それが日本のカレーの特徴だと思うんです。
── 飯島さんは「LIFE」でも
メーカーの異なるカレールーを
2種類入れましょうと。
要するにややこしくしましょうってことですね。
はい、何か奥行きが。

でもね、そうなんですね。
ややこしいのを、おいしいと感じるんですよ、
日本人は。
その複雑さを「こく」というふうに
とらえるみたいで。
おふたりは、いろんなカレーが
好きだと思うんですけど、
「これがいちばん好きだ!」っていうのは
もう決まっちゃってるものですか?
あ、でも、うーん?
大人になってから食べたタイカレーもおいしいし、
インドカレーもおいしいと思いますし。
どれもいい?
そうです、どれもいい。
でも1つにしろって言われたら、何ですか?
1つにしろって言われたら、
やっぱり日本のカレー。
日本の「私の」カレー?
私じゃなくても、
たとえば母が作ったのでも。
母は私ですね。それは。
(笑)はい、一緒ですね。
やっぱり家庭のカレーですかね。
水野さんはものすごく知っちゃったじゃない?
答えのひとつは「どれでもいいよ」
っていうのだと思うんだけど、
「でも、どれ?」って、もう1回聞かれたら?
ほんとに最後の晩餐で、
1種類のカレーって言われたら、
ぼくはそのカレーの味じゃなくて、
キャベツの千切りがあれば。

ああ!
だからやっぱお袋の味ですよね、言ったら。
キャベツの千切りがあれば何カレーでもいいです。
それって、信仰告白みたいだね。
(笑)。
── ちょっとじーんとしちゃいました。
ぼくは今、ちょっと寂しい思いをしたんだけど、
ぼくが好きなのは、
お袋のカレーじゃなくて自分のカレーなんです。
すごく生意気に聞こえるんだけど、
ぼくは今「ぼくのカレー」がいちばん好き。
なぜかって言ったら、
ぼくが好きだからこう作ったんだよ、
っていうところに行ったからですよね。
で、どこに行っても比べる対象ができちゃって、
基準は自分なんですよ、やっぱりね。
それはすごくよく分かりますよ。
分かります。
自分で作るときって、
トマトの順番にしろ何にしろ、
これはこうだからこうする、
っていう思いがありますよね。
「思い」と言ったり、
「思い込み」と言ったりすると思うんですけど、
それがね、いちばんたぶん、
大事なんですよね。
話題に出てきたインドアメリカン貿易商会ですが、
カレーパウダーも、
とってもおいしいですよ。
単品だとインドカレー風に、
インスタントカレールーに加えると
なんとも奥行きが出ます。
ガラムマサラもいい香り。
でも使いきれないんですよねー。
つづきは、また明日!(武井)
2012-01-07-SAT
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