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イナカモン外伝、逆襲のサガ。
都会の正体とはなんだろう?

<まじめなおしり"以外"のはなし>

さて、入院も五日目。手術からは三日が経過。
多少の痛み、腫れ、出血はあるものの、
傷の治りは至極順調。
お通じも、お薬を加減したところ、
ずいぶん状況が落ち着いてきました。
たった一日、二日でここまで痛くなくなるとは
思ってなかったので、かなり驚き。
売店でアイスクリーム買って、
大きく窓を開けて新宿のビル群眺めながら
ゆっくり食べました。
最後の方がとろとろに溶けてしまうぐらい、のんびりと。
なーんにも考えずに、ただ食べてただけ。
あー、人生のお休みって感じだぁ。

お通じ後は少しひりひりしちゃうけど、
それ以外の時は全然普通に行動可。
お尻の負担にならぬよう、ごろんとベッドに寝そべって、
原稿書いたり、担当ホームページを更新したり、
雑誌の占いチャートを必死で辿ってみたり。
ご飯食べてごろごろ、お風呂入ってごろごろ、
またご飯食べてごろごろ。
その繰り返し。
テレビはリースがあったけど、敢えて借りずにおきました。

普段読まないようなミステリの厚めの本も二冊読んだし、
待合室の本棚にあった、
昭和四十五年に初版の純文学も一冊読みました。

本当は、書きかけのシナリオを完成させるぞ、とか、
詩をたくさん書きためるぞ、とか思ってたんです。
普段めんどくさがってたことを全部やろう、
と強く強く思っていたはずが、
いざとなると「ぼっへぇ〜」としちゃって、
何も考えられません。
ごろごろして、窓の外を見て、
どうでもいいようなことをぽやーっと思っては、
すぐに忘れていく。
すごく、時間の無駄遣い。
だけど、全然退屈じゃないから不思議。

大学時代、国内すらどこへも旅行しなかったし、
未だにパスポートだって持ってない私。
何だか初めて「のんびりする」ということを
いろんな焦りに圧迫されずに、
実践できてるような気がします。
「病人なんだから、安静にしてなさい」
という病院の縛りが、
逆に心地よく私を解放してくれているようです。

そして、ゆるやかな時間に導いてくれている強い要素が
一つ、思い当たります。
それは入院している病棟が「産婦人科」である、
ということ。
(女性という面から、病院側の配慮で)

周りにはもう今日明日にも出産という妊婦さんはもちろん、
赤ちゃんを産んだばかりのお母さん達が
たくさん入院してらっしゃいます。
指定の時間になると、
新生児室からお母さんのベッドのところへ
赤ちゃんがやってくるのですが、
その光景のしあわせそうな空気ったら、すごくいい!
絶対幸福とでも言わんばかりのその空気。
お母さんのやさしい顔、あやす声。
なんとも羨ましいったらありません。

あと、おじいちゃんやおばあちゃんらご家族が、
新生児室のガラス越しに子供の顔を覗く、
そのまなざしや表情も素晴らしい。
「鼻の形がそっくりだね」なんてありきたりな台詞が、
本当にあったかく響くんです。
私も一緒になって新生児室を覗いてたら
「アレがうちの孫なんです。昨日の朝に産まれたんです」
とかご機嫌で話しかけられて、一緒に気分はぽっかぽか。
むにょむにょ動いてあくびする赤ちゃんのかわいらしさは、
極悪なほど!

妊娠して出産に至るまで大変だったこれまでの日々と、
実際に子育てで大変になるこれからの人生の、
ちょうど隙間。
煩わしいことはとりあえず全部後回しにしましょ、
とでもいうような
家族の幸せの頂点とも言えるほんの僅かな瞬間を、
濃密に詰め込んだ「新生児室」周辺の空気。
人生の大事な大事な一ページにあたる時間を
垣間見させていただいて、
私は自分の心が、ほあっとマッサージされてるような、
そんな気分になるのでした。

次にもしまた病院にお世話になることがあるとしたら、
その時は是非、幸せな妊娠とかでありますように!
間違っても、痔の再発だけは避けるんだからっ。
(「いや、ホントですよ、サガコさん」:先生談)

今日はとりあえず、こんな感じでいかがでしょう。
ずっと「痛い、痛くない」の報告だけじゃ
日記もつまんないもんね。
私のお尻よりは圧倒的にかわいい赤ちゃんのお話でした。
また明日。

2001-05-03-THU
TANUKI
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