COOK
調理場という戦場。「コート・ドール」の斉須政雄さんの仕事論。
最新の記事 2006/06/07
 
第45回 外部の理解が先にくる

「このやりかた、
 もしかしたら、いいものなのかな?」

チームメイトたちがそう思ってくれるようになると、
おたがいに、すこしずつの歩みよりから、
改善されてゆきました。

いつも
「内部の人に納得してもらうよりも、
 外部の人が理解してくれるほうが先」でした。

掃除は丁寧。
手を抜かない。
責任を果たして帰ってくれる……
徐々に改善されてゆきました。

「シェフばかり、いばりくさって!」
チームと噛みあわない時期は
「結果を見せたい」と願った。
そこでわかってくれるのだから。

職場環境は定着すると簡単には直せません。
定着する前に、
布石を打っておかなければなりません。

「お金ができたら」
「人材が集まれば」

そのときにはもう遅いのです。
最初の状態に戻るだけでも
一苦労してしまうのですから。

「開店当初のイメージを
 十年後も二十年後も持続したい」

チームメイトにそういいましたが、
感情的になったりの、
わかりあえない季節が続きました。

欲しかったのは、
こまごまとしたルールではありません。
ごく基本的な不文律。

それが浸透していさえすれば、あとは
各自の良識に従ってもらえるのですから。

基本を認識してもらわないと、
忙しくなったときに、
かならず瓦解してしまいます。

ものをあげたりさげたりの
マニュアルだけ教えても、
緊急のときにはまにあいません。

仕事の骨格や技術の根幹を、
はじめに「掃除」で
まるごと自覚してもらいたかったのですね。
これはいまもそうです。

コート・ドールの基準点は
「掃除」にあると考えています。

掃除ができれば、
清潔や責任や気配りから、
何かをつかみとれる。
それを仕事に投影すればいい。

レストランにおいて
求められているのは
「ひとりの料理人の技術の高さ」ではなくて、
「集団が機能してあらわれる底力」です。

ひとりだけでも、
ヘンな集団でも、長くは続けられません。

だからこそ、
長く続いているお店だけが宿している輝きは
眩しいのですね。

(次回に、つづきます)


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