好きな人の言葉は、よく聞こえますか。
補聴器って、あるのは知っていたけれど。

ほぼにちわ。
通天閣あかりです。

今回は、補聴器はこれから「どういうもの」として
世の中にあったらいいか、が話し合われます。
自分には関係がないようでいて、
実はとても身近な話だということを
感じてもらえるのではないかと思います。


 
第2部−4

カジュアルシンポジウム
「聞くコミュニケーションって
 なんだろう」
天野祐吉・鳥越俊太郎・八谷和彦
木村修造・糸井重里




糸井 さっきの鳥越さんの
老人と子供と、その真ん中の大人がいるっていうのは
非常に大事な見方ですね。

僕らはつい、60歳の人がいる、
0歳の人がいる、30歳の人が2人いる、
っていう社会を想像できなくて、
「みんなが30歳」みたいな気分になっちゃうけど
ばらばらにわかれているっていうことを
知っておかなくちゃならないと思います。
鳥越 僕は、あと3年で
いわゆる高齢者の65歳を迎えますが、
おそらくテレビの司会者とかキャスターとかで
難聴気味っていうのは、
僕だけなのかなって思う。

恐らく、テレビの世界で
「耳が悪いんだよ」って言ったら
マイナスにとられると思うんですよ。
「あいつはそろそろ賞味期限が切れてきた」
「使えない」って、周りが思うかもしれない。
「そう言えば、会話もとんちんかんだね」って。
僕は、こうなったら、テレビの世界で
難聴キャスターのパイオニアになってやろうと
思ってます。(笑)
糸井 「裸でいいじゃないか」という
鳥越さんの考えは、耳が聞こえにくい人にとって、
すごくありがたいと思いますよ。
鳥越 方言も、そうですよね。
九州弁丸出しのキャスターって、あまりいないですよ。
最初にテレビに出た頃は、
はがきとか電話で、
「なんであんなに訛りのきつい奴をテレビに出すんだ」
ってすごく抗議が来ました。
糸井 いますね。そういうこと言う人。(笑)

鳥越 でも今では、慣れてきて、
「そういうもんだ」って思われてます。
色んな意味で、ありのままに出したほうが
生きやすいなっていうのが、僕はあります。
ある程度、歳をとってきたからかも
しれないですけれど。
糸井 若いと言いづらいですか。
八谷さんは、どうですか?
八谷 ここに来る前に、
補聴器は健康保険がきけばいいのにって
ちょっと思っていたんですけど、
考え方が変わって、聞くっていうことは、
補正できない病気みたいな印象が
すごく強いんですけど、そうじゃないですよね。
眼鏡に保険がきかないのと同じように。
保険がきいてしまう世界だと、
技術やデザインの向上が、なくなると思うんですよ。
さっき控え室で見た耳かけ型の補聴器は、
いいデザインでしたし、
ずいぶん小さくなっていたりして、
色々改良されてるなっていう印象が強くありました。

木村 私たちも、だんだんファッション性を
考慮してくるようになりました。
去年のパリコレで実際にモデルのかたに使っていただいた
デザインのものもあります。
部品も小さくなってきてますので
色んな細工ができるようになっています。
八谷 そういう、作る努力が生まれるっていうのが
豊かさだと思うんです。
糸井 ツイッギーっていうモデルが、
がりがりの細さで、ミニスカートをはいて
登場してきたときに
「あれ?あの細さはいいのか?」
っておじさんたちは言ってたけど
思いきってああいうものが出てくるところから
何かが生まれてくるんでしょうね。
(客席に)あ、ツイッギー知らない?そうか・・・。
じゃあ、「スポーツブラ」ですね。

女の子が最初にブラジャーをつけるときに、
私つけるのかしら、つけないのかしら、
よくわからないわ、恥ずかしいわっていう時に
その気分に合わせたハンパなものとして、
スポーツブラっていうのがあって、
お試しができるんですね。
そんな、
「スポーツブラ補聴器」っていうのが
あったらいいなぁと思います。
さっき八谷さんがおっしゃった、
「最初は失敗するかもしれないから、
 安いので試そう」
っていうものがあったら、
市場をすごく大きく動かすことができる気がするんです。

7万円でも、まだ、
「ダメだったらどうしよう」って思いますよね。
2万円だったら、もしかしたら、
「いいか」って思えるかも。
八谷 あとは、パイオニアで
かっこいい人がいたらいいですね。
糸井 会場にいらっしゃるかたで、
補聴器をつけておられるかたは
いらっしゃいますか。

(ひとりの女性が手を挙げる)



失礼ですが、
今の話は聞こえてらっしゃいますか。
観客 はい。聞こえます。
糸井 たぶん色々とご不自由あると思うんですが
補聴器をつけてよかったかどうかだけ
教えてください。
観客 よかったです。
糸井 よかったですか。
やっぱり山奥に住んでいても、
すぐに都会に出られるっていう、
そういう道具のひとつとして
普通に使えるっていうことが
一番いいんでしょうね。
そうなると、
やっぱりデザインを色々と考えてみたくなります。

天野 僕は、こういう会場で、講演が終わった後に
質問などされると全然聞こえません。
今は補聴器をつけているから、
あの方の声が、すごくよく聞こえましたが
普段は、つけていないので不明瞭です。

ですから、たとえば、
「質問をしてくれている人の質問が面白くて
 会場のお客さんは笑ってるんだけど、
 僕だけ聞こえなくて笑えない」
っていう事態になったりします。
そうなっちゃった時、
もう一回言ってくださいとは言えないですし。
でも今は、すごくよく聞こえました。

補聴器は、僕くらいの難聴だと、こんな風に
場によって、すごく活きるときがあります。

でも、ない方がいい時もあって、
用途によって変えたほうがいいと思いますけど、
もっと技術が向上すれば、もっと聞こえが自然になって、
入れたりはずしたりすることなく、
周りの環境に合わせることができて、
使っているという違和感のないところまでいけば
理想だと思いますね。
(第2部最終回へつづく)

ご意見、ご感想などありましたら、
aid@1101.comにお送りください!
お待ちしております。


今回のイベントは、
色々なテーマが含まれているためか、
様々な角度からのご意見をいただいていますので
紹介させていただきますね。


 聴器販売に携わる者です。
 販売店協会加盟店で働いて2年目になります。
 一年目の去年は、補聴器の機械的な構造や
 フィッティング技術の勉強にだけ追われていました。
 今も知識の向上に努めていますが、少し余裕が出てきて、
 補聴器を、「ほぼ日」的な角度から見て
 考えるようになっています。
 誰もが補聴器を装用すれば
 完璧にコミュニケーションを取り戻せる訳ではないし、
 価格帯もけしてお手頃ではないけれど、
 使う方の理解はもちろん、その周囲の方の協力、
 販売する側の努力で、
 そのハードルを低くしていけたら…と思います。


 日はジーンズにTシャツだからヘッドホン風。
 明日はフォーマルなので、耳の中に入れるタイプ。
 あさっての講義は、絶対聞き逃さないために、
 超・高性能!

 いろんな人が「自分の好きなの」をつける。
 そういう『選択肢』を、
 もっとたくさん作ってくれたらなぁ、と思いました。


 直、補聴器のイベントって、自分には関係ないなと。
 というより、考えた事もなかったので、
 応募するときちょっと迷ったのですが、
 参加してみて、関係ないなんて
 大間違いだと思いました。
 補聴器というものをきっかけに、
 コミュニケーションや、
 高齢化などをいつもとちょっと違う角度から
 見ることができました。


 年の夫婦になると、
 言葉は少なくても分かり合えるようになると言いますね。
 それってステキだなぁと思うけれど、
 コミュニケーションをとらなくなってしまうことは
 すごく寂しい。
 「話さなくなること」よりも
 「コミュニケーションをとろうとしなくなること」
 の方が怖い。
 「聞こえなくなると自分から話さなくなる」
 と鳥越さんがおっしゃっていましたが
 気持ちから閉じこもってしまわないこと、
 逆に閉じ込めるような環境を作らないことが
 大切だと感じました。



多くのことはできませんが、
このページを読んでくださっている、
ひとりひとりの皆さんに、
このイベントでお伝えしたかったことが
こんな風に、確実に届いて、
それぞれの場面で、
ふと思い出していただければいいなと思います。

ほな。

2002-09-13-FRI

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