好きな人の言葉は、よく聞こえますか。
補聴器って、あるのは知っていたけれど。

ほぼにちわ。
通天閣あかりです。

8月25日(日)、
Communication AID 2002のイベントを行い、
たくさんのかたの多大なご協力によりまして、
無事に終了することができました!

当日、お越しくださったお客さま、
中継をご覧くださったみなさま、
アンケートとメールにご協力くださったみなさま、
本当に本当にありがとうございました!
みなさんからの声をいただき、とても嬉しかったです。

さっそくですが、
できたてほやほやの、
ピーコさんと糸井darling重里の
プロローグトーク「しゃべること、聞くこと」を
ほぼそのままの状態で、載録いたします!

20分の予定が、30分に延びてしまうほど、
熱が感じられたトークでしたよ!


 
第1部前半

プロローグトーク
「しゃべること、聞くこと」
ピーコさん・糸井重里



今日、わたしに何をさせたいの?


糸井 えー。
本日はお集りいただきまして、
ありがとうございます。
ちゃんとしたごあいさつをすると、
あとがツラくなりますので、
なるべくいい加減にやろうと思いますけれども……
えー糸井重里です。こんにちは。

この会は、主催、全国補聴器メーカー協議会、
ほぼ日刊イトイ新聞でありまして、
後援は東京FMさんにお願いしています。
何が起こるか、ぼくらもよくわからないのですが、
素人なりに一生懸命やりますので、
どうか、よろしくおねがいいたします。

それでは、この人も、
「なぜ呼ばれたのか、わからない!」
と言ってますが、
ピーコさんに来ていただき……あ、もう出てるよ。
ピーコ (笑)はやく出過ぎた?
糸井 なぜ呼ばれたのか、わかっているでしょうか?
ピーコ すこし。
糸井 ピーコさん、今も楽屋で、もう、
ノドが枯れるんじゃないかというぐらい、
たくさん喋っていらっしゃいましたけど、
ピーコさんにとって、
「聞く」って、どういうことですか?
ピーコ もう、さっき重里に言われたけれど、
わたしは聞くよりも喋るほうが多くって、
人の言ってることを聞かないという、
とってもすばらしい人なのよね。

糸井 今日のテーマは、
聞くコミュニケーションなんですけど、
実はぼくは、ピーコさんと
けっこう長くお話をする機会がありまして、
本も『ピーコ伝』というのを作りました。

ただ、そうやって
長いあいだいっしょにいると、
一見しゃべっているばっかりに思えるけど、
ピーコさんって、実はうまく、
あいだあいだに聞いているなぁと思ったんですよ。
ピーコ あ、そう?
わたしは、言いたいことを
待っているのがイヤなの。

わたし、相手が話している途中で
その人の言おうとしていることがわかっちゃうのね。
だから、その人が何個か喋ると、
「……あら、その程度のことを喋ってんの?」
と思うもんだから、かならず、
「でもね」とか「そうじゃない!」とか、
かならず……肯定しないの。
糸井 「でもね、違うの」って言うために聞いているんだ?
ピーコ 「なんでそんなことしか言えないのかしら?」
とか、そういう風にしか思わない。
糸井 ぼくと喋っている時とかも、
そういう思いに満ちているわけですか……。
ピーコ 重里と、ふつうに喋っている時には、
わたしひとりで喋っていて、相手しないじゃない?
糸井 (笑)
ピーコ そういう意味では、
「何違うこと言ってるの」
とかいうふうには思わないけど、
テレビでコメンテーターの横にいたり、
レポーターがそばにいたりするととてもイヤなの。

どうしてこんな馬鹿な人たちと
仕事をしなきゃいけないんだろうとか思うと、
顔に出たりするの。
糸井 出ますよね。
ピーコ うちのおすぎは、もっとすごい顔よ?
……ま、あの方の場合は、
「そういう顔」なんだけど。
糸井 (笑)
ピーコ でもね、
「なんでこんなことしか言えないの?」
「この問題に関して、こういうような視点しか
 持っていないんだ」とか思うことは、すごくある。
「その問題は、こっちの視点から見ないと、
 隠れていることがわからないのよ」
って言いたくなる。
糸井 ということは、よーく聞いているとも言えますね、
相手のイヤなところを。
ピーコ これはもう、もうしわけないんですけど、
聞かないうちに、パッと見ただけで、
その人がどういう人か、そうとうワカる。
糸井 メッセージそのもの以上に?
ピーコ それよりも、先ね。
糸井 「語っているその人」というメディアを
判断する方向に、行っちゃうんだ?
ピーコ うん。そうかもしれない。
はじめて会った時でも、会ったその人の
「その人がどういう人か」の雰囲気って、
ちょっと挨拶すれば、見えるよね。
糸井 なんで、それがわかるの?
ピーコ こういう言い方はヘンかもしれないけれど、
みんなが「すごくイイ人」という人って、
世間でも芸能界でも、いるじゃない?
……そういう人はわたしのことがキラいだし、
わたしもその人たちのことを、キラい。
糸井 (笑)
ピーコ みんなが「イヤな人」って言う人に、
わたしはすごく好かれるけど、
わたしもそういう人が好き。
糸井 ぼくはどうなんですか?
ピーコ わたしにとっては、イヤな人はいい人なのよ。
糸井 (笑)むずかしい! どっちだ!
ピーコ わたしが重里と一緒に仕事をすると、
「どうして糸井さんなんかと仕事をするの?」
って言う人は、います。
糸井 (笑)そいつ、イヤなやつだねぇ。
ピーコ (笑)
「でも、あなたは知らないかもしれないけど、
 わたしは重里のいいところも悪いところも、
 なんとなく許せるから仕事をしてるのよ」
って言ってしまえるからそれで済むけどね。

ただ、わたし、
テレビ見てて、会ったこともないけれども
「この人、いまこんなことを言っているけど、
 裏で悪いことしてる」っていうのは、ぜんぶ見える。

だから、そういう人には会いたくもないし、
会いたくない人っていうのは、向こう側からも
「ピーコとは、会いたくない」って言うだろうし、
そういう人はかならず「あいつ嫌いだ」とか
「あのオカマ野郎」とか、かならず言うの……。

でも、その人に言われても平気。
だって、オカマであるというだけで
わたし、悪いことはしていないもの。
糸井 なるほどね。

今日は
「聞くコミュニケーション」という題に向けて……
あ、今日ピーコさん20分しかいませんから、
はやめに展開しますけれども……。
いまつまり、ぼくは話を
そっちに持っていこうとしているんだけれども。
ピーコ (笑)はい。
糸井 たとえばピーコさんの場合で言うと、
病気になって、目を悪くしておられますよね?

見えていた状態が見えにくくなった時だとか、
不自由になった時に、見えていた状態のことを、
はじめて想像しますよね。

その時っていうのは、
「あぁ、見えていたっていうことは、
 すごかったんだなぁ」と思いましたか?

ピーコ 重里ってさ、片目になったことがないでしょ?
糸井 ないですね。
ピーコ あのぅ、片っぽで見ているというのは、
何を見ていても平べったいの。
平べったく見えているって言うの、
お医者さんのハナシでは。

でも、わたしは44歳で
片っぽ目を取っちゃったから、
つまり、それまでの40何年は
両目でものを見てきたとも言えるわけです。
だから、
「人間の顔って、平べったい」
とは、思っていないのね。
立体であるということはわかっている。

……そりゃ、平べったい顔のオンナはいるわよ?
松田聖子みたいに。
糸井 (笑)
ピーコ でも、立体だということで見るわけだから、
見た感じでは違和感はないです。
それに、お医者さんに言われたんですけど、
目がふたつある人よりも、
わたしは片目の視野がすごく広いらしいの。
糸井 へぇー。
それは、具体的に、肉体的に視野が広いんですか?
ピーコ いまのって、どういう意味?
「心は広いけど視野が狭い」って言いたいんでしょ!
糸井 (笑)いやいやそんなことはない。
「心は狭いけど視野が広い」」って言うか……
ピーコ (笑)あ、ヤな感じ!

そういう意味では、まぁ、
わたしは片目でもそんなに苦労してないの。
でも、
「両目が見えないとどうなるか?」
については、ちょっとわからない。

補聴器を使うというのは、
難聴の人がもっとよく聞くためなんでしょ?
そういう意味では、
視力の衰えた人がメガネをかけるというのと、
変わらないわけじゃない。
糸井 そうですよね。
ピーコさんが平面的に見えているということを、
まわりの人は知っていたほうがいいんですか?
ピーコ 知らなくてもいいんじゃない?
糸井 まわりの人の理解って、なくて平気ですか。
ピーコ わたしの場合は、言っちゃったから。
糸井 言っちゃえば、だいじょうぶだもんね。
ピーコ ただ、一般の人はどうか知らないですけど、
芸能界にいる人は、
「目が片一方義眼です」ということは、
公表したくない人が多いですね。

三木のり平さんは、わたしが目を取った時に
「よかったねぇ、役者じゃなくて」
とおっしゃったんです。
目が片方しかないということは、距離感がないわけで、
役者というのはいろいろな距離感が必要なわけで……
それはどんなに慣れてても、片方だと難しいからね。

いま「笑っていいとも」でゲームがあるんですけど、
向こうから飛んでくるボールを取るっていうのは
片目だと、なかなかできないんです。
糸井 たしかに、それは周囲の人が知らないと、
「ただ、ボールをつかめないやつ」
ということになりますよね。
ピーコ テレビ見てても「へたくそ」とか、
ボール取るのに失敗すると、
「運動神経がないんだなぁ」とか。
糸井 俺はそう思っていたね。
ピーコ (笑)……ごめん、
運動神経はないの、オカマだから。
糸井 (笑)
ピーコ うれしそうにしてるわね。

あんた……今日、わたしに何をさせたいの?
いちおうゲストでしょ?(笑)
糸井 (笑)いやぁ……
「好きな人には悪くする」
という方法を学んだもので。
ピーコ (笑)ヤな感じ!
(つづく)

2002-08-27-TUE

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